日本発のゲームから生まれた奇跡の実話を基にした映画「グランツーリスモ」。既に北米では大ヒットしている、この作品の見どころを映画評論家の永田よしのり氏に紹介してもらおう。
これは、ゲームの世界観を映画にしたものではない
Webモーターマガジンの読者の人には、プレイしたことがある人も多いのではないだろうか。日本発で世界的人気の、実際のサーキットで運転しているかのような醍醐味を味わうことができるカーレース ゲーム「グランツーリスモ」。
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「グランツーリスモ」と聞けば、このカーレース ゲームを思い起こすはずで、その世界観を実写映画にする、となればゲームの世界観を映画にしたのかと思う人も多いだろう。だが、ここで描かれるのはゲーム世界から実車レースの世界に挑んだ、日産、プレイステーションを生み出したSONY、そして「グランツーリスモ」ゲームのトッププレイヤーが挑戦した、ゲーム世界から本物のレースで活躍するドライバー発掘育成プログラム「GTアカデミー(2016年まで実施)」で実際に起きた物語だ。
つまり、本作で描かれるのはゲームの世界観を映画化したものではない。ゲームのトッププレイヤーだった主人公のヤン・マーデンボローを、実車のプロレース世界に送り込むというプロジェクト「GTアカデミー」での実話をベースに描かれたカーアクション エンターテインメントだ。既に北米地区では2023年8月25日に公開されるや週末だけで興行収入は1730万ドルを記録し、大ヒット中の「バービー」を押さえて週末興行収入第1位を記録したほどのヒット作となっている。
「現実を見つめろ」と父親から常々いわれ続けてきたヤン・マーデンボロー。彼はカーレース ゲーム「グランツーリスモ」の大ファンで幼い頃からクルマ好き。いつか本物のレーシングドライバーになる夢を持っていた。そんな彼は「グランツーリスモ」ゲームの地区予選大会を1位通過したことで、本物のレーシングドライバーを育成するプログラム「GTアカデミー」に参加することに。選ばれたトッププレイヤーたちは10人。その中から幾多の試練を乗り越え、ついにチーム日産の一員となったヤン。最終的な目標は、あの有名なル・マン24時間耐久レースに参戦すること。ヤンとチーム日産の戦いが始まった・・・。
実際のサーキットで65台ものレーシングカーを使用して撮影
レースシーンの撮影は、ドバイ・オートドローム(UAE)、ニュルブルクリンク(ドイツ)、レッドブルリンク(オーストリア)、そしてハンガロリンク(ハンガリー)など実際のサーキットを使用して行われた。そこでのドローンを使用した撮影の臨場感は圧巻の一言。音響効果とともに体感するには、やはり大スクリーンの映画館がふさわしい。
実際の撮影に使用された車両は65台。ざっと挙げると、ニッサン GT-Rニスモ GT3、フェラーリ 488GT3 エボ、ポルシェ 911 GT3R、レクサス RCF GT3、シボレー カマロGT3、マクラーレン 720S GT3、BMW M6 GT3、ランボルギーニ ウラカンGT3、・・・などなど。さらに、ル・マンのレースシーンでは、プロトタイプのリジェ JSシリーズのPX、P320、P2、そしてノルマ M30なども登場。
主人公となったヤン・マーデンボロー本人も共同プロデューサーを務めただけでなく、実際のレースシーンで自身の役のカースタントも務めた。そこにあるのはゲーム世界のバーチャルではなく、リアル。まさに仮想空間が現実になった瞬間だ。
ここ数年のコロナ禍で、現実世界では人との接触を意識的に減らされてきた。それゆえ、バーチャルなゲーム世界に癒しを求めた人も多かったのではないだろうか。そんなコロナ禍が終息してきて現実世界での人的交流も戻ってきた今、こうした映画が公開されることに何かしらのタイミングとメッセージを感じてしまう。
実際にレース場で聞こえるエキゾーストノート、マシンが駆け抜けて行く時のタイヤの焦げる匂い、観客の歓声などを知っている人間からすると「現場」の空気感を忘れることはない。本作品は、ぜひ「映画の現場」となる映画館で楽しんで欲しい。(文:映画評論家 永田よしのり)
「グランツーリスモ」
●2023年9月15日公開/134分
●監督:ニール・ブロムカンプ
●出演:アーチー・マデクウィ、オーランド・ブルーム、デヴィッド・ハーバー、ほか
●配給:ソニー・ピクチャーズ
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じゃあ「グランツーリスモ」名乗らなくて良くないか?ASCでもFHでも…