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【金子浩久のくるまコンシェルジュ】ランドローバー「レンジローバーPHEVオートバイオグラフィ」

掲載 更新 1
【金子浩久のくるまコンシェルジュ】ランドローバー「レンジローバーPHEVオートバイオグラフィ」

■連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ

 最近のクルマの多機能、高機能ぶりには眼を見張るばかりだ。特に、運転支援技術やパワートレインの電動化、インターネットへの接続などは、どれもこれも新しいものばかり。新しいから、その更新ぶりも日進月歩。「そんなことまでできてしまうのか!?」と、日頃から多くのクルマを取材している専門家でさえも驚かされてしまっている。まだまだ馴染みの薄い新技術や走りっぷりを自動車評論家・金子浩久氏が相談者とともに、実際に話題のクルマを運転して、試しながらその効能と真価を探っていこうという読者参加型企画です!

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◎今回の相談者 KSさん

◎今回のクルマ ランドローバー「レンジローバーPHEVオートバイオグラフィ」

◎今回の相談内容 

KSさんは50代。外資系企業勤務。現在、2013年式アウディ「S6アバント」を新車以来使用中。クルマの使い途は、片道約50kmの通勤の他、オフタイムのゴルフや妻と愛犬2匹と一緒に東北や四国への長距離ドライブ旅行を楽しんでいる。今回、コンシェルジュを訪ねた目的は2つ。SUVに買い替えようかと検討していることと、その際には運転支援機能に代表される最新の安全装備が充実しているクルマを選びたいが、それらがどのようなものなのかを運転して体験してみたい。

スマホのアプリで操作できる!?

 SUVというクルマに乗ってみたい。そこに装備されている最新の運転支援機能を体験してみたい。そんなKSさんの希望に沿うクルマとして用意したのが、ランドローバー社の「レンジローバー」。理由は、世界で大流行中のSUVも数多あれど、それらを代表するのがレンジローバーに他ならないからだ。

 軍用車に出自を持ち、どんな悪路でも走り切ってしまう踏破力を持つオリジナル・ランドローバーにオンロード性能と快適性を組み合わせた「レンジローバー」を、まず最初に乗ってみてもらいたかった。

 まずは「レンジローバー」から。王道中の王道だけれども、世界で大流行りのSUVは、このクルマから始まったからだ。最新の「レンジローバー」は最高水準のオフロード走破性能はもちろんのこと、ラグジュアリーな仕立ても申し分ない。オンロードを走れば重厚でありながらシットリと洗練され、極上の乗り心地をもたらしてくれる。おまけに、パワートレインには最新のプラグインハイブリッド版も選べる。運転支援機能やコネクティビティなども完備している。KSさんにピッタリではないか! 

 約束の日に乗って行ったのは「レンジローバー P400e オートバイオグラフィ」。300馬力の2.0L 4気筒エンジンに105kWの電気モーターを組み合わせたプラグインハイブリッドシステムで4輪を駆動する。



「大きいですね!」

 初めて間近に見た人は、だいたいボディサイズの大きさに驚く。全長は5005mm、全高が1865mm、全幅は1985mmある。シャープな直線と平面(に見える)で構成された造形だけれども、存在感だけでも圧倒的だ。ひと通り、車内外を見てもらった。



「革やウッドがふんだんに使われて、ラグジュアリーですね」

 オートバイオグラフィというのは最上グレードなので、最上質な革やウッドなどがふんだんに使われている。奥さんも、助手席や後席に座ってみる。

「ワンコと旅行に行く時はケージに入れて、リアシートに置きます。先月、山形に行った時には、彼女がその隣に座っていきました」

 犬をクルマに乗せる時には、飼い主がそばにいて安心させてあげることも必要になる。犬を乗せる場合については、KSさんから事前に質問をひとつもらっていた。

「旅行先でコンビニに寄ったり、トイレ休憩をする時に犬は車内に残すのですが、特に夏のような季節は暑くなって過酷です。プラグインハイブリッドならば、クルマをロックして離れている間もバッテリーでエアコンを掛け続けることができるのでしょうか?」

 改めて訊ねられると、僕も答えられない。どうなんだろう?確かに言われてみれば、通常のバッテリーの他に走行用の大きなバッテリーを積んでいるプラグインハイブリッドならば、その電力を使ってできそうな気がしてくる。考えたこともなかったので、虚を衝かれた。ランドローバーの広報スタッフに訊ねたら、答えは簡単だった。

「アプリで、できますよ」

 オーナー向けの「InControl」アプリをスマートフォンにダウンロードし、クルマから離れたところからエンジンを始動することができる。その機能を利用すれば簡単な話だ。アプリで充電量やガソリン残量、走行可能距離、施錠状態、位置情報などの停車中のクルマの状態を確かめ、離れたところからいくつかの遠隔操作が可能なことは僕も耳にしていた。ランドローバー社のクルマに限らず、各社そうしたアプリを用意していていることも知っていた。ただ、それがユーザーが具体的にどう使ったら便利なのか?までを想像したことがなかったのだ。

 多機能化する現代のクルマが、どのようにユーザーのカーライフに便益をもたらしていくのかまでを良く考えていなかった僕の怠慢である。愛犬と旅行に出たら、ワンコを車内に残したまま施錠して構わない。すぐにアプリを使ってエンジンを始動させればエアコンは効かせ続けることができる。走り出す前にそれが判明しただけで、KSさんの「レンジローバー」に対する親近感はグッと増したようだ。最初は、僕がハンドルを握った。住宅街の細い道を抜ける際には、四方に向けられたカメラがクルマのすぐ近くの様子をセンターモニターに映し出す。

「おおっ、これは細いところを通る時に助かりますね」

「レベル2」の運転支援技術とは?

 空いた国道に出て、快調に走る。

「レンジローバーを推薦する理由として、しっとりスムーズ、なおかつ重厚な乗り心地を金子さんは最初から話していましたけれども、その通りですね。とても乗り心地が良く、快適です。助手席に乗っていても、よくわかります」

 現在、「レンジローバー」には「レンジローバー・スポーツ」や「レンジローバー・ヴェラール」などのバリエーションが存在している。それらも上質な乗り心地を有しているが、較べて乗ると本家「レンジローバー」はその洗練ぶりで確実に兄弟を凌駕している。長距離を走ることがある、大人のドライバーに僕がぜひ勧めたくなる第一の理由だ。高速道路に乗る。ここも空いていて走りやすい。

「どうやって、アレが設定できるのですか?」

 アレとは、運転支援機能のこと。KSさんは、それを体験したくて仕方がないのだ。自身のアウディ「S6アバント」には、単純なクルーズコントロールしか付いていない。最近の自動車メーカーのCMやメディアの記事の中で取り上げられることの多くなった運転支援機能がどんなものなのか? 言葉では理解できるのだが、走行中のクルマでは実際にどのように働くのか?

 それを体感するために、今回、時間を作って僕と一緒に乗ることにしたのだ。「レンジローバー」の運転支援機能には、ACC(アダプティブ・クルーズコントロール)とLKAS(レーンキープ・アシスト)が備わっている。ACCは、前方を走るクルマとの車間距離を何段階か選ぶことができて、それを保ったまま追走できる。最高速度も任意に設定できる。

 KSさんの「S6アバント」では速度を設定して走ることができないから、車間距離は一定に保てないし、その結果として前のクルマに近付き過ぎてしまうことも防げない。LKASは、クルマが車線内を走り続けることを支援する機能で、ウインカーを出さずに車線を越えようとすると警報を発すると同時にステアリングホイールを回し戻して、車線から外れないようにしてくれる。

 これら2つの機能を起動させるためには「レンジローバー」では、ステアリングホイール右側にあるSETボタンを押し、プラスとマイナスのボタンで最高速度を設定し、車間距離を選ぶ。この3つの操作を行わなければならない。文字に記すと煩わしいが、メーターパネル中央に運転支援機能を表示させ、それを見ながら行えば、すぐに慣れるはずだ。

「起動させてみましょう。いま、前にトラックが走っていますね? あれに付いていくことにしましょう」

「はい」

 3つの操作を行い、最高速度を90km/hに、4段階の中から選べる車間距離を最短から2つ目を選んだ。「レンジローバー」がトラックを捕捉し、システムが起動した証しとして、メーターパネル中央に表示が現われる。トラックをクルマの後ろ姿を表したアイコンに、車間距離を長方形の個数で表現し、それらの左右に車線が斜めに消失点に向かっているように表現されている。「レンジローバー」の表示は大きく、とても見やすい。



「これで、前のトラックを捕捉しましたから、この車間距離のまま、ずっと付いていくことができます」

「へぇ、そうなんですか!?」

 KSさんは助手席から見ているだけなので、体感はできないだろう。

「車間距離を開ければ、少し離れます」

 スイッチで車間距離をひとコマ増やした。

「で、縮めて、元の車間に戻しますよ」

「あ、ホントだ。トラックに近寄っていく、いく!」

 周囲に他のクルマが走っていないことを確認し、ゆるい左カーブに差し掛かったところで、わざとハンドルを切らないようにした。「レンジローバー」は、少しづつ車線内の右側に寄り始めていき、車線を越えようとする寸前でハンドルが左に切られた。僕が切ったのではない。「レンジローバー」が切ったのだ。本来であれば、ドライバーが車線からハミ出さないように切っていなければならないところ、

 居眠りや脇見運転、あるいは何らかの不可抗力で切れなかった場合に、クルマがそれを察知して切ってくれる。それがレーンキープ・アシストだ。だからといって、“クルマに全部やらせてしまえ”ということはできない。ドライバーはつねにハンドルを握り、運転を行っていなければならないからだ。

 ハンドルから手を離し続けていると、モニター画面と音で警告が発せられる。レーンキープアシストが「自動運転」ではなく、あくまでも「運転支援」である理由だ。同じことは、ACCにも当てはまる。



「あくまでも“支援”なんですね」

「その通りです。だから、メーターパネルの表示が重要になってくるんですよ」

 KSさんにメーターパネルを覗き込んでもらいながら、その理由を説明した。

「肝心なのは表示の大きさと観やすさなんです。なぜならば、アシストを効かせていても、“いま効いているか、どうか?”をドライバーはつねに把握していなければならないからなんです。将来のレベル3やその上のレベル4と呼ばれる自動運転にならないと、運転をクルマに任せてはならないのです。アシスト機能によっていくらクルマに運転を支援してもらったとしても、それが働いているかどうか?はつねにドライバーが把握していなければならないからです」

「このクルマはレベルいくつなのですか?」

「レベル2です。まだ、レベル3として買えるクルマはありません」

「そうなんですね」

 ボルボやメルセデス・ベンツ、BMW、シトロエン、プジョーなどのヨーロッパ勢やアメリカのテスラ、日本のレクサスなどはこのクルマと同じくらい大きく、わかりやすく表示しているが、まだまだパネルの隅の方に小さくしか表示できないクルマも少なくない。大急ぎでアップデイトしてくれることを期待したいが、その違いは大きい。

 ACCとLKASを初めて体験するKSさんのような人だけでなく、使い慣れた人でも間違いなく操作するにはその作動状況を正しく理解する必要があるわけだから、表示の見やすさ、わかりやすさは重要だ。サービスエリアで運転を交代した。ちょっと緊張しているのか、KSさんは慎重に本線に合流した。

「加速は申し分ないですね。力が足りなくて、苦しそうにエンジン回転が上がっていくのかと想像していましたが、ぜんぜん違ってパワフル。踏んだ通りに加速するレスポンスも良い」

 高い着座位置は、どんな感じだろう?

「良いですね。遠くも見えるし、不安定に感じません」 

 車両感覚をつかみ、各部の操作にも慣れたところで、いよいよACCとLKASを試してみる。助手席から、安全を確認しながら操作方法を再確認。ゴー!

「おー、付いていく!、付いていく! おもしれ~」

 車間距離を伸ばし、次に縮めてみる。

「ほ~。メーターパネル内の表示も動いて、ちゃんと設定した位置に来たことを表すんですね。優秀」

 LKASもすぐに確かめられた。

「クルマがハンドルを切ってくるのが手の平から伝わってきて、車線内に戻そうとしているのがわかりますね。最初は、“滑っているんじゃないか!?”って、アセりました。ハハハハハハッ」

 ACCとLKASを体験した感想は、どんなものだろうか?

「助手席から見ていただけでは想像できませんでした。運転してみないと、クルマが運転をアシストしてくれる、この感覚はわからないでしょう」

 自分のクルマを買い換えるとしたら、装備されたものを選びますか?

「絶対に(これらが)付いたクルマにします」

 ACCとLKASに代表される運転支援機能は、安全を確保し、ドライバーの負担と疲労を軽減する。だから、KSさんのように高速道路を長距離運転を頻繁に行う人にこそ、使ってもらいたい。

「たしかに。これだったら、長距離を運転する時の疲れが少なくなるでしょうね」

「レンジローバー」の操作方法と表示がわかりやすいので、KSさんはもう憶えてしまったようだ。最高速度や車間距離などを設定し直したり、LKASの効果を確認するためにハンドルを少しずつ切ったり、緩めたりしている。

「新鮮な感覚です。今まで、体験したことがありませんでしたから。ACCとLKASによって、ここまでクルマが運転を手助けしてくれるんですね。いや、驚きました」

“空間を充実”させる機能

 次のパーキングエリアに入って、小休止。売店でアイスコーヒーを買って、ベンチで「レンジローバー」の感想を訊いてみた。初SUV、初レンジローバー、初運転支援とKSさんとって初めて尽くしでしだったが、どうだったのか?

「とても面白かったです。SUVには、アメリカでアメリカ車のSUVを何種類か乗ったことがあるだけで、運転したことはありませんでした。それらは乗り心地もラフで、エンジンもうるさい割に加速もスムーズではなく、全体的に大味な印象しか残っていなかったのです」

 たしかに、ちょっと前までのアメリカのSUVだったらそうだったかもしれませんね。

「だから、金子さんが最初にレンジローバーを勧めてきたわけがよくわかりました。こんなにカッチリしていながら、タッチはどこまでもキメ細かくスムーズで、優しい乗り心地に驚きました。こんなだとは想像していませんでした」

 ふだん乗っている「S6アバント」と較べてみて、いかがでしたか?

「着座位置が高いのと、空間が広いですね。S6アバントも狭くはないのですが、レンジローバーは天井が高いのと助手席との間も広いので、全体的に広い空間に移った感じがします」

 シートも専用仕様だ。



「このクルマは“自分の空間を充実させる”ことができますね」

 “空間を充実”ですか?

「ええ。通勤や出張で、ひとりで運転する移動時間を充実させ、自分の部屋と変わらない時間を過ごせるのではないかと思ったのです」

 どういうことでしょうか?

「このクルマだったら、ACCやLKASに運転を支援してもらえば、運転中に運転以外のこともしやすくなりますよね。iPhoneをつなげてAppleのCarPlayを立ち上げれば、What’s upでショートメールのやり取りを音声で読み上げてくれて、それに対して音声で返事できるし、PCやタブレット端末で聞いていたSpotifyをシームレスにつなげて聴いたりできます。

 もちろん、通話もできます。S6アバントではiPhoneを接続して運転中に通話をしていたことがあったのですが、運転を疎かにしたくなかったので、どうしても必要な時にしか使っていませんでした。もちろん、ACCやLKASを使ったとしても運転を疎かにするつもりはありませんが、今日、初めて体験してみて、安全を確保して、運転の負担を何割か肩代わりしてくれるものだと思えました」

 その通りです。運転支援機能を活用してドライバーの負担を軽減させ、同時にApple CarPlayやAndroid Autoを使うことによって音声入力の使用範囲を広げて便益を拡大することができる。今回は使わなかったが、カーナビもApple CarPlayやAndroid Auto上のGoogleMapsを賢く使えば、目的地設定などでいちいち画面を一文字ずつタッチして打ち込まなくて済むようになる。

「朝の通勤は音楽を聴きながら元気に走りますが、帰りは疲れもあるし、一日のできごとを反芻しながら、ゆったりと走ることが多いです。このクルマだったら、快適でしょうね」

 KSさんの“空間を充実させる”とは、実にうまい表現だと思う。少し前までのクルマでは、ドライバーは車外と隔絶してしまうから、車内では運転するしかすることがなかった。ところが、運転支援機能を活用することによって負担を軽減し、スマートフォンやクルマ自体に備え付けられたSIMカードによってインターネットに接続することによって、運転以外の負担も軽減させ、その分、外部とのコミュニケーションやアプリの活用によるエンターテインメントや情報収集などをより活発に行えるようになった。車内は、“運転プラスアルファの空間”となったのである。

「ラグジュアリーなインテリア、機能的なシート、極上の乗り心地など、空間自体が非常に上質なので、きっと充実させることができるのでしょう」

 最高の評価ではないか!?「レンジローバー」に乗ってもらって良かった。では、短所はなかったのか?

「短所ではないのですが、悩むとしたら価格とのバランスでしょう」

 この「レンジローバーP400eオートバイオグラフィ」の本体価格は1831万円。てんこ盛りのオプションが457万円、合計2288万円にもなる。さすがに、予算オーバーらしい。しかし、他のパワートレインやグレードを選び、オプションを自分に必要なものだけに絞ったとしても、今日、体験した性能と機能、乗り味、世界観などは大きくは変わらない。それを選ぶという手はある。

「S6アバントでも時々感じますが、“宝の持ち腐れ感”をどう解釈するか?」

 前述したように「レンジローバー」のオフロード走破性能は数多あるSUVの中ではピカイチだ。

「そんな過酷なオフロードは走りませんから、そこまでの四駆システムは不要です」

 世の中には、FF(前輪駆動)ベースの四駆もありますからね。

「じゃあ、このレンジローバーに前輪駆動バージョンがあって、その分、数百万円安くなったとしても買わないでしょう。クルマだけでなくて、商品って、そのコンセプトとブランド、生い立ちが大事。ブランドの歴史やストーリーは大切。それで成り立っていて、そこに惹かれるわけですから。ユーザーが使おうが使わまいが本格的な4輪駆動システムはレンジローバーにとって欠かせないものでしょう」

 過剰とも思える性能やスペックが商品の存在理由と表裏一体化しているのは、なにもクルマに限った話ではない。KSさんは誰でもが知っている世界的なブランドに携わっているから、その辺りの事情は良くわかっている。

「もう少し運転させてもらってもいいですか?」

 もちろんです。再び、高速道路に乗り入れた。しばらく順調に進んでいったが、あいにくと合流を前にした渋滞が始まっていった。KSさんはもうすっかりACCとLKASの操作に慣れていてアクティベイトされているから、先行するクルマが速度を下げると、こちらもそれに合わせて下げていき、先行車が停止すれば、こちらも停まる。

「こういう時も、助かりますね。負担の減り方は、巡航運転よりも大きいんじゃないですか!? アクシデントも未然に防いでくれるでしょうし」

 渋滞時のACCほど重宝するものはない。先行車との間隔をジッと睨みながら右足首のアクセルワークを微細に調節するのは確実に消耗させられるからだ。夜や悪天候下では、なおさらだ。僕も、高速道路では必ずオンにすることにしている。

「暗くなり始めて、視界が狭まってきても、また運転支援は言葉の通りに運転を支援してくれますね」

 一般道に降りると、完全に夜となっていた。

「あっ、自動でハイビームに切り替わりますね」

 対向車を感知すると、すれ違う時だけロービームに切り替わる。いちいち自分でハイとローを切り替える必要がないから、これも運転支援のひとつに違いない。

「今日、レンジローバーで走ったルートはいつも自分のクルマで走っていますが、早く着いた気がします。気のせいでしょうけど、運転支援を活用すると、そのぶん早く着いたような気がします」

 それは面白い!

「あと、もうひとつ情緒的な感想を話すと、クルマから気持ちは離れなかったですね。空間が充実しているから、むしろ自分の部屋のように気持ちが近付いたと感じたのでしょう」

 今までだったら自分が負担していた分の運転をクルマに手伝ってもらったことによって、クルマとの一体感のようなものが弱まってしまうのではないかという予想だ。

「ええ。まったく違っていました。それは運転支援機能だけによるものではなくて、このクルマがとても優れた良いクルマだからだと思います。値段を考えれば、半ば当然のことですが、値段を知らずに乗ったとしても同じ感想を持ったでしょう」

 住宅地の細い道に戻ってきた。あらかじめセーブしておいた電気を使い、EVモードを選んで走ってみる。



「両側の家に反響するエンジン音がゼロだから、この静けさにも驚かされます」

 まだ試し忘れている機能がいくつかあるのではないかと心配してしまうほど、多機能なクルマだ。

「今日は面白かった。クルマがこんなに進化して運転も様変わりしていることを体験できました。クルマに対する考え方と価値観が変わった。動力性能の高い、スポーティなクルマが自分にとっての良いクルマの指標でしたが、そうではないことが良くわかった。空間を充実させて、移動時間をどう過ごすか? 過ごし方の幅が大きく広がった気がします」
 それは良かった。今日の同乗試乗がKSさんにとっての新しい経験となってくれたことを一緒に喜びたい。

「家に着いたら、ゴルフバッグをトランクに入れてみていいですか?」

 もちろんです!

■関連情報
https://www.landrover.co.jp/vehicles/range-rover/index.html

文/金子浩久(モータージャーナリスト)

1961年、東京生まれ。主な著書に、『10年10万キロストーリー 1~4』 『セナと日本人』『地球自動車旅行』『ニッポン・ミニ・ス トーリー』『レクサスのジレンマ』『力説自動車』(共著)。https://www.kaneko-hirohisa.com/

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  • 画像にある「オートテレイン レスポン」というのは言葉として合ってるのですか?
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