今見ても美しいピニンファリーナのデザイン
ピニンファリーナというと懐かしのカロッツェリアのひとつ……そんなイメージを持つかもしれないが、じつはそんなことはない。2021年8月にはアウトモビリ・ピニンファリーナからフルカーボンボディのハイパーEV「バッティスタ」(=1930年のピニンファリーナ創設者の名)が公表されたし、7月には、同社初のARにより100%バーチャルで開発されたコンセプトモデル「テオレマ」(=定理)を発表している。
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ピニンファリーナは2020年に創設90周年を迎えたところだが、今やデザイン工房、コーチビルダーの域を超え、将来も見据えた自動車メーカーとしての立ち位置も模索中という訳だ。
じつは壮大な存在すぎて、テーマとしてどう取り上げるべきかは、こういうジャンルには目がないというAMW編集部・担当Yさんとも随分前から打ち合わせを重ねてきた。とはいえクルマ好きにとって……ましてカーデザインに関心が高いならなおさら……避けて通れないのがピニンファリーナだろうということで、意を決して(!)記事化が決まった次第。これまでに手掛けてきた名車を振り返っていこう。
三菱パジェロio(イオ)
ところでピニンファリーナということで、今回まず思い至り、筆者の蔵書ならぬ“蔵カタログ”のなかから発掘となったのが、パジェロio(イオ)だった。そういえば……という感じでもあるが、1999年、トリノのピニンファリーナ社の工場で欧州市場向けに“パジェロピニン”の生産が開始されていて、その日本仕様が“ソレント”のグレード名で日本市場でも展開されていた。
カタログはそのときのもので、専用の外観(フロントグリル、サイドシルモール)をはじめ、内装ではピニンファリーナから直接届けられたという専用シート地や、ドアトリム、インパネの専用表皮とpininfarinaのオーナメントが光っていた。
キャデラック・アランテ
もう1台、有名なところだがキャデラック・アランテ(1986年)も見逃せない。ピニンファリーナがイタリアでボディを仕上げ、デトロイトに空輸、エンジンほかメカニカルコンポーネンツを組み付け完成車にするという凝った手順で作られていたクルマ。
2002年のキャデラック100周年を記念した冊子でも取り上げられていたが、じつはキャデラックとピニンファリーナの関係は長く、写真で小さく写っているのはそのなかの1台、1959年のショーモデル、スターライトクーペだ。
プジョー
一方でおなじみのクライアントといえば挙がるのがプジョー。近年でいうと407クーペあたりから以降はプジョー社内のデザインに移行したが、その407クーペでいえばひとつ前の406クーペはピニンファリーナが手がけたモデルだ。両車を見較べれば、IDチックな407クーペに対し、流麗で優雅な自然体のフォルムをさりげなく身に纏った406クーペがどれだけステキだったことかがわかる。
プジョーとピニンファリーナの関係は古くからのもで、セダン系であれば403(1955年)以降、504(1968年)、505(1979年)、405(1987年)、605(1989年)などがあった。いずれもセダンでありながら美しくプレーンなフォルムが印象的なクルマたち。
コンパクト系では205(1983年)、306(1993年)などもある。205ではCTIカブリオレの幌部分もピニンファリーナが手がけており、同様の手法が用いられたのがホンダ・シティカブリオレだった。
アルファロメオ・スパイダー&フィアット124スパイダー
もちろんイタリア車とピニンファリーナも、なくてはならない存在、関係にある。アルファロメオ、フィアット各車で例が見られるが、アルファロメオ・スパイダーとフィアット124スパイダーは有名なところ。
アルファロメオ・スパイダーは、ポートテール、カムテールとリヤエンドの造形など手を加えながら、最初のモデルが登場してから27年も続いた。そして、やはりピニンファリーナの手による次世代のスパイダー(とGTV)に座を譲った。
アルファロメオ164
アルファロメオではほかにも、セダンの164(1987年)がピニンファリーナだ。ちなみに同じプジョーのセダンの405、605とのデザイン的な近似性が強く感じられ、同年代であったことを物語る。
クーペ・フィアット
フィアットも古くからピニンファリーナとの関係を持っていたが、1993年のクーペ・フィアットでは、内装を手がけるなどしている。
まだまだあるピニンファリーナデザイン
イタリア車ではランチアも、ピニンファリーナとは深く関係していたブランドのひとつ。ただしそれは往年のことで、近年では、ランチア・テーマ(1984年)に追加設定されたワゴンのルーフまわりの設計を手がけている。
ほかにもロールスロイス、ベントレー、メルセデス・ベンツ、ブリストル、シボレー、ビュイック、クライスラーなども手がけている。
ピニンファリーナといえば王道のフェラーリ
そしてピニンファリーナといえば、やはり外せないのがフェラーリだろう。
手元にある資料に当たると、最初のコラボレーションは1952年のフェラーリ212インター・カブリオレから。以降、レーシングモデル、ショーカーを含めて、あらためて振り返ると驚くほど意欲的な台数のフェラーリを手がけている。
筆者の手元にある514ページのピニンファリーナの解説書にあらためて目を通し直し、勉強し直さなければと思った次第。今回はごく有名なモデルを写真でご紹介しておくことにする。
しなやかな美しさ。ピニンファリーナの“作風”をひとことで表すと、そうなる。だから人と、クルマ好きの琴線に響くのだろう。
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