カテゴリーが44年前に初めて産声を挙げた記念すべき場所。SCBストックカー・ブラジル“プロシリーズ”は、同国南部ポルト・アレグレはヴィアマンにある発祥の地、アウトドローモ・デ・タルマに帰還。2023年第3戦が5月20~21日に開催され、オープニングは開幕勝者チアゴ・カミーロ(イピランガ・レーシング/トヨタ・カローラ)が予選ポールポジションからの“ライト・トゥ・フラッグ”を決め、シリーズ通算勝利数を39にまで伸ばす結果に。
続くレース2では、19番手スタートながらタイヤ戦略も駆使した王者ルーベンス・バリチェロ(フルタイム・スポーツ/トヨタ・カローラ)が、金曜日に愛息でチームメイトの“ドゥドゥ”こと、エドゥアルドのクラッシュなども乗り越え、エモーショナルな大逆転勝利を飾っている。
王者カサグランデが復調のポール・トゥ・ウイン。マウリシオが選手権首位浮上/SCB第2戦
国内モータースポーツの最も重要なサーキットのひとつに数えられ、参戦ドライバーの誰もが「タルマは特別」と語る“聖地”での週末は、前戦の日程と重なりスペイン・バルセロナでELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズの任務を果たしたネルソン・ピケJr.(クラウン・レーシングTMG/トヨタ・カローラ)が戦線に復帰。その入れ替わりで、最後のインディ500に向けアメリカを訪れているトニー・カナーン(テキサコ・レーシング/トヨタ・カローラ)は、ルーキーのアーサー・ライストにシートを託しての渡米となった。
そんな金曜からトラックとセッションを掌握したのがTOYOTA GAZOO Racingブラジル陣営のイピランガ・レーシングで、プラクティスではセザール・ラモス(イピランガ・レーシング/トヨタ・カローラ)とカミーロがワン・ツー発進を決めてみせる。
「僕だけでなくチーム全体にとっても期待の持てる初日だった」と語った地元出身、FP首位タイム記録のラモス。「タルマは挑戦的なトラックだし、僕は地元のドライバーではあるけれど、実際のところカレンダーのなかでもっとも馴染みのないトラックのひとつでもある」と続けたラモス。
その意味では、シリーズのレギュラーメンバー全員が横一線の条件であり、タイヤの摩耗度合いやレコードライン上のラバーインなど、週末が進むにつれて「大きく改善の余地は出る」と読む。
「オリジナルのレイアウトでここをドライブしたのは初めてで、驚いたね(笑)。僕らは限界ギリギリの緊張感を持って攻めるけど、それが楽しいし、それが僕らの好きなことなんだ。素晴らしい週末になると楽観的に思ってはいるけれどね!」
続く予選でもやはりトヨタ・カローラの速さは衰えず、初期段階であるQ1では25名のドライバーが秒差圏内にひしめくなか、初参戦のライストがQ2進出デビューの快挙を達成。
そのQ2ではシリーズ5冠の“帝王”カカ・ブエノ(KTFスポーツ/シボレー・クルーズ)と、リカルド・ゾンタ(RCMモータースポーツ/トヨタ・カローラ)が1分04秒739の完全同タイムを記録する珍事も、計時タイミングで一歩先んじたブエノがQ3へと進むことに。
最後のQ3では“予選最速男”との異名も取ったカミーロが主役を演じ、意外なことに今季初、キャリア通算28回目の最前列を獲得した。
■レース2ではバリチェロが19番手から大逆転。ファンからも大歓声
「ここタルマには非常に特別な意味と思い出がある。カートから4輪への移行期で、16歳のときにポールを獲得し、初勝利を収めたのもここだった。キャリアの別の段階で、トヨタ・カローラやイピランガ・レーシングとともにここに戻り、良い仕事ができて最高だ」と語った38歳のカミーロ。
「今日はまずお祝いをしたいが、この先に何が待ち受けているかは分かっている。おそらくここは、タイヤを極端に消耗する攻撃性の高いトラックで行われる、今年最も過酷なレースだ。摩耗をシビアに管理しながらドライブする必要があるね」
迎えた日曜現地午前の12時40分開始、30分+1ラップ勝負のレース1は、有言実行のポールシッターが義務ピットストップの期間を除いて、事実上レース全体を支配。2004年デビューのSCBキャリアで最多勝記録を更新する39勝目を飾ると同時に、ポイントリーダーに浮上する大きな勝利となった。
「まずは素晴らしいクルマを提供してくれたチームに感謝したいと思う。スムーズに見えたかもしれないが、レース全体を通して(2番手の)フェリペ・フラーガ(ブラウ・モータースポーツ/シボレー・クルーズ)とプッシュしあっていて、想定よりも少し速いペースを余儀なくされた。僕にとって重要なのはポイントの合計であり、だからこそタイヤを温存することを心配していたよ」と、続くレース2でも5位入賞でポイントを重ねたカミーロ。
前戦トップ10リバースで争われたレース2は、ギリェルメ・サラス(KTFスポーツ/シボレー・クルーズ)と帝王ブエノがフロントロウ発進を決めたものの、直後にルーカス・フォレスティ(A.マティス・フォーゲル/シボレー・クルーズ)がクラッシュを喫し、いきなりのセーフティカー導入となる。
これを好機に躍進を見せたのが19番手スタートだったバリチェロで、新品のタイヤセットを温存する作戦でレース2に挑んでいたディフェンディングチャンピオンは、9周目から20周目までのピットウインドウ中に素晴らしいリカバリーを実現すると、交換作業後はフレッシュラバーも威力を発揮し、当時レースリーダーだったラモスに次ぐ2番手に浮上してくる。
ここから終盤に向けプッシュを開始したバリチェロはラモスのオーバーテイクに成功し、そのまま23周のチェッカー。クルマを止めるとすぐに、前戦勝者カミーロとともにボックスとトラックを隔てる手すりをよじ登り、ファンの大歓声に応えるとともに、金曜の公式練習中にTala Larga(タラ・ラルガ)のコーナーで大クラッシュを喫していた息子の事故を思い、感情をあらわにした。
「今日は本当にリズムがなかった。チアゴ(・カミーロ)とセザール(・ラモス)は別のレベルにいた。だから僕らは戦略を考え出す必要があったが、それはうまくいった。クレイジーな週末だったから勝ててうれしい」と続けたバリチェロ。
「そして天の御父に感謝するため、レース直前にタラ・ラルガに立ち寄ったんだ。人生は神の息吹に加護を受けている。ここで彼と勝利の喜びを共有できたことを、心から感謝している」
これでカミーロがランキング首位に立ち、2021年チャンピオンのガブリエル・カサグランデ(A.マティス・フォーゲル/シボレー・クルーズ)を挟んでバリチェロが3位浮上に成功。続く第4戦は6月16~18日に高速トラックのカスカバルで争われる。
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