岡山県の岡山国際サーキットで行われているファナテック・GTワールドチャレンジ・アジア・パワード・バイ・AWSの第5ラウンド(9月24・25日決勝)には、既報のとおり2車種の初登場マシンが参戦している。
そのうちの1台、ビンゴ・レーシングが投入している44号車コルベットC7 GT3-R(BANKCY/武井真司)は、2019年に開催されたスーパーGT×DTM特別交流戦での『auto sport web Sprint Cup』以来の登場となるC7 GT3-Rということ、またその“目立ち度抜群”のカラーリングで、すでに多くの注目を集めている。
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久々にこの車両を投入した経緯、そして特徴的なカラーリングにはどんな意図が込められているのだろうか。金曜日のパドックでチームを率いるジェントルマンドライバーの武井に実情を聞くと、想像以上に『大きなプロジェクト』であることが浮かび上がってきた。
ビンゴ・レーシングは、7月に富士スピードウェイで行われたGTWCアジア第3ラウンドにも参戦していた。このとき、マシンはポルシェ911GT3のカップカーで、1台のみとなる『GTC』クラスでの参戦だった。
これについて武井は「相方(BANKCY)がカップカーで、ずっとPSCJ(ポルシェ・スプリント・チャレンジ・ジャパン)というレースで腕を磨いていたので、まずはこの国際レースの雰囲気に慣れよう、ということで慣れているカップカーで参戦しました」と説明する。
そうして参戦した富士で、武井はGTWCの魅力を存分に感じたという。
「やっぱり羨ましいなというか、ジェントルマンとプロが組んでみんないいバトルをしているし、雰囲気もいいし、ルールも明確だし、本当にみなさん楽しみながら本気でやっていて、羨ましかったです」
富士に参戦を決めた時点で、「富士を走り切れたら、次はGT3で」というプランがチームにはあったという。そして「ずっと寝てるクルマもあったので、動かしたい気持ちもありました」と武井。それが、2019年の参戦以来ガレージで眠っていたC7 GT3-Rだった。
本国・キャラウェイからのエンジニア派遣なども必要なため、交渉を始め、それが間に合ったのが今回の岡山だったという。
「事前テストもなく、昨日(木曜日)に初めて走らせました。エンジニアが非常に優秀ですので、自分たちがリクエストしたことに対してしっかりクルマを作ってくれるので、安心してアクセル踏める、という感じです」
今回キャラウェイから派遣されているエンジニアは、C7 GT3-Rのシステムを作り上げた人物だといい、「引き出しはスゴイです」と武井も絶賛する。そしてキャラウェイやGMからは、人やモノの域を超えたサポートもされているようだ。
「今年(C7 GT3-Rは)1台も走っていないので、今回これが走ることをアメリカにいるピート・キャラウェイも、ドイツのファクトリーのみんなもすごい喜んでくれていますね」
そして、独特なマシンカラーリングについても、明確な意図のもとに展開されたものだという。
「パンジャン(Panjan)というTikTokでは世界的に人気のあるアーティストのグループがあって、彼らとうちの会社(ビンゴ・スポーツ)が組んで、日本でのPRをしよう、という取り組みの一環です」と武井。
「また、僕も去年子どもが生まれたのですが、僕の息子もこっそりキャラクター化してもらって(笑)、デザインに入っているんです」
今回はマシンだけでなくトランスポーターもこのPanjanとのコラボによるアニメキャラクターにペイントされ、パドックでも存在感を放っているが、そこにはコルベットのイメージカラーである黄色に塗られたクルマも描かれている。
「今回の車番の44というのも、エド・ウェルバーンというGMの元バイス・プレジデントで、現在はGMの殿堂入りしている方がいるのですが、彼が何かのアニメで使う予定だったデザインのクルマを『使う予定がなくなったので、使ってよ』という話になり、実現したものです。ですので、いわゆるGMファミリーとパンジャンをミックスさせた形です。僕らはスポンサーからお金をもらうとかではなく、こういった表現をして、仲間にメッセージが伝わればいいなと思っています」
すでにGM側も今回のビンゴ・レーシングの取り組みには注目しているようで、「今回はうちの子どもに寄せたカラーリングにはなっているのですが、GMからは『ポスターにしたいので、(マシンの)いい写真を送ってくれ』という話も来ています」。
GMという大きなメーカーを巻き込むと同時に、TikTok、そしてアニメーションというポピュラーなメディアとコラボレーションする今回の取り組みは、モータースポーツ界の将来を考えたひとつのアプローチでもあると武井は言う。
「これからはSNSの時代ですし、こういった形でTikTok(アーティスト)とコラボして、モータースポーツ界の高齢化の歯止めに、少しでも貢献できればと思っています」
「こんな1枚の絵がポンと置いてあるだけでも、子どもが『いいな』と思って真似してくれたらいいと思いますし、『こういった表現の仕方もあるんだ』とアーティストとコラボするチームがどんどん出てきたら、面白いんじゃないかと思います」
そんな思いを乗せたコルベットC7 GT3-Rの走りに注目したい。
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