クルマのヘッドライトといえば、昔はハロゲンが主流でしたが、HIDが登場し、この10年の間でLEDへと進化しました。さらに最近は、自由度の高いLEDライトの特徴を生かしたADBやAFSのような配光制御を採用するモデルが増えています。
夜間の安全運転にとって重要な役割を果たすヘッドライト。その最新技術をご紹介します。
もう絶対無理?完全に不可能??「変形」大好きリトラクタブルライトの名車たち
文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
写真:TOYOTA、LEXUS、HONDA、NISSAN、MITSUBISHI、SUBARU
イラスト:著者作成
新車でのLED普及率は70%!!
2000年以前のヘッドライトの主流は、ハロゲン(電球)ライトでした。その後、より明るいHID(キセノン)ライトが登場し、さらにこの10年の間に長寿命で消費電力の低いLED(発光ダイオード)ライトへと進化し、現在はLEDライトが主流となっています。
・ハロゲン(電球)ライト
不活性ガスとハロゲンガスを封入した電球のフィラメントに電流を流し、発光する仕組みです。明るさではHIDやLEDに劣り、消費電力が多く、寿命が短いのが欠点です。
一方で雨や霧の時には視認性が良く、発熱が大きいので凍結した雪を解かすので雪に強い特徴があります。安価なので、廉価モデルではまだ多用されています。
・HID(キセノン)ライト
アーク放電を利用したライトで、最大のメリットは明るいこと。ハロゲンライトの約2倍の明るさと20%以上の広い照射角を持ちます。消費電力が少なく、フィラメントがないため球切れの心配がなく、寿命はハロゲンライトの3年に対して5年と長いです。国内乗用車で初めて採用したのは、1996年発売の日産2代目テラノで、特にスポーツモデルを中心に採用が進みました。
課題は、コスト高であること、点灯してから最大光量を発するまでに5~10秒かかることで、使用する場合はその遅れに対する配慮が必要です。
・LED(発光ダイオード)ライト
電気を流すと発光する半導体の発光ダイオード。明るさは、HIDよりやや劣りますが、15年という圧倒的な長寿命と、消費電力がハロゲンライトの約1/3と少ないことが特徴。また、小型化によるデザイン性の向上や配光制御ができる自由度の高さも大きなメリットです。2007年、レクサスLS600hによって世界で初めて採用され、現在は軽自動車も含めて採用が進んでいます。
課題は、HIDよりもさらにコストが高いことですが、普及とともに低コスト化が進み、現在新車の普及率は70%を超え、ヘッドライトの主流となっています。
ヘッドライトは、ハロゲン→HIX→LEDへと進化し、現在は長寿命で消費電力の低いLEDが主流(イラスト:著者作成)
LED化によって進む、配光技術
ヘッドライトのLED化が進むと、明るさが向上する一方で、対向車にとっては幻惑(眩しさ)によって危険な状況になる場合があります。明るさを確保しながら眩しさを避ける方法として、近年、自在に照射エリアや照射量を最適化する配光制御の採用が進んでいます。
最も一般的な配光制御は、ハイビームとロービームを切り替えるオートハイビームです。さらに、対向車や歩行者などの幻惑を回避するADB(アダプティブ・ドライビング・ビーム、配光可変ヘッドライト)、ステアリングを切った方向に照射して視界を確保するAFS(アダプティブ・フロントライティング・システム、配光可変型前照灯システム)などがあります。
・オートハイビーム制御
道路運送車両法の保安基準では、通常はハイビームで走行し、対向車とすれ違うときや前方に先行車がいるときにはロービームに切り替えること、またロービームの照射距離は40m、ハイビームの照射距離は100mと定められています。
オートハイビーム制御では、ハイビームとロービームを自動で切り替えます。前方車両(先行車と対向車)をカメラなどで検知するため、自動緊急ブレーキシステムが搭載されているモデルのほとんどは、オートハイビームも採用しています。
切り替える手法としては、複数のLEDの発光箇所を切り替えるブロック制御方式と遮蔽板で切り替える可変シェード方式があります。
・ADB(配光可変ヘッドライト)
オートハイビームの進化版である、ADB。ハイビームで走行中に対向車を検知すると、その車両のエリアのみ遮光し、他の領域はハイビームのまま照射するため、前方車両のドライバーに眩しさを与えることなく、ハイビームで遠方の視界が確保できます。
切り替え手法は、オートハイビーム制御と同様にブロック制御とシェード制御が使われます。基本原理は同じですが、メーカーによってAHS(アダプティブハイビームシステム)、ALH(アダプティブLEDヘッドライト)、マトリクスLEDヘッドライトなどと呼ばれます。
2004年にアウディとBMWが採用を進め、その後国内でもトヨタのレクサスやクラウン、マツダのCX-8やCX-5など多くのモデルに採用されています。
・AFS(配光可変型前照灯システム)
AFSは、コーナリング走行中にステアリングを切った方向に光軸を移動させて、進行方向前面を照射するシステムです。いち早く、死角の車両や人などの障害物を発見して、安全に回避行動を取ることができます。
基本的な手法は、ライトの光源をステアリング舵角や車速に応じて自動で左右に動かします。また、コーナリング時には左右に内輪差があることを考慮して、左右のライトを異なる角度で動かして視認性を上げます。
世界で初めて採用したのは、2003年に登場した2代目ハリアーのインテリジェンスAFSで、その後同様のシステムの採用が進んでいます。
代表的な配光制御のADBは、前方車両のエリアのみ遮光して他の領域はハイビームのままで照射。AFSは、操舵の方向に合わせて光軸を移動させて、進行方向前面を照射する(イラスト:著者作成)
レーザーライトやブロードスキャンなどの最新技術も!!
最後に、最新のヘッドライト技術を2つ紹介します。
・レーザーライト
2015年、BMWとアウディは、オプション設定でレーザーライトを実用化しました。照射範囲は、LEDの300mに対して約2倍の600mと格段に広く、デザインの自由度もさらに高められます。もちろん、半導体レーザーは高価なので、普及にはまだ時間がかかりそうですが、将来に向けた次世代光源の本命と位置付けられています。
・ブロードスキャンADB
レクサスシリーズで採用されているのが、ADBを発展させたブロードスキャンADBです。12個のLEDを走査(スキャン)することで高精度な配光を実現し、対向車や前走車に対する遮光範囲を制御可能としました。これにより、遮光範囲を必要最小限の範囲に狭めて、対向車側から横断する歩行者などを早期に発見できます。
トヨタのレクサスなどで採用されているブロードスキャンADB 。遮光範囲を必要最小限の範囲に狭めて、照射領域を広げて歩行者などを早期に発見できるシステム
◆ ◆ ◆
ハイビームだと視界は確保できるが対向車を幻惑するので危ない、でもロービームだと、照射距離が短いため歩行者や障害物の発見が遅れて危険。これを解決するのが、最新のLEDヘッドライトを使った配光制御技術です。今後さらに進化して、夜間の交通事故防止に貢献してほしいですね。
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みんなのコメント
乗っている人間のマナーは一向に良くなりませんね。
灯火類だと
・トンネル内や夕暮時の無灯火
・晴れた夜間のフォグライト点灯
・濃霧でもないのにバックフォグ点灯
などなど・・・
ドライバーに対する、上記のようなマナーの説明も必須かと。
ヘッドランプのサイズで白熱球でしたからハロゲンより暗いけど熱くなるほど熱を出してましたから雪もすぐに融けてました。
しかし今見たら暗くて夜間走行は怖いです。(田舎道だけですけど)