積算5584km SUVが難しい駐車スペースにスルリ
ロンドンから南へ40kmほど離れた場所に、ボックスヒルという自然公園がある。そこをしばらく散策していたら、ハンバーガーと冷たい飲み物が欲しくなった。とても暑い日だったから。
【画像】存在感はカニエ・ウェスト級! アバルト500e 競合の小さな電動ハッチ フィアットの500eも 全150枚
近場のバブを訪れたら、同じ考えの人が多かったらしく、大きなSUVで駐車場が埋まっていた。それでも、小柄なアバルト500eなら停められる空間が、道路脇に残されていた。同じく大きなSUVだったら、駐車はできなかっただろう。
積算7113km アバルト500eは狭い場所が得意?
2023年に開かれたアバルト500eの発表会で、低速域での操縦性と洗練性が優れないことを、自動車ジャーナリストの1人が同社の技術者へ伝えていた。試乗したのはプロトタイプで、量産段階までに修正されるだろうと、担当者は回答していた。
果たして、それは実行されたのだろうか。小柄なボディサイズだから、混雑した都心部や狭い駐車場での取り回しは簡単だと、期待して当然だろう。ところが実際は、フォード・トランジット・カスタムという商用バンの方が、縦列駐車は簡単かもしれない。
そもそも小さなハッチバックだから、小回りが利かないわけではない。むしろその逆。前後のオーバーハングは短く、運転席からの視界も360度良好だ。1960年代に計画された道路をすり抜けるのに、ピッタリといえる条件が揃っている。
ON/OFFスイッチのようなペダル
ところが、低い速度域でのアバルト500eの操縦性は、直感的とはいいにくい。特にアクセルとブレーキペダルの反応が、一定の割合で変化しないことが悩ましい。電費の良いツーリング・モードを選んでいても、ON/OFFのスイッチのように制御されるのだ。
その結果、駐車時や渋滞時は、ぎくしゃくとクルマは前進と停止を繰り返すことになる。少し不快なほど。壁面へリアをピタリと寄せたり、ユルユルと進む先行車両を滑らかに追従することが難しい。
事故を避けたいという気持ちから、どうしても広い駐車スペースを探してしまう。渋滞時に後ろを走るクルマは、大きく変化する速度にイラついているかもしれない。小さなシティカーなのに、強みを活かせていないと思う。
快適に通勤もこなしたいクルマとして、乗り心地は硬すぎる。妥協ないほど荒々しいわけではないが、しっとりスポンジの上で移動しているようなフィアット500eと比較して、背骨へ伝わる衝撃が大きいことは明らかだ。
アバルト500eを運転中、幹線道路が大渋滞していて、住宅地を迂回する機会があった。速度抑止用のスピードバンプを通過する時は、20km/h以下へ落とす必要があるほど、揺れはきついものだった。
スポーツカーより連続する狭いカーブは楽しめる
駆動用バッテリーの容量は42kWhと小さく、車内空間はタイトで、長距離ドライブに向いたモデルではないだろう。一方で、低速域でのこれらの不満を考えると、走行距離の短い市街地移動に向いているとも表現しにくい。
それでも、アバルト500eを楽しめる場所はある。ロンドン郊外を一周する高速道路、M25号線より外側に広がる、適度な起伏のある大地へ伸びる一般道が、かなり理想へ近いと感じた。
コンパクトなサイズを活かし、内燃エンジンを積んだ純粋なスポーツカーより、カーブが連続する狭い区間との親和性は間違いなく高い。過度に飛ばすことなく、運転を楽しめる。速度域が高くないから、電費が大きく悪化することもない。
ロンドンから遠く離れているわけでもないから、帰路のための充電を心配する必要もない。ここなら、500eの真価を発揮できるように思った。
グッドウッド・サーキット周辺に広がる、走り応えのある一帯を目指した時は、辿り着く前に駆動用バッテリーの40%を消費してしまった。充電を考えていなかった筆者は、帰り道を抑えめに走ることになった。
数kmだけだが、畑から出てきたトラクターの後ろを走ることになっても、追い越す気にはならなかった。50km/hなら、電費も伸びるから。
テストデータ
気に入っているトコロ
駐車アシスト:小さいクルマだから、本来なら駐車アシストの必要性はそこまで高くない。ところがペダル操作の反応が唐突だから、とても有効。
気に入らないトコロ
電動ハンドブレーキ:ハンドブレーキの解除に時間がかかる。きしむような音も出る。
テスト車について
モデル名:アバルト500e ツーリスモ(英国仕様)
新車価格:3万8195ポンド(約726万円)
テスト車の価格:3万8795ポンド(約737万円)
テストの記録
電費:5.8km/kWh
航続距離:244km
故障:なし
出費:なし
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みんなのコメント
走行中に感じることは少ないが、車庫の出入り、右折での合流時にヒャッとする事が何度か経験した。