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概念を超越した速さ ブガッティ・シロン・スーパースポーツへ試乗 480km/h超の公道仕様 前編

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概念を超越した速さ ブガッティ・シロン・スーパースポーツへ試乗 480km/h超の公道仕様 前編

シロン・スーパースポーツ 300+の公道仕様

フランス西部、モルスアイムにあるブガッティ工場から、少し南へ移動したビショフスハイムという町のスポーツセンターまで、クルマで6分ほど。距離は6km程しかない。

【画像】超絶スピード ブガッティ・シロン・スーパースポーツ ディーヴォとヴェイロンも 全107枚

そんな至近の隣町まで、ブガッティのテストドライバー、アンディ・ウォレス氏はシロン・スーパースポーツを走らせる。4000rpm程度の回転数で900馬力を発揮する、同社最新のハイパーカーの片鱗が見え隠れする。

黒い勇姿の登場に、スポーツセンターへトレーニングしに来た学生が驚く。イストラクターと思しき男性も、遠巻きに眺めている。このクルマの存在感に、圧倒されているのだろうか。

公道用モデルとして、ウォレスは一般道でもシロン・ハイパースポーツの走行テストを重ねている。とはいえ、W型16気筒クワッドターボ・エンジンの最高出力は1600psもある。スピードリミッターは付いているが、440km/hまで作動しない。

これは、彼が運転し時速300マイル(482.8km/h)の壁を打ち破った、シロン・スーパースポーツ 300+の公道用レプリカと呼ぶべきクルマ。インテリアは、通常のラグジュアリーなシロンに近い。高品質なレザーがふんだんに用いられ、居心地が良い。

メカニズムは、基本的にシロンのレコードマシンと変わらない。0-100km/h加速は2.4秒、0-200km/h加速も5.8秒でこなす能力を秘めている。

0-400km/hは28.6秒 最高速度は482km/h

近年の超高性能な純EVも、似たような加速力を備えているから、驚く数字ではないかもしれない。そう書いていて、呆れてしまうけれど。

だがシロンなら、さらに加速できる。0-300km/h加速ですら、たった12.1秒。静止状態から400km/hまでも、28.6秒でこなす。

充分なストレートがあり、アクセルペダルを全開に保てば、加速が続き最高速度の482km/hへ迫れる。その状態では、100Lのガソリンタンクは8分間で空になるという。

この最高速度は、現在の純EVでは達成が難しいという。技術的に、生じる加熱を抑えきれないためだ。しかし、ブガッティの筆頭株主で純EVスペシャリストのリマック社は、その解決に取り組んでいるに違いない。

異次元といえる速さで走行していると、ガソリンだけでなく、タイヤもすぐに磨り減ってしまう。専用のミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2タイヤも、超高速域で走行した場合は、短期間での交換が指定されている。

それだけのガソリンを燃焼させるのだから、エンジンが吸い込む空気の量も半端ない。シロン・ハイパースポーツのインダクションシステムは、最大で1秒間に1000L(!)という体積の空気を、16本のシリンダーへ送り込むという。

英国価格275万ポンド(約4億4000万円)という価格にも驚かされるが、この驚愕の数字を並べるために投じられた技術力は相当なものだろう。運転の楽しさが、モーガン3ホイラーを超えるかどうかは別として。

ゴルフと同じくらい簡単に運転できる

ブガッティの技術者が成し遂げた偉業は、482km/hという速度だけではない。圧倒的な空気の壁が立ちはだかっているから、生半可なパワーでは打ち勝てない。だが、最先端の自動車工学をもってすれば、解決できなくはない。

それ以上に称賛すべき成果が、日常的に運転できるクルマとして仕上げられていることだ。これまでのヴェイロンや、ノーマルのシロンと同様に。

ブガッティを保有するフォルクスワーゲン・グループのハッチバック、ゴルフと同じくらい簡単に運転できる。むしろ、タッチモニターでダッシュボードが覆われた8代目より、実際に押せるハードボタンが残され、車載機能の操作は簡単なほど。

ウォレスと幾つか言葉を交わし、座る位置を交換するためシロン・ハイパースポーツのドアを開く。今度は筆者が運転席に座る番だ。ボディを観察していると、通常のシロンとスタイリングで異なる部分を、説明してくれた。

1番わかりやすい違いは、250mm延長されたテール部分。マフラーも水平に並ぶのではなく、左右に2本づつ別れて、縦に並んでいる。そのおかげで、リア・デュフューザーの面積を広げ、上方に大きくえぐることが可能になったという。

ロングテール化とディフューザーのデザインにより、空力的に理想的な「ティアドロップ」と呼ばれる形状へ、より近づけられている。ボディ後方の気流を整え、効率を高めているだけでなく、空気抵抗を減らしつつダウンフォースを増やしている。

420km/hでのホイールの遠心力は3000G

ウォレスによれば、420km/hで走るシロンのホイールリムに掛かる力、遠心力は3000Gにも達するという。つまり、空気を入れるバルブキャップが2.5gだとしたら、7.5kgの重さになるということだ。44gの空気圧センサーは、132kgにもなる。

通常のタイヤバルブでは、これほどの力には耐えられず空気が漏れてしまう。シロン専用のモノが求められる。通常のクルマでは心配する必要のないことが、あらゆる部位で生じる。高額になっても当然だ。

しかし、身体にフィットするレザーシートに座ってみても、そんな技術的な努力は伝わってこない。ラグジュアリーな仕立てで、モーターが内蔵され、スムーズにスライドする。

ステアリングホイールは小径で、リムも細い。きれいな丸ではなく、底辺がフラットに削られている。チルトとテレスコピックの調整は手動だが、ストロークは長い。

7速デュアルクラッチATはリカルド社製。ダッシュボードから滑らかに続くセンターコンソールに、美しく削り出されたシフトノブが突き出ている。センターコンソールを飾るアルミニウム・トリムは、1枚ものだ。

ドアに用意されたエアコンの送風口は、黒く塗られたプラスティック製にも見えるが、実際はチタン製。ドアポケットなど、幾つかの小物入れも上品に作り込まれている。

フロントのボンネットを開くと、小さいものの荷室がある。グランドツアラーとして乗ることもできるだろう。

この続きは後編にて。

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