もくじ
どんなクルマ?
ー SUVのSクラスを名乗るのに相応しいか
どんな感じ?
ー 広い車内のために51mm伸びた全長
ー サイズや車重の割には軽快に走れる
ー オンロード・パフォーマンスはSUVの範疇内
「買い」か?
ー プレミアムSUVの頂点のひとつ
スペック
ー メルセデス・ベンツGLS 400d 4マティックのスペック
試乗 BMW X7 xドライブ30d 英国で評価 インテリアは上質 X5に近い組成
どんなクルマ?
SUVのSクラスを名乗るのに相応しいか
7名乗りのGLがGLSと改名されたのは、2015年のフェイスリフトの時だった。SUVにおけるSクラスを目指しして。最良のクルマとして世界中で愛用されているメルセデス・ベンツSクラスの現状を見ると、かなり高い目標だといえる。正直、先代のGLSはその期待に充分には答えられていなかったと思う。
プレミアムSUVカテゴリーは、年々競争が激しくなっているのはご存知の通り。確固たる人気を誇るレンジローバーだけでなく、BMWからはX7が登場し、アウディからはQ7がリリースされた。そこでメルセデス・ベンツは、通算3世代目となるGLSで、改めてSUVのSクラスを名乗るに相応しい完成度を狙ってきた。
大型のSUVとしてのドライビング・ダイナミクスの向上に加え、最新の技術もふんだんに搭載。もちろん、ラグジュアリーさや快適性も大幅に引き上げてある。今回は主要市場のひとつとなる、アメリカ・ソルトレイクシティで評価の機会を得た。
どんな感じ?
広い車内のために51mm伸びた全長
幸運なことに、メルセデスのデザイナーはBMW X7の様に、GLSのフロントグリルを極端に大きくする必要性を感じなかったようだ。どちらかというと、近年改良を受けたGLEを大きくしたような、落ち着いた雰囲気を感じ取れる。やはり近くで見ると明らかに両車は異なっているが、全体のバランスは良く取れている。
今回メルセデス・ベンツが注力した部分が、車内のラグジュアリーさを高めること。特に後部座席周りに力が入っている。そんなGLSには、ほぼSクラスと呼べるだけの豪奢な機能を満載してきた。例えば、より広さを増した車内に、5ゾーンエアコンに2列目用のタッチモニター、11箇所ものUSBポートなど。
メルセデスによれば、2列目シートのレッグルームは先代よりも87mmも広げられており、3名がけのベンチシートのほか、2名分の独立したキャプテンシートも選択が可能となった。3列目はオプションとなるが、シートヒーターが内蔵で、194cmの身長の大人までなら快適に座れるという。
間違いなく、リアシートはとてもゆったりとしている。ただし、やはり3列目は、長時間の移動の場合は少し窮屈に感じるかもしれない。GLSで快適性を重視するなら、2列目に腰掛ける方が間違いない。車内空間を大きくするという理由で、大きなSUVのボディサイズはさらにひと回り成長している。全長は先代のGLSから51mm伸びて5213mmに達し、BMW X7よりも62mmも長い。
7名乗車の状態でも、GLSのラゲッジスペースには355ℓの容量が確保されている。もし2列目と3列目を折りたたんで2名乗車にした場合、荷室容量は2400ℓにまで増やせる。ラグジュアリーSUVだから、シートの折り畳みはボタンひとつで自動的に行うことができる。
サイズや車重の割には軽快に走れる
今回の試乗場所となったのは、広大なアメリカのユタ州。大型ピックアップでも難なく走れる道路が整備されているから、大きなGLSでもそのボディサイズを実感する機会は少ない。ボディにはいくつものカメラやセンサーが搭載され、運転支援システムも充実しており、運転にもすぐに慣れてしまった。だが、英国や日本のように狭い道路環境では、このボディ・ディメンションに手を焼く場面もありそうだ。
後部座席に座るひとの快適性に焦点が当てられてはいるものの、メルセデス・ベンツはドライバーのことも忘れてはいない。X7を超える大きいボディや2490kgの車重を考えれば、GLSは比較的軽快に走る。クルマを支えるのは、この手のクルマにはピッタリのエアサスペンションで、スムーズな乗り心地を確保している。
試乗車には21インチの大径ホイールを装備していたが、メルセデス・ベンツ自慢のEアクティブ・ボディコントロール・システムも搭載していた。路面を常にスキャンし、気づかない内にサスペンションの設定を路面状況に最適化してくれていたのだろう。ただし、英国の場合は22インチのホイールが標準装備で、右ハンドル車にはEアクティブ・ボディコントロール・システムの提供はないとのこと。
Eアクティブ・ボディコントロールなしのGLS580にも試乗したが、鋭い入力や荒れた路面では、流石に乗り心地に影響がなかったとはいえなかった。なお、このGLS580は、4.0ℓのV8マイルドハイブリッド・ガソリンエンジンを搭載するグレードだが、英国には導入予定はないそうだ。
オンロード・パフォーマンスはSUVの範疇内
英国でのリリース当初に提供されるエンジンは、330psを発生させる3.0ℓのディーゼルターボのみ。車重が2.5tもあるだけに動き始めにエネルギーを必要とするが、走り出してしまえば充分なパワーとトルクで、アクセルペダルに乗せる足に力を軽く入れれば、必要なスピードをスムーズに得ることができる。
直列6気筒のディーゼルエンジンはとても静かで、GLSのオーナーが定期的に走らせるであろう長距離移動の面でも適している。WLTPサイクルでの燃費は、10.2~11.6km/ℓとアナウンスされている。ガソリンエンジンとしては、367psの3.0ℓ直列6気筒エンジンを搭載したGLS450が、来年に導入予定となっている。
パワートレインに関係なく、GLSのオーナーが積極的にオフロード走行を楽しむとは考えにくいが、メルセデス・ベンツのエンジニアは厳しい悪路でも、平静を保って走破できる能力を与えたとしている。1495ポンド(20万円)のオプションとなるオフロード・パッケージを選択すると、GLSにはより悪路向けのドライブモードが追加され、ローレンジを備えたトランスミッションとトルク・オンデマンド型のアスクル・ロックシステムが装備される。今回の試乗コースの一部でもあった、ユタ州のATVトレイルコースでは充分な仕事を発揮し、簡単に走り抜けることが可能だった。
GLSが示したオンロードでの走行パフォーマンスは、あくまでもSUVの枠に留まるものだったことは確か。巨大なボディに豪奢な装備を満載した車重は軽くなく、メルセデス・ベンツのエンジニアは相当な努力をしたとは思うが、物理的な法則を克服することは難しいのだろう。だとしても、ラグジュアリーで長距離移動も安楽にこなせる、広々としたグランドツアラーであることは間違いない。
「買い」か?
プレミアムSUVの頂点のひとつ
乗り心地の面では、Sクラスのように完璧ではなかったとはいえ、大幅にラグジュアリーさを増したインテリアだけでも、新しいGLSがSUVのSクラスと名乗る違和感は小さくなった。今回の試乗車は英国に導入されるグレードとは異なってはいたものの、ボディサイズを感じさせない軽快なドライバビリティも叶えている。メルセデス・ベンツは良い仕事をしたといえるだろう。
もしオンロード、オフロード問わず、圧倒的な贅沢さに浸っていたいのなら、新しいGLSは拡大し続けるセグメントにおいて、頂点のひとつにある。しかし、英国や日本での首都圏の道路にもフィットできるかどうかは、 機会を改めて確かめてみたいところではある。
メルセデス・ベンツGLS 400d 4マティックのスペック
■価格 7万4075ポンド(1007万円)
■全長×全幅 5213✕1960mm
■最高速度 238km/h
0-100km/h加速 6.3秒
■燃費 10.2-11.6km/ℓ(WLTP)
■CO2排出量 227-258g/km(WLTP)
■乾燥重量 2490kg
■パワートレイン 直列6気筒2999ccターボ
■使用燃料 軽油
■最高出力 330ps/3600-4000rpm
■最大トルク 71.2kg-m/1200-3000rpm
■ギアボックス 9速オートマティック
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