「車種数、バリエーションが多い」というのはかつての日本車が武器としていた分野だった。しかし、今ではトヨタですら今後車種数を減らすことを明言しており、バリエーションも「パワートレーンは1つか2つ」というクルマも珍しくない。
ところが本国でない日本市場でも日本車と正反対の動きをしているのがメルセデスベンツとBMWである。
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今回は話題をメルセデスベンツに絞るが、では「現在日本で販売されるメルセデスベンツの車種数は?」と聞かれて答えられるだろうか?
正解は30車種で、これだけ多いと正確に答えられる人はおそらくメルセデスベンツの関係者だけだろう。
メルセデスベンツの乗用車で30という車種数は、トヨタの34車種(OEMと軽自動車は含み、アルファード&ヴェルファイアのような明らかな兄弟車は除いた計算)に迫り、日産とホンダの23車種を大きく上回る強烈なものである。
当記事では日本でのメルセデスベンツのラインナップや販売台数の推移を振り返りながら、メルセデスベンツが車種を増やせる理由などを考察する。
文:永田恵一/写真:ベストカー編集部、MERCEDES-BENZ
メルセデスベンツの車種の移り変わり
1990年代中盤までのメルセデスベンツの車種はステーションワゴンを含むCクラス、Eクラス、Sクラス、SL、Gクラスくらいで、すぐに言えたものである。
だがAクラス、SLK、Mクラスなどが登場した1990年代後半からメルセデスベンツの車種の増加が始まる。
日本では1998年8月から販売を開始したMクラスはメルセデスベンツが初めて手がけたオンロードを意識したSUVだった(ML320:550万円)
では2000年12月時点のメルセデスベンツの車種の振り返ってみることにする。
★コンパクト系 Aクラス
★セダン系 Cクラス、Eクラス、Sクラス
★ステーションワゴン系 Cクラス、Eクラス
★クーペ系 CLK、CL
★オープン系 SLK、CLKカブリオレ、SL
★SUV系 ML、Gクラス
★ミニバン系 Vクラス
合計14車種であった。
では21世紀に入った2001年以降の加わったメルセデスベンツの車種を抜粋してみると以下のようになる。
★2001年10月 Cクラスクーペ
★2004年4月 バネオ(Aクラスベースのルノーカングーのようなハイトワゴン)
★2004年10月 SLRマクラーレン
★2005年2月 CLS
★2006年1月 Bクラス
★2006年3月 Rクラス
★2006年10月 GL
★2008年10月 GLK
★2010年4月 SLS AMG
★2012年10月 CLSシューティングブレーク
★2013年7月 CLA
★2014年5月 GLA
★2015年6月 CLAシューティングブレーク
(2015年12月時点で23車種)
日本では2006年3月から2014年まで販売されたRクラス。3列シート7人乗りのラグジュアリーワゴンという新ジャンルに挑んだ(R500 4マチック:966万円)
バネオやRクラスのように日本市場からは姿を消したモデルもあるものの、年に1モデルくらいのペースで車種が増えており、車種数の増加は一時期のトヨタ以上の勢いを感じる。
では現在30車種あるメルセデスベンツの車種のラインナップをおさらいしておこう。
コンセプトチェンジして成功した先代を受け、2018年10月にデビューした現行Aクラスは販売も好調で、メルセデスの躍進を支える存在(A180:322万円)
★コンパクト系 Aクラス、Bクラス
★セダン系 Cクラス、Eクラス、Sクラス、マイバッハ
★ステーションワゴン系 Cクラス、Eクラス
★2ドアクーペ系 Cクラス、Eクラス、Sクラス
★4ドアクーペ系 CLA、CLS
★シューティングブレーク系 CLA、CLS
★SUV系 GLA、GLC、GLE、GLS、Gクラス
★SUVクーペ系 GLC、GLE
★メタルルーフのオープン系 SLC、SL
★ソフトトップのカブリオレ系 Cクラス、Eクラス、Sクラス
★ミニバン系 Vクラス
★AMG GTクーペ(2ドア)、GT(4ドア)
とにかく強烈である。もちろんメルセデスベンツといえど基本的にはそう数はない柱となるプラットホームを使った派生車が多いわけだが、それは日本車も含め他社も同じである。
またメルセデスベンツはEクラスセダンの標準モデルを例に挙げると日本仕様でも、それぞれ9速ATと組み合わされる1.5L直4ガソリンターボ+マイルドハイブリッド、2L直4ガソリンターボ、2L直4ディーゼルターボ、2L直4ガソリンターボ+プラグインハイブリッド、3LV6ツインターボという6つのエンジンを揃える。
ミドルクラスセダンとして世界的な人気を確立しているEクラス。セダン、ステーションワゴンとも日本でも安定人気(Eクラスの価格は715万円~)
Eクラス同様Cクラスもパワートレーンが豊富にラインアップされ、写真のモデルはプラグインハイブリッドのC350e(Cクラスの価格は455万円~)
これは現行クラウンのパワートレーンが2Lターボ+8速AT、2.5L直4と3.5L、V6のハイブリッドの3つなのを考えると非常に豊富なバリエーションだ。
さらにほとんどのモデルに標準系は別のエンジンを積むことが多いAMGまで設定されるのだから凄い。
とどめに年内にCLAとは別のAクラスセダンや電気自動車のEQCが加わり、さらに車種数が増えるのだからこの先どうなるのか恐ろしい。
メルセデスベンツはスペシャルモデルのAMGをフルライン化する勢いだ。超高額のハイスペックのAMGの人気は激高だから恐れ入る(G63 AMG:2076万円)
販売台数は増えているのか?
車種数が増えても販売台数が増えなければ、企業としてはまずい。というわけで2000年からの2018年の日本でのメルセデスベンツの販売台数(暦年)を振り返ると
2000年 5万1613台
2001年 5万3438台
2002年 4万7983台
2003年 4万5759台
2004年 4万4375台
2005年 4万6811台
2006年 4万9713台
2007台 4万6811台
2008年 3万7002台
2009年 2万8740台
2010年 3万936台
2011年 3万3212台
2012年 4万1911台
2013年 5万3731台
2014年 6万839台
2015年 6万5162台
2016年 6万7386台
2017年 6万8221台
2018年 6万7554台
販売台数の推移を見ると、景気などの影響もあるにせよ「車種が増えた割りに販売台数は伸びていないのでは?」という時期も短くなかった。
GLAはAクラスベースのプレミアムセダンで、ワゴンのシューティングブレークもラインアップ(CLA180シューティングブレークAMGスタイル:428万円)
しかし先代Aクラスが登場した2013年からはGLAやCLAといった派生車も牽引し販売台数が伸び始め、メルセデスベンツは2015年から4年連続で輸入車販売日本一の座に君臨している。
このことからも車種を増やした効果はそれなりにあったといえそうだ(販売台数の中にはディーラー登録された在庫車が中古車市場に未使用車として流れたぶんも少なからずあると思われるが……)。
なぜメルセデスベンツは車種を増やすのか?
車種数を増やすのは、一般的には保守的なイメージが強いのかもしれないメルセデスベンツであるが、実際には世の中の動きに敏感なメーカーだからだろう。
例を挙げれば1995年登場のW210型のEクラスではそれまでの過剰品質から生産性なども考慮した合理化を行うという変化(弊害もゼロではなかったが)や、AクラスやML、Vクラスで参入していなかったジャンルに参入している。
さらにCLSでは4ドアクーペ、GLCクーペでSUVクーペというジャンルを開拓するなど、ニーズに応えるだけでなくシーズも提案しており、メルセデスベンツは技術面だけでなく商品企画でも挑戦的なのである。
クーペルックのSUVはBMWが先鞭を付けたが、メルセデスはGLCクーペ、GLEクーペで新たなマーケットを築きつつある(GLEクーペ:896万~1836万円)
メルセデスベンツがバリエーション展開を素早く増やせる理由
新しいクルマの企画を考えたとしてもそれを市販化するには、現在と20世紀中に比べると俗に開発資源と呼ばれるヒト、モノ、カネ、時間は環境性能や安全性といった要件の増加や高度化により1.7倍程度必要とされており、特にヒトの確保が大変である。
それにもかかわらずそんな状況下でなぜメルセデスベンツが素早く車種を増やせるのかというと、ベルリンの壁の崩壊後に育った東欧の人たちをエンジンニアとして確保し、開発資源を充分に持ったヨーロッパ開発圏による開発を行っているからだ。
もうひとつは日本で販売されるメルセデスベンツにはあまり関係ないが、日産&ルノーアライアンスとの協業による車種もあることだ。
具体的には現行スマートとルノートゥインゴは兄弟車で、ベンツ初のピックアップトラックであるXクラスは日産ナバラ(以前のダットサントラックに相当)がベースとなっている点などが挙げられる。
メルセデスはスマートについては効率重視で、他メーカーと積極的にコラボを展開していて、現行モデルはトゥインゴと兄弟車(フォーフォー:285万~318万円)
メルセデスベンツはラインアップを増強しつつ、伝統のあるSクラス、Eクラス、Cクラスが健在というのがすばらしい(Sクラスセダン:1138万~3427万円)
★ ★ ★
メルセデスベンツは2018年の生産台数では約244万台という決して大きなメーカーではないが(日本メーカーではマツダ約160万台、スズキ約344万台)、改めてみると技術面だけでなく商品企画などでも凄いメーカーであることを痛感する。
今の勢いを見ていると、メルセデスベンツは今後も日本車のシェアを奪っているジャンルすらある日本の輸入車市場はもちろん、世界の自動車業界をリードするメーカーであり続けるに違いない。
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