2021年創設の電動ワンメイクSUVによるオフロード選手権『Extreme E(エクストリームE)』が、12月18~19日にイギリス・ドーセット周辺の陸軍基地施設をベースに開催された『the Jurassic X Prix(ジュラシック-Xプリ)』で初年度シーズンフィナーレを迎え、7度のF1王者ルイス・ハミルトン創設のX44から参戦するセバスチャン・ローブ/クリスティーナ・グティエレス組が念願のシリーズ初優勝を達成した。同時にチャンピオンシップも決着を迎え、開幕からの連勝を含む年間3勝を記録したニコ・ ロズベルグ率いるロズベルグ・Xレーシング(RXR)のヨハン・クリストファーソン/モリー・テイラー組が栄光の初代王者に輝いている。
初年度から新型コロナウイルス(COVID-19)感染症蔓延による渡航制限などの影響を受け、後半戦に予定された南半球ラウンドのキャンセルを決断したエクストリームEは、イタリア・サルディニア島での1戦に続き、ふたたびヨーロッパ・ラウンドでタイトル天王山を実施する運びとなった。
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風光明媚なジュラシック・コーストに設定された全長3.8kmの周回コースは、この最終戦限定フォーマットとして2周から3周にレース距離が延長され、スタートドライバーが連続周回を終えたのち、スイッチゾーンで男女ペアが入れ替わる方式を採る。
また、そこへ至るまでの週末の流れにも規制が加わり、フリープラクティスではすべてのチームが女性ドライバーから走行を開始。その後はセッションごとに男女を入れ替えながら進め、決勝グリッドに並ぶのは全チーム女性ドライバーとなることが事前に取り決められた。
粘土質の砂や砂利、泥のミックスサーフェースがコースを支配するドーセットでは、降雨確率の高い12月のイギリスという気象条件も組み合わさり、各ドライバーはグリップを探すための繊細なスロットル操作が求められるコースとなった。
そんな事前予想を反映したコンディションで進んだ予選では、いつもどおりWRC世界ラリー選手権“ナイン・タイムス・チャンピオン”のレジェンド、セバスチャン・ローブとクリスティーナ・グティエレスのX44が最速を記録し、これで「今季すべての予選でNo.1だったのは素晴らしいこと」とグティエレスも語るとおり、初年度全5戦の予選を完全制覇する偉業を達成。
2番手にはタイトル最有力候補のRXRが続き、3番手にはプラクティスで最速をマークしていた“帝王”カルロス・サインツとライア・サンズ組のアクシオナ・サインツXEチームが追う結果となった。
明けた日曜に開始されたセミファイナル1では、そのX44とこちらも元F1世界王者ジェンソン・バトンが率いるJBXEがファイナル進出を確定。続くセミファイナル2ではRXRとアクシオナ・サインツと順当な勝ち上がりとなる。
そして敗者復活とも言うべき最後の1枠を賭けた“クレイジーレース”のヒートからは、北米の雄ハマーを走らせるSEGI TVチップ・ガナッシ・レーシングや、エキサイト・エナジー・レーシング・パワード・バイ・マイエネルジらを撃破したアンドレッティ・ユナイテッド・エクストリームEのティミー・ハンセン/ケイティ・マニングス組が最後の切符を手にした。
■チーム創設者兼CEOのニコ・ロズベルグが両ドライバーに賛辞
引き続きマディな路面状況のなか開始された今季最後のヒートは、5名のレディースドライバーたちが一斉にスタートを切ると、誰もがポジショニングの重要性を理解していることもあり熾烈な勝負が繰り広げられる。
ここで先手を取ったのがX44のグティエレスで、背後につけたRXRのテイラーを筆頭に、JBXEから参戦するSTCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権唯一の女性ウイナー、ミカエラ-アーリン・コチュリンスキーやアンドレッティ・ユナイテッドのマニングスらを抑えてみせる。一方、プラクティス最速と好調さを維持していたサンズ(アクシオナ・サインツXEチーム)は、最後尾からの追い上げを強いられる苦しい展開となってしまう。
その後、クオリファイで18点を加算したX44が徐々に後続を引き離しに掛かると、事前に4点のマージンを削られたRXRはコチュリンスキー、マニングスに次々とパスされ4番手に陥落。タイトル獲得には4位以上でのフィニッシュが条件となるRXR陣営にとって、危険水域が近づく緊迫した状況に陥った。
同じくランキング上は1点差で総合3位を争うコチュリンスキーとマニングスは、激しいポジション争いを展開し、スティントを通じて接近戦を繰り広げたのちにスイッチゾーン到達目前に接触。これでマニングスがスピンを喫したものの、4番手テイラーまでのマージンはポジション維持に充分なもので、アンドレッティ・ユナイテッドはなんとか3番手でティミーに繋ぐことができた。
男性ドライバーへのスイッチ後もポディウム圏内の順位は維持され、X44のローブが盤石の走りでトップチェッカー。2番手にケビン・ハンセン(JBXE)、3番手にアンドレッティ・ユナイテッドのティミーとWorldRX世界ラリークロス選手権のハンセン・ブラザーズが続き、最後の注目はRXRが4番手を維持できるかに集まった。
しかしサインツへの交代時にトラブルに見舞われたアクシオナ・サインツXEチームは大きく遅れ、RXRはチャンピオンシップ獲得のための確実なマージンを得たままフィニッシュラインへ。これでクリストファーソンは、念願の初代チャンピオンの座を確実なものとしてチェッカーを受けた。
「本当にスゴい結果だ! 新しいレーシングシリーズ、新しいチーム、そして新しい場所での勝負が続いてきたが、僕らはここに到達するために一生懸命努力をしてきた。そしてチャンピオンになれたことは本当に素晴らしい成果だと感じているよ」と、栄誉あるチャンピオンチェッカードライバーの大役を果たしたクリストファーソン。
一方、スタートの攻防から窮地に陥ったテイラーも「今日は間違いなく緊張していたけれど、私とヨハンはタイトル獲得条件だけに集中していた」と振り返った。
「電動SUVシリーズ史上初のチャンピオンシップウイナーになるのは素晴らしい気分よ。今季は本当に過酷で、世界の最も厳しい自然環境と極端なコンディションでレースをしたけれど、私たちはチームとして協力し、この結果を得られたことに心から満足しているわ」
そしてチーム創設者兼CEOであるロズベルグも、両ドライバーに賛辞を贈るとともに「チャンピオンになることは、いつだってとても名誉なこと」だと語った。
「初代エクストリームEチャンピオンに輝いたことをとてもうれしく思うよ。RXR全体を本当に誇りに思っているし、チームはシーズンを通して一生懸命働き、一貫してパフォーマンスを発揮し続けた」と初年度を振り返ったロズベルグ代表。
「そして何より、シーズンを通して優秀なドライバーであり続けたモリー・テイラーとヨハン・クリストファーソンに心から『おめでとう!』と言いたい。僕らは気候変動への意識を高め、持続可能性を促進するためにこのシリーズに参加したが、レーシングチームとしても勝ちたいと思っているし、この気持ちを永遠に覚えていたいと思う」
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