F1シンガポールGPのファステストラップをめぐり、対立していたマクラーレンのザク・ブラウンCEOとレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表が、和解をしたようだ。
シンガポールGPではランド・ノリスが圧倒的な強さで勝利を届けたマクラーレンだが、レッドブル陣営がダニエル・リカルド(RB)にファステストラップを取らせることでノリスから1ポイントを奪い、ノリスとタイトルを争うマックス・フェルスタッペン(レッドブル)をサポートしたとして、不満をあらわにしていた。
■マクラーレン、リカルドの“奇妙な”ファステスト援護受けレッドブルとRBの関係見直しを要求「チームは完全に独立していなくては」
マクラーレンのアンドレア・ステラ代表は「これは大きな問題だ。スポーツマンシップとしての問題がすぐさま浮上するのと同時に、責任感を持って対処する必要がある」とコメント。各チームの独立性を確保する必要があると訴えた。
ブラウンCEOもレース後、リカルドのファイナルラップについて質問するつもりだったと記者団に語った。18番手を走行していたリカルドがファステストラップを記録したとしても、トップ10に入らなければボーナスの1ポイントは獲得できなかったからだ。
「A/Bチームの、素晴らしい競技的な行動だ。私はそれが許されることではないと思った」
そうブラウンCEOは、アメリカおよびカナダのデジタルラジオ『Sirius XM』に語った。
「だが我々がそれを目の当たりにしたのは初めてではないし、おそらく最後でもないだろう」
「私は過去にそれについて話したことがあるし、そういうことが起こると説明していた。そうした意図がなければ、(リカルドは)ピットストップしていなかっただろうからね」
しかしRBのチーム代表であるローラン・メキーズは、motorsport.comの独占インタビューでそうした憶測を打ち消した。
シンガポールGP後にリザーブドライバーのリアム・ローソンにシートを譲ることになるのではないかと見られているリカルドにとって、今回がラストレースになる可能性もあったことから、フレッシュなタイヤを履かせてファステストラップを狙わせたのだと説明したのだ。
「クレイジーな週末だっただけに、彼にチャンスを与えた。シンプルなことだ」と、メキーズ代表は語った。
「彼に休息を与え、良いラップを刻んでこの週末を最高の形で終えるチャンスを与えるということだ」
そんないざこざがあったマクラーレンとレッドブル。しかし両者は空の上で”和平交渉”を行なったようだ。
ブラウンCEOとホーナー代表はシンガポールGPの後、日曜日にイギリス行きの同じ飛行機のファーストクラスに乗り込み、おそろいのパジャマに着替えて、話題になったファステストラップ騒動について和解した。
ブラウンCEOは機内で撮ったホーナーとのツーショット写真に「帰りの飛行機でF1の平和は取り戻された」とキャプションを添えた。
「必要なときなのに、Netflix(F1ドキュメンタリーの撮影チーム)はどこにいるんだ? でも戦いはサーキットで続く。なんて素晴らしいスポーツなんだ!」
この時ブラウンCEOは、アロー・マクラーレンからインディカーを戦うパトリシオ・オワードのグッズである『Pato Who?』と書かれた帽子を被りながら、サムズアップして写真に収まった。
この写真に対し、レッドブルを来年3月に離れるエイドリアン・ニューウェイの妻であるアマンダは『彼がマクラーレンのキャップを被っていたら、何かがおきたでしょうね』とコメントを寄せた。
今季はF1の覇権をめぐり、幾度となく刃を交えているマクラーレンとレッドブル。ブラウンCEOがレッドブルの”非公式Bチーム”(RB)との関係、あるいはホーナー代表の個人的な問題を批判したのは、今回の騒動が初めてではない。同様にホーナー代表もマクラーレンのマーケティング担当者を侮辱したり、最近ではマクラーレンの”ミニDRS”リヤウイングを非難するなど、コース外でも火花を散らしている。
今回は笑顔の和解に至ったが、ノリスとフェルスタッペンはドライバーズチャンピオンを巡って今季残りのレースでも激しいバトルを繰り広げるだろう。
リカルドがノリスの1ポイントを削ったことで、シンガポールGP後のフェルスタッペンのリードは52ポイント。この数字は、残りの6レース+スプリント3回でノリスが全勝+ファステストラップ6回を獲得したとしても、フェルスタッペンが2位を獲得し続ければ、1ポイント差でフェルスタッペンがタイトルを獲得するという絶妙な点差となっている。
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