この記事をまとめると
■デコトラはいまでも多くのファンをもつ
トラック野郎の鉄板チューン! 音にこだわる派の「マニ割り」って何?
■少年時代にデコトラに魅せられた人も多い
■デコトラの魅力を7つ紹介する
兎にも角にも迫力満点!
日本の文化として定着し、多くの人たちにその存在を知られるデコトラ。トラックを派手に飾り立てた改造車のことを指す言葉だが、多くの人を虜にするという不思議な魔力を秘めている。
本稿を書いている筆者も、少年時代にデコトラに魅せられたひとり。自転車をデコトラのように飾り立てるデコチャリを製作し、普通免許を取得すると同時にデコトラライフを満喫するようになった。よくある改造車のひとつに過ぎないデコトラだが、デコトラには大きな特徴が存在する。それゆえ半世紀にわたって発展し続けるなど、息の長い文化となっているのだ。
そんなデコトラの、どこが素晴らしいのか。実際に心を奪われてデコチャリやプラモデルを作成し、自身でデコトラを製作したのちに、専門誌「トラック魂」の2代目編集長になった筆者が、昭和時代におけるデコトラの素晴らしさについて解説してみたい。
まず第一に迫力感。普通乗用車をベースにするのではなく、トレーラーや大型車まで存在するデコトラは、兎にも角にも迫力満点。たとえ小型トラックであっても、乗用車にはない迫力感と存在感があるため、見る者の心を刺激するのだろう。
ふたつ目は、同じような車両が存在しないということ。一般的な改造車の世界では、メーカーから販売されている汎用のエアロパーツなどが存在する。しかし、デコトラの飾りはそのほとんどがオーダーメイドであるため、同じような仕上がりを見せる車両がいなかった。そして各車に「●●丸」などのニックネームがつけられていたため、特定しやすかったり、ひと目見ただけで瞬時に判断できたのである。
平成後期以降はマンネリ化が進んできたデコトラ界だが、昭和の時代ではそのような大きな特徴があった。昭和の時代が似たようなトラックが増えた時代のような状況であったならば、筆者もデコトラの世界にのめり込まなかったかもしれない。
3つ目は、トラックの車体に描かれた絵。デコトラ業界ではペイントと呼ばれているのだが、昭和の時代ではペイントを描くことがデコトラにおける大きな要素だった。装飾の有無はもちろんだが、ペイントを入れることで完成度が大きく高まったのである。当時はエアブラシではなく筆描きが主流であったため、荒々しく重厚な作品が人気を集めていた。
インテリアや音も魅力満点!
4つ目は、昼と夜で異なる美しさを見せてくれるという部分。電飾パーツを多数取り付けることがスタイルであるデコトラは、夜になるときらびやかな艶姿を披露してくれるのだ。そんなふたつの美が存在する改造車は、かつてはなかなか存在しないのではないだろうか。
5つ目は、日本のスタイルであるということ。英文字も取り入れたりはしているが、デコトラとは日本発祥の文化。それゆえに、和風の題材をモチーフとしたデコレーションが施されているのである。その部分も、ほかの改造車とは大きく異なる部分であるといえるだろう。
6つ目は、インテリア。デコトラといえば外装の派手さに視線が行きがちだが、じつは内装に凝っている車両も多い。現代では豪華なシャンデリアを取り付けることが一般的になっているのだが、昭和の時代では襖や神棚、畳を使用するなど、純和風に仕上げているデコトラが多数見受けられた。近年ではプライベートのデコトラが増えているのだが、箱型の荷室を部屋に改造するという車両も増えている。
7つ目は、マニア心を刺激するマフラー音。エキゾーストマニホールド(複数の排気流路をひとつにまとめる多岐管。ほかの改造車マニアたちにはタコ足やエキマニとも呼ばれている)を改造する、マニ割りという手法で仕上げられたマフラーは、いまでも人気が高い。マフラーの出口を右側面に設定するサイド出しと上部に向けて聳え立たせる煙突マフラーが、人気のスタイル。しかし当然のごとくマフラーの音量が大きくなってしまうため、近年では音量の切り替え装置を装備する車両も多くなっている。
昭和の時代では、改造車に対しても比較的寛大だったかつての日本。しかし、近年では派手さではなく、シンプルに飾るスタイルへとデコトラ界も変化している。いずれの姿も魅力的であるのだが、マンネリ化だけはいただけない。同じようなクルマばかりになってしまうと衰退してしまうのが関の山だけに、いつの世もこだわりを持ってトラックを飾るというスタイルで、日本独自の文化を守り抜いてほしいと願っている。
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