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【走行後のアフターアイドリングは不要?】現在のターボ車がエンジンをすぐに止めても問題ないワケ

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【走行後のアフターアイドリングは不要?】現在のターボ車がエンジンをすぐに止めても問題ないワケ

車種やシーンによっては必要なケースもある

 かつてターボエンジンは、急にエンジンを停止すると壊れると言われていた。原因は、高温になったターボユニットの軸受けが焼き付いてしまうからだった。ところが、最近のターボ車はアイドリングストップが搭載され、エンジンの停止を繰り返す。もはや「ターボタイマー」や「アフターアイドル」は、不要となったと言われている。そのようなターボの進化と今のターボ車の扱い方について説明しよう。

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 ターボは、エンジンから出た排ガスのエネルギーでタービンを回し、タービンと同軸になっているコンプレッサーを回して圧力を高め、エンジンが吸い込む空気を増やすことで、より大きなトルクや出力を引き出すためのデバイスだ。日本では“タービン”と呼ばれることも多いが、タービンは排ガスで回される羽車の部品名で、「ターボチャージャー」や「ターボ」というユニット名で呼ぶのがより正確だ。

 ターボ付きのエンジンは、市販車に搭載され始めた1980年代に一大ブームとなって高性能車の代名詞となり、クルマ以外でもターボと付く商品があった(今でいうとハイブリッドみたいなもの)。現在は実用車でのダウンサイジングされたターボエンジンが普及し、エンジンの小型化や低燃費を実現する手段でも広く使われている。

 ターボは、小型のものでは最高回転数が毎分20万回転以上に達し、タービンは最高で900℃前後の排ガスにさらされるという非常に過酷な条件で使用され、タービンのシャフトはエンジンオイルで潤滑や冷却されている。このようなことで、以前は走行後にアイドリングを行ってターボの温度を十分に下げてからエンジンを止めることが良い使い方とされていた。

 エンジンを止めるとエンジンのオイルポンプが停止しターボへのオイル循環も止まってしまうのだが、走行直後に止めるとターボに溜まった熱が行き場を失ううえ、精密に仕上げられたタービンシャフト部でオイルが炭化してシャフトが固着したり、摩耗するなどの故障を起こす恐れがあったためだ。

 ちなみにエンジンオイルの試験項目の一つである「ホットチューブ試験」では、250~300℃弱に熱した細いガラス管にオイルを通して、オイルの炭化や清浄性をチェックする。この成績が低いオイルだとターボの故障も起こりやすい。 そのようなことで、昭和のターボ車の運転席ドアの内側やサンバイザー、取り扱い説明書には、「走行後は1~3分程度アイドリングしてください」という内容のラベルが貼られているのも多かったのも事実。これがいわゆる「アフターアイドル(アイドリング)」という昭和のターボ車オーナーならではの儀式的な操作だったわけだ。

 走行後にアイドリングさせるという煩わしい操作を自動で行ってくれるのが「ターボタイマー」というもので、キーをOFFにしても、設定した時間だけアイドリングして自動的にエンジンを停止してくれた。

 そのような昔話を知っていると「今のターボ車はアフターアイドルしなくていいの?」と不安になることもあるが、結論から言うと現在のクルマはそれほど神経質にする必要はない。

 というのも、ターボ車でもアイドリングストップシステム付きが当たり前でドライバーの意思と関係なくエンジンが止まってしまう。アイドリングストップをキャンセルしないとアフターアイドル自体ができないし、自動車メーカーもそれで不具合が出ないように検証しているので、基本的には走行後にすぐにエンジンを止めても問題ない。ターボチャージャー本体も水冷式になっているし、オイルの品質も非常に良くなっているので、昔ほどデリケートなものではなくなっている。

 走行シーンでいうと、市街地走行や高速道路でも制限速度内ならばアフターアイドルは必要なし。というのも、高速走行ではスピードが高い分エンジンルームに外気が十分に入ってよく冷えるし、普通車が平坦路を巡航する際の出力は20~30PS程度なのでターボへの負担や発熱量も小さいのだ。合流地点やETCゲートからフル加速したとしても数秒だけであって、その後の巡航で冷えてしまう。

 パーキングエリアに立ち寄る際も、本線から駐車位置に止めるまでの走行でクールダウンできてしまうのだ。強いて言えば、フル積載フル乗車あるいはキャンピングカーやボート等を積んだトレーラーを牽引して、登坂路の途中にあるパーキングエリアに寄るというようなシーンならアフターアイドルするのがいいだろう。

 逆に負担が大きいのは、ワインディングの急勾配を登るような低中速で負荷が高い状態。高負荷で走る場合はフルブーストの頻度が多くなりターボは高温になるし、車速が低いのでエンジンルームも熱を持ちやすい。熱い走りを楽しんだ直後に峠の茶屋で一服みたいなときは、1分程度のアフターアイドルを実施したほうがいいだろう。

 また、サーキット走行となると、アクセル全開の頻度が高くエンジンの発熱量も段違いに大きいので、ピットインする前にクールダウンのラップを行い、ピットでもアフターアイドルを実施したい。

 ただ、市販車を使ったスーパー耐久レースでもピット作業ではエンジンストップするわけだから、アフターアイドルしないからといって、すぐに壊れることはないだろう(レース用のマシンはオイルが毎回新品にされるなど整備状態が最高に保たれ、壊れたら整備か交換するという割り切った扱いがなされる点で状況が違うが)。

 余談だが1980年代後半にグループCレースのターボエンジン開発を行っていたエンジニアによれば、大径ターボに摩擦の少ないボールベアリングターボを採用したこともあり、ピットインでのエンジン停止後に1分程タービンが回転していたというが、その際にもシャフトが焼き付かないようなオイルをオイルメーカーに開発してもらったという話もある。

 もっともサーキット走行では、エンジンを急に止めると、冷却水が循環しなくなり、高温になってオーバーヒート気味になったりエア噛みをしやすくなる。エンジン本体やエンジンルームのクーリングのためにも、ボンネットを開けて水温や油温が適温に下がるまでアフターアイドルするのがいいだろう。エンジンレイアウトでいうと、進行方向に対してターボがエンジンの後ろにある後方排気タイプ、ミッドシップやリヤエンジン車は走行風の当たりが良くないのでクールダウンに時間を掛けたほうがいい。

 なお、クルマの取扱説明書にもアフターアイドルに関する記載がある。例えば、トヨタ・クラウンでは、市街地、郊外などの一般走行および高速走行(高速道路の法定または制限速度)では不要、山岳ドライブウェイなどの急な登坂路走行およびサーキットなどの連続走行で約1分のアフターアイドルが指定されている。

 また、スズキ・アルト(ターボ)では、市街地や郊外などの一般走行では不要、高速走行直後や登坂走行直後はすぐにエンジン停止せず約1分を推奨している。ただし、アイドリングストップシステム搭載車でエンジンが自動停止する場合は、ターボが所定温度内にあると判定されているためアイドリング不要とも記載されている。

 このようなことから現代のターボ車でも、通常あまりしない高負荷走行後のみにアフターアイドルが必要となる。その他にターボを守るという点では、始動直後や停止前の空吹かしを避けることや、オイルやオイルフィルターを指定のタイミング内で確実に交換することも重要になるので注意したい。

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みんなのコメント

6件
  • 同車種でほぼ同じ使い方をしている軽自動車がありますが、一台はターボタイマーが付いている車で一台はありません。
    どちらも定期的にオイル交換をしていましたが、ターボタイマーが付いてない方は2度焼き付いてタービン交換しました。
    バイザー部分や取説にもアフターアイドルの旨の注意書きがありますので、車種によってメーカーに従うのが1番だと思います。
  • 最近はターボ用電動ウォーターポンプや電動ウォーターポンプも普及してたりするので、エンジンを切る=循環が止まると言うこともないですしね  
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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