満充電のバッテリーパックと交換可能
ニオEL6は、デンマークやドイツ、ノルウェー、スウェーデンなどで販売が始まっている。2024年中には、グレートブリテン島でも購入できるようになるだろう。中国の新興メーカーは、勢いを増す一方だ。
【画像】バッテリーを丸ごと交換 ニオEL6 ロングレンジグ 競合サイズのEVはコレ ET5 ツーリングも 全129枚
まずは見た目から。スタイリングは、コンピューターのマウスのようなテスラ・モデルYと対照的。フロントマスクには、最近のヒョンデのような雰囲気もある。落ち着いていて、洗練されている。
フロントガラスの上部には、運転支援システム用カメラの膨らみがある。タクシーの行灯ではない。
ボディサイズは、全長4854mm、全幅1995mm、全高1703mmで、モデルYよりひと回り大きい。プラットフォームは同社のNT2.0と呼ばれるもので、75kWhか100kWhの駆動用バッテリーがフロア部分に並ぶ。航続距離は、405kmか529kmがうたわれる。
急速充電能力は、75kWhのバッテリーで140kWまで。100kWh版では180kWまで対応する。高速な部類ではないものの、平均的な速さといえる。
ニオのバッテリーEVで注目すべき点が、特許を取得した駆動用バッテリーの交換システム。専用のサービス拠点へEL6を持ち込むと、約5分で満充電のバッテリーパックと交換してもらえる。
これから欧州全土へ、120か所のサービス拠点を設ける計画だという。グレートブリテン島にも設置されるようだが、英国の法規が何らかの妨げになるような気がする。
ちなみに、駆動用バッテリーの交換は、リース契約の場合のみ対応する。車両を購入したユーザーはバッテリーも所有することになり、利用できないそうだ。
インテリアの知覚品質はテスラより上
EL6は四輪駆動で、フロントに201psの誘導非同期モーターが、リアに286psの永久磁石同期モーターが載る。システム総合での最高出力は、490psと不足ない。アダプティブダンパーは標準装備だ。
インテリアはソリッドだが淡白。内装素材の質感は低くない。モデルYより、知覚品質は高いように感じる。
ダッシュボードの中央には、小さなロボットアシスタント、「ノーミ」が運転をサポートしてくれる。ドライバーが乗り込んだり、音声で指示を出すと、回転して目線を合わせてくる。時々、ウインクやリンゴを食べる仕草もする。
可愛いと感じる人もいれば、余計だと思う人もいるだろう。読者のご感想は?
フロントシートは座り心地が良く、調整域も広い。実際に押せるハードボタンはほぼなく、中央の大きなタッチモニターと、ドライバー正面のメーター用モニター、ヘッドアップ・ディスプレイが標準装備となる。
タッチモニターの反応は素早く、エアコンの操作メニューが下端に常時表示される。アップル・カープレイとアンドロイド・オートには非対応だが、需要次第では実装予定もあるという。
リアシート側もゆとりがあり、身長の高い大人でも快適。荷室容量は668Lと大きいが、その大部分はフロア下の収納になっている。テールゲートを開いた時の印象は、さほど広くない。オプションで、7シーターも指定できる。
平均的なドライバーが不満を抱かない走り
運転体験は、電動SUVとして納得できる水準。過剰なパワーを、右足で簡単に引き出せる。アクセルレスポンスやダンパーの硬さ、ステアリングの重さを調整できるドライブモードは、エコ、コンフォート、スポーツ、スポーツ+と各種用意されている。
0-100km/h加速の鋭さも、4.5秒から12.9秒までの5段階から予め指定できる。目新しい機能で、ゲーム的な要素とはいえ、ニオのクルマに対する姿勢が表れている。最短の4.5秒では、アクセルレスポンスが過剰になるけれど。
車重は2403kgあり、ドライブモードを切り替えても、EL6が軽く感じられることはない。ステアリングホイールの感触やフィードバックは限定的。ペダルの踏みごたえも薄味で、クルマとの一体感は高くない。それでも、反応は自然だ。
意欲的に運転する気にはならないかもしれないが、穏やかなモードでは、全般的にスムーズ。平均的なドライバーが、不満を抱くことはないはず。
乗り心地は、基本的に落ち着いている。試乗車には20インチのアルミホイールが履かされていたが、アダプティブダンパーが路面の乱れを不足なく均していた。
ツギハギの多い市街地では小さな揺れを伴うが、不快に感じるほどではなかった。高速道路での凹凸の処理は、滑らかに感じた。
ニオで特筆すべきもう1点が、高度な運転支援システムだ。センサーユニットが33基と、ライダーと呼ばれるレーザーレーダーが1基搭載され、周囲を監視。エヌビディア社製のクワッドCPUで、毎秒1兆回の高速演算を可能としている。
技術水準は感心するほど高い 薄い特徴
気になるお値段は、75kWhの駆動用バッテリーで英国では約6万ポンド(約1086万円)が見込まれている。100kWhでは、約6万8000ポンド(約1231万円)へ上昇するようだ。決して安くはないが、高度な装備内容を考えると妥当な数字だと思う。
率直にいって、EL6の技術水準は感心するほど高く、英国でも一定の支持を集めると予想できる。他方で、特徴の薄さも強く心に残った。自動車保険のテレビCMに登場する、架空メーカーのクルマのよう、と表現しても良いかもしれない。
確かに、価格に見合う価値はあるとは思う。だが、より魅力的なバッテリーEVが、同価格帯に存在することも間違いない。
ニオEL6 ロングレンジ(欧州仕様)のスペック
英国価格:約6万8000ポンド(約1231万円/予想)
全長:4854mm
全幅:1995mm
全高:1703mm
最高速度:199km/h
0-100km/h加速:4.5秒
航続距離:529km
電費:5.8km/kWh
CO2排出量:−g/km
車両重量:2403kg
パワートレイン:誘導非同期モーター+永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:90kWh(実容量)
急速充電能力:180kW(DC)
最高出力:490ps
最大トルク:71.2kg-m
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)
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