かつて日本のスーパーGTでも活躍したフレデリック・マコウィッキは、今週末バーレーンで行われるWEC世界耐久選手権最終戦を最後に、ファクトリードライバーを11年間務めたポルシェを離れる。このレースを前に取材に応えたマコウィッキは、キャリアの新たな章を開きたいと述べ、レースの「人間的な側面」を再発見したいと語った。
■「自分の声があまり聞かれないと感じることがある」
シューマッハー残留か、マコウィッキ加入もあるか。アルピーヌの2025年ラインアップはまもなく確定へ
このフランス人は先週、ドイツのメーカーを離れることが確認され、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツがLMDhプログラムの3年目に向けてドライバーラインアップを刷新する中で、自ら脱退を希望した。
マコウィッキは2014年にワークスドライバーに加わって以来、ポルシェで大きな成功を収めており、2022年のル・マン24時間レースでのクラス優勝や、2018年のニュルブルクリンク24時間レースでの総合優勝が、そのハイライトとなっている。
彼はまた、現行LMDh車両『ポルシェ963』の初期開発で重要な役割を果たし、2022年1月にバイザッハのテストコースで同車が最初にロールアウトした際には、そのドライバーも務めた。
ポルシェでの最後のレース出場を前に取材に応じたマコウィッキは、ポルシェ脱退後の人生に「新たな挑戦」を求めていると述べた。
「夢見ていたブランドでドライブする機会を得て、いまでもとても良い思い出がたくさんあるんだ」とマコウィッキ。
「ここ(バーレーン)に来るのは、間違いなく大きな感情を伴うことだったけど、それに加えて、『よし、新しい挑戦が必要だ』と言う時が来たとも思う」
「僕には、モチベーションを見つける能力も必要だ。ポルシェでは常にモチベーションがあったからね。でも、おそらく何か違う働き方を見つける能力も必要なんだ」
「モータースポーツは間違いなく変化しており、実際、僕らは常に大きな組織にたどり着く。僕はここに長いこと所属していた。だからこそ、僕はある種のルーティンに陥っていたんだ。それは、時にはポジティブなことではない。だからこそ、『よし、将来に向けて違うやり方をしよう』と言う時が来たんだよ」
マコウィッキのポルシェを去るという決断は、異なる労働環境を見つけたいという願望が動機だったとほのめかし、いわゆる“機械の歯車”のようには感じたくないという意欲を示している。
「僕らのグループには本物のレーサーがいるけど、それは大きな組織の一員なんだ」と彼は語った。
「サーキットでマシンを走らせる人もいるけど、ファクトリーで働いている人も同数いることを心に留めておかなければいけない」
「その点では、おそらくもう少し人間的な側面に立って、『常に限界を超えたい』と思うようになった理由を思い出す必要があると思う。いまは努力しているけど、大きな組織の中にいると、自分の声があまり聞かれないと感じることがあるので、しばしば大変なんだ」
「それが真実ではないかもしれないし、僕ら(の組織)には良い人がたくさんいると思う。でも、自分の声が聞かれないと感じることはあるものなんだ」
「そして、それは僕の年齢(43歳)の場合、難しい。とくに、ほとんどの人が自分より若い場合はね」
「僕が求めているのは、主に僕と同じ精神、同じビジョンを持っている人だ。それなら、耳を傾けてもらうために戦う必要はない。すべてが自然に起こるからだ。好きなことを何でもできる。カップルでいるとき、一緒にいるときにすべてが順調なのと少し似ているね」
「そして人生が少し違って見え始める頃には、口論が始まるものだ。そういうのと同じことなんだよ。『よし、僕と同じビジョンを持っている人を見つけよう』というわけさ」
「ポルシェのような大企業に属していると、妥協する必要があることはよく分かっている。自分が期待するものと比較して、妥協は大きいのか小さいのか? それが僕にとって重要なことなんだ。どこにいたって妥協が必要になることは分かっているけど、たとえば、僕と同じアプローチを持っている人を見つけたいんだ」
「僕はレースに人生を捧げている。4、5歳の頃からレースに情熱を注いできた。学校でレーシングドライバーになると書き、それを実現させるためにあらゆることをした。それが実現したのは幸運だった。こんなふうにキャリアを終えたいね」
「自分と同じことを望んでいる人たちと一緒に仕事をし、過去に感じたアドレナリンをもう一度感じなければいけない。僕はポルシェでそのアドレナリンを得たけど、僕らのような組織ではそれが難しいこともある」
■目標は変わらずル・マン総合優勝。アルピーヌ入りも噂
マコウィッキは、ポルシェからの離脱を要求したのは自分だったと明かし、2025年のラインアップに関する同ブランドの意思決定プロセスに支障をきたさないよう、早めに決断したと述べた。このフランス人ドライバーは、アルピーヌのLMDhプログラムが2年目を迎えるにあたり、同プログラムへの移籍が噂されている。
彼は、ル・マン24時間レースでの成功にさらに貢献したいという野心はいまも持ち続けている、と述べている。
「できれば、ル・マンで総合優勝したい。それが可能かどうか、見てみよう」とマコウィッキ。
「間違いなく、それは目標だ。フランス人ドライバーとして、ル・マンは間違いなく特別な場所だからね」
「僕の年齢で、『よし、どこか別の場所に行ってみよう』と言うのは、確かに挑戦だ。でも、僕と同じビジョンを持っている人がいることは確かだ。もし合意できれば、将来何が起こるか見てみよう」
「だけど、モータースポーツは間違いなく大きく変わったよ。だって僕は昔、ずっと小さい構造のところにいたからね」
「現在のマニュファクチャラーやプライベートチームの規模と、過去にマシンをオペレートするために働いていた人数を比較すると、僕らはいまやは2倍近くになっている」
「それが、すべてがより大きくなった理由だ。僕は、規模が大きいところで、正しい方法で仕事をするための考え方を持っている人を、見つける必要がある」
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安定は敗者。
勝ち続けることが絶対の成長ではない。
不安定でいることこそが大事なんだ。