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ライバルを寄せ付けないメルセデス、4戦連続1-2の鍵はチームにそなわる挽回能力【今宮純のF1アゼルバイジャンGP分析】

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ライバルを寄せ付けないメルセデス、4戦連続1-2の鍵はチームにそなわる挽回能力【今宮純のF1アゼルバイジャンGP分析】

 2019年F1第4戦アゼルバイジャンGP、今年は全く荒れずに終わった決勝レースで、メルセデスのバルテリ・ボッタスがポール・トゥ・ウィン。フリー走行から着々と準備を整えるメルセデス陣営の底力を、F1ジャーナリストの今宮純氏が振り返る。

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F1第4戦アゼルバイジャンGP 決勝トップ10ドライバーコメント

 完全無欠なメルセデス――。開幕から毎戦、まざまざと強さを見せつける彼らの勝ちパターンに、そう言わざるを得ない。F1第4戦アゼルバイジャンGPもまた“1-2フィニッシュ”、初日の出遅れを挽回してみせた4戦連続の圧勝、進撃は止まらない。

 昨年からの戦績を加えると“6連勝”、現在ダブル上位入賞を16戦つづけている。これまでは、フェラーリとの「2強時代」と言われていたが今シーズンはメルセデス1強になりつつある。記録的にもそう言える。ちなみに1952年開幕から圧倒的な“1-2フィニッシュ”を6戦つづけたのはフェラーリ(全7戦・F2規定シーズン)。それに迫る強さを見せるのが現代のメルセデスである。


 いまのメルセデスの強さはチーム組織にそなわる挽回能力にあるのだろう。ここでもバーレーンGP再現のようにフェラーリのルクレールに先行され、ストレートでも低速コーナー区間でも対抗できずにいた。最後の土曜フリー走行になっても1分41秒台で1-2を占めたフェラーリ勢に対し、ふたりとも1分43秒を切れずマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)にも抑えられた。

 5番手ルイス・ハミルトンは何度もブレーキングでエスケープに逃げ込み、懸命にリミットを把握しようとしているのが見てとれた。中国GPで彼は「ドライビング・スタイルを変えていった」と明かしたが、自分で課題を見つけ出すと躊躇せず自己修正を試みる。同時に担当エンジニアたちとセットアップをリセットしながら、速さを掘り起こす作業に没頭していく。旧市街のセクター2タイムが劣るからダウンフォース・バランスをリヤ寄りにシフト、それによってセクター1と3がどう変わるのか。17ラップの間に確認走行を実行、ひたすらリミットを探っていた。

■バルテリ・ボッタスもフリー走行でリミットを探る
 ボッタスも19ラップを同じ目的で進めた。ふたり合わせて36ラップ、これはフェラーリ勢の28ラップよりも多い。初日から先行した相手は予選仕様のチェックに時間を割き、昨年PPタイムに肉薄する仕上がりに自信を深めていた。とくに単独ラン(トーイング無し)でトップのルクレールはセクター1と2で最速。ブレーキング・タッチは直角コーナーでも、旧市街エリアの狭いカーブでも抜群だ。

 流れは明らかにフェラーリ優勢に見えた。いや、メルセデスがそう見せかけていたのかもしれない。予選Q1はハミルトン3番手、ボッタス6番手にとどまり、彼らはなりを潜めた。このセッションにロバート・クビサ(ウイリアムズ)の8コーナー事故が起き、Q2開始が遅れた。この貴重な中断時間にメルセデス・チームが何を模索し、何を変え、何をドライバーと“協業”したのか。

 温度条件が急激に低下するコンディションをリサーチし、それに合わせこむ微細なチューニングを施した(のだろう)。こういう状況下のインサイダー無線情報はいっさいOAされず、ガレージ内映像もOAされないが……。


 遅れたQ2セッション開始にフェラーリは満を持したかのように(過信したのか)、硬いミディアムで行かせた。ふたりともそれに従った。そしてシャルル・ルクレールが8コーナーでクラッシュ。アゼルバイジャンGP勝負の“瞬間・分岐点”となった。

 手前の7コーナーを新鋭はすばらしい加速で立ち上がり、その勢いのままブレーキングに入った。速すぎる(!)。ミディアムの縦方向グリップはソフトと違い、彼のリズム(ソフト)との違いがあった。ロックアップする急減速操作も間に合わずクラッシュ、直後に事故現場を通過したベッテルはちらりと新鋭がやってしまったのを横目で見た。

■上位勢は同じ顔ぶれでも、中団勢は大混戦
 Q2は2番手ボッタス、3番手ハミルトンでQ3進出、フェラーリに追いつき、もうイーブンだ。最速ルクレールが自滅したフェラーリ内には動揺が走り、それはベッテルにも伝わった。さらに開始が遅れたQ3セッション、ベッテルの走りは慎重で事故現場を含むセクター2で小さくなった(4番手相当)。

 昨日までここが遅かったハミルトンが最速セクター・タイムで抜けた。そしてもっと驚くべきはボッタスが全3セクターを2位/2位/3位でまとめ、0.059秒差でPPを得たことだった。前戦中国GPと同じだ。彼はデリケートな今年のタイヤのエネルギー配分を把握し、このラップを夕闇迫る中で完成させた。



――金曜から荒れたアゼルバイジャンGPだったがレース展開はクリーンに進み、スタートで並走する王者に先んじたボッタスが勝ち抜いた。終わってみれば第4戦もまたトップ5メンバーは開幕戦から全く同じ、ボッタスからルクレールという顔ぶれだ。毎戦変わるのは6位入賞者メンバーでケビン・マグヌッセン(ハース)、ランド・ノリス(マクラーレン)、ピエール・ガスリー(レッドブル・ホンダ)、セルジオ・ペレス(レーシングポイント)と激戦が続く。

 ヨーロッパ・ラウンドを前に序盤を総括すると、今シーズンは“1強メルセデス”と“Bリーグ超混戦”の二重構造できている。これがどう変わるのか。第5戦スペインGPが早くも春の決戦場となりそうだ。


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