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【高齢タクシードライバー事故で現実味】運転中に意識失う「デッドマン」事故、防げる? 企業の取り組み

掲載 更新 14
【高齢タクシードライバー事故で現実味】運転中に意識失う「デッドマン」事故、防げる? 企業の取り組み

他人事では済まされぬ「デッドマン」

text:Kenji Momota(桃田健史)

【画像】事故、起こる前に回避 レヴォーグ安全意識【イラストで学ぶ】 全158枚

editor:Taro Ueno(上野太朗)

「デッドマン」という言葉を聞いたことがあるだろうか。

直訳すると「死人」。自動車業界で使うデッドマンとは、車内で走行中に運転者が死亡、または意識不明になるなど、運転を継続できない状態を指す言葉として使われる。

つまり「デッドマンに近い状態」という解釈であり、仮にそうなってしまった場合に対応するため、さまざまな仕組みについて研究開発が進み、一部はすでに量産化されている。

個人的には、デッドマンという呼称は倫理的に好ましいかどうか疑問が残るが、本稿では自動車産業界での一般的な表現として使用する。

直近では2021年1月4日夜、渋谷区で

技術面について紹介する前に、残念ながら発生してしまったデッドマン状態による交通事故の実例を見る。

直近では、2021年1月4日夜、東京都渋谷区笹塚の甲州街道で起きた、タクシーによる死傷事故が記憶に新しいと思う。

タクシーは車道側が赤信号の状態で、横断歩道を渡っていた歩行者数人をはね、49歳の女性が死亡。そのほか5人が重軽傷を負った事故だ。

事故後の警察の調べを基にした報道によると、73歳のタクシー運転手が事故発生時に、くも膜下出血を起こしていた疑いがあった。ドライブレコーダーではうつむいた状態だったという。

まさに、デッドマン状態での事故である。

こうした事故を防ぐことはできるのだろうか?

議論が盛んになったのは2010年代~

デッドマンの議論が自動車業界で盛んになったのは2010年代に入ってからだ。

米運輸省や米自動車技術会が中心となり、自動運転の量産化に関し産官学での協議が本格化した。

そうした議論の場を筆者は定常的に取材してきたが、自動運転の意義として、デッドマン対策を挙げる有識者や自動車メーカー関係者は、当初から多かった。

2010年代以前からも、デッドマン対策の研究開発がおこなわれてきたが、2010年代に入り、実用化の目途が立つようになった。

背景にあるのは、車載センサーとして車外の状況を把握する、車載カメラ・ミリ波レーダーなどのハードウエアの技術革新が進み、搭載車両が増えることでの量産効果により、コスト削減が進んだことが挙げられる。

また、車載カメラから得た情報による画像認識技術が半導体技術の発達と同調した。

企業としては、イスラエルのベンチャー企業「モービルアイ」、ドイツ大手部品メーカー「ボッシュ」や「コンチネンタル」、さらに日本ではスバルにアイサイトを提供していた「日立オートモーティブシステムズ(当時)」やトヨタ系の「デンソー」などがある。

画像認識技術では、いわゆるAI(人工知能)の分野も深く関係する。

こうした技術は、車外にくわえて車内モニタリングにも活用されるようになり、車外と車内の装置が連携することが可能になってきた。

スバル「アイサイトX」で実体験した

では、デッドマン装置として実用化されている2つのケースを紹介する。

どちらについても、筆者はメーカー関係者同席のもと、テストコース内で実車での体験している。

まずは、スバルのアイサイトXだ。

2020年10月に発売された、新型レヴォーグから搭載された、次世代アイサイトのオプション機能の総称だ。

その中に、スバルでは「ドライバー異常時対応システム」と呼ぶデッドマン装置がある。

運転席の筆者に、助手席のアイサイト開発統括者が、大きな左カーブを45km/hで走行しながら故意に顔を運転席窓側に大きく振り、前方を見ない状態で走行するように指示した。

これで、デッドマン状態を再現していることになる。

しばらくすると、ピピピという小さな警報音が車内に流れ、なにも対応しない状態でいるとポン、ポン、ポンという大きな警報音に変わると同時に、車外に対する注意喚起としてクラクションが連続して鳴るようになり、速度は30km/hまで低下した。

この状態でカーブを走り切り、直線路になってから自動で完全停止した。

アイサイトXのシステムは、高速道路走行中に高精度地図とGPSによる位置情報を管理している。

デッドマン装置としての完成度はかなり高いと感じた。

もう1つの例は、日野だ。

日野の大型観光バスには「EDSS」

2018年に発売された、大型観光バス「セレガ」に、EDSS(ドライバー異常時対応システム)が搭載された。

EDSSを作動されるには、
・ドライバー自らが体調不良を感じて緊急停止ボタンを押す
・乗客がドライバーの様子がおかしいと判断して緊急停止ボタンを押す
・蛇行が多い
など走行状態の異常をシステムが感知、という3つケースに対応する。

実際に体験すると、クラクションが鳴り、ブレーキランプとハザードライトが付き、急停車というよりは、ゆっくりと同一車線で減速して停止した。

車外への通知 スマホの警報など有益

こうしたスバルと日野のシステムなどが今後、タクシーにも応用されることを期待したい。

くわえて、将来的に期待されるデッドマン装置として、車外への通知として、歩行者が持つ、または周囲を走行するクルマの中にあるスマホに緊急地震速報のような警報が鳴り、周囲の異変に対して身構える対策も考えられる。

さらには、タクシーの中央管制センターから遠隔操作による停止や操舵も考慮されるだろう。

遠隔操作については、国の自動運転実証試験として事例がある。その中で、東急が主体となる静岡県伊豆高原駅での実証を2020年末に取材したが、実用化に向けた質の高い内容との印象を受けた。

デッドマン装置の、さらなる高度化と量産化により、悲惨な交通事故が少しでも減ることを祈りたい。

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みんなのコメント

14件
  • 高齢者になるほど確かにリスクは高まるが、自分の知り合いでは、昔30歳そこそこの友人が運転中意識を失い高速道路の中央分離帯に衝突。
    その時は物損のみで助かったが、病院での検査を受ける前に心筋梗塞でお亡くなりになった。
    40歳台の時にバイクでツーリング中、メンバーが車線を逸脱して対抗して来たトラックと衝突。
    一命は取り留めたが、後の調査で、くも膜下出血で意識を失った事が判明。

    誰にでも起こりえる可能性はありますよ。
  • ヒントン列車事故の例もありますからねえ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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