5台限定のターマック用ラリーカー
text:Matt Prior(マット・プライヤー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
1990年代、125ccの2ストロークエンジンを積んだ、カジバ・ミト125というスポーツバイクが人気だった時期がある。ギアは7速あるが、どのギアでも同じように加速する、と当時のレポートは記していた。
アリエル・ノマドRに乗ると、そのカジバ・ミトを思い出させる。トランスミッションは6速のシーケンシャル。ラリー仕様のクロスレシオで、6速での40km/hも、1速での80km/hも、同じくらい楽しい。アクセルを深く踏めば、それで済む。
初代のノマドが登場したのは2015年。アトムの汚れた兄弟、としてリリースされた。オンロードを走るのはアトムで、オフロードを走るのはノマド、というわけ。「左に曲がってサーキットへ向かうか、右に曲がって原野へ向かうか」そんな2択だ。
2016年には、スーパーチャージャーで過給されるノマドも登場している。しかし筆者が最も面白いと感じたのが、このノマドR。
アリエル・ノマドの開発責任者、ヘンリー・シーベルト-サンダースは、「ターマック用ラリーカーに可能な限り近づけてあります」と説明する、限定マシンだ。その台数は、わずかに5台だけ。
そのうちの3台は、古いホンダ・シビック・タイプR用の2.0Lエンジンにスーパーチャージャーを取り付けたユニットか、アトム4にも積まれている新しい2.0Lターボユニットが搭載される。
残りの2台はまだ明らかになっていない。通常搭載されるのは、2.4Lのホンダ製ユニットだ。今後登場するであろうノマドMk2にも、新しい2.0Lターボが選ばれることだろう。
タイプR用エンジンに6速シーケンシャル
2.0Lエンジンはドライバーの後ろに横置きされ、スーパーチャージャー版の場合、最高出力339ps/7600rpm、最大トルク33.5kg-m/5500rpmを発生する。トランスミッションは、先代のアトム3.5Rのように、サデブ社製の6速シーケンシャルが組み合わされる。
もちろん後輪駆動で、LSDも装備する。トランスミッションはストレートカット・ギアで、ドッグリングと呼ばれるクラッチ構造を採用。シフトダウン時にはオート・ブリッピングも働く。3ペダルだが、走り始めればクラッチ操作は必要ない。
従来のノマドが備えていた、渡河性能は犠牲になっている。変速に用いられるエアコンプレッサーや補機類がセンタートンネルに搭載されているから、ホイール高の半分以上の水深にはノマドRを入れない方が良いだろう。
通常のノマドでも、深い川を渡りたいと考える人は少ないとは思う。けれど、エンジンの給排気が難しくならない深さなら、入っていけるのだ。
ダンパーには2つの選択肢がある。今回の試乗車に装備されていたのは、調整式のオーリンズ製。ホイールは18インチで、タイヤはヨコハマ製のA052。高性能なオンロード用トレッドだ。
確かにノマドRは、オンロード、ターマック用のラリーカー。あるいは、タイヤが4本のスーパーモト・バイク。
価格はかなり高い。英国で7万7400ポンド(1037万円)。ただし、ほとんど減価償却はされないから、損はないだろう。正直にいって、最も無意味なクルマでもある。サンダースのお気に入りでもある。
凶暴性を感じるほどに速い
ノマドRには乗りにくい。蜘蛛の巣のようなロールケージの隙間から身体を滑り込ませるか、よじ登って上から身体を落とすか。コメディ映画のように。
ステアリングホイールは取り外しが可能だが、カーボンファイバー製のシフトパドルは残る。引くとシフトアップ、押すとシフトダウンだ。
シートの位置を変えるには、6角レンチが必要。調整が終われば、運転姿勢は心地良い。構造部品のすべてが露出するノマドRの一部のように、一体化できる。
イモビライザー・チップを置いてボタンを弾くと、ホンダ製ユニットに火が入り、背中越しにサウンドが響き始める。シフトを引いて1速に入れる。エアコンプレッサーから空気が送られ、ひと吹き音が立つ。
走り始めると、ストレートカットのギアから盛大なメカノイズが放たれる。ドライバーが最もうるさく感じるクルマの1つであることは、間違いない。
ターボで激しく過給されるアトム4は、ノマドより軽量で、気が遠くなるほどに速い。それでも、このノマドRもスーパーチャージャーで過給されているから、凶暴性を感じるほど速い。
アリエルによれば、0-100km/h加速をわずか2.9秒でこなすらしい。間違いなさそうだ。変速も速い。レースカーやラリーカーを彷彿とさせる盛大なエンジンノイズに、圧倒される。
フロントガラスは付いているが、ヘルメットと耳栓は着用した方が賢明だろう。メカノイズや風切り音、顔面の露出などが抑えられ、ノマドRの高い動的性能に集中できる。ノマドRをより楽しめる。
ヘルメットと耳栓がいるドライバーズカー
ステアリングはロックトゥロック1.7回転とクイック。そのかわり重いが、うんざりするようなキックバックはない。
減衰力の設定は素晴らしく、かつ姿勢制御はタイト。ボディをフラットに保ち、完璧と呼べるほどにシャープ。アクセルやブレーキ操作に対する反応はリニアだ。
シフトレバーの操作も、とても楽しい。レバーを前後に小刻みに倒す作業が、運転の充足度を高めてくれる。バイクのギアを変える動作に似ている。
素晴らしいドライバーズカーだと思う。実用性は気にしないでほしい。もっともノマドRに乗っている限り、そんなことは気にならない。
ノマドRを運転するなら、オートバイ用のヘルメットと耳栓も、一緒に用意した方が良いだろう。タイヤが4本、という違い程度しかないのだから。
アリエル・ノマドR(英国仕様)のスペック
価格:7万7400ポンド(1037万円)
全長:3215mm
全幅:1850mm
全高:1425mm
最高速度:194km/h(トランスミッションによっては218km/h)
0-100km/h加速:2.9秒
燃費:-
CO2排出量:-
乾燥重量:670kg
パワートレイン:直列4気筒1998ccスーパーチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:339ps/7600rpm
最大トルク:33.5kg-m/5500rpm
ギアボックス:6速シーケンシャル・マニュアル
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みんなのコメント
言い得て妙で、草生えたw
後付けで、パッセンジャーシートの取付が可能なのかなぁ?