もくじ
ー モータースポーツの血統を持つ両ブランド
ー 心臓に加え内外装がリファインされたXKR
ー 911もビッグマイナーチェンジ直後
ー 余裕たっぷりなXKR
ー スイッチひとつで変わる乗り味
ー PDKはシフトショックも
ー 上品なGTではない
ー ともに優れたエンジン
ー より快適で洗練されたXKR
モータースポーツの血統を持つ両ブランド
ジャガーとポルシェはどちらも世界的に有名なスポーツカーメーカーである。複数のル・マン優勝歴を持ち、美しい歴史的なクーペの名車を世に送り出したという点でも両者は共通している。だが、Eタイプと911の誕生以後、歳月が流れるにつれて、ジャガーのほうはスポーツの血統が薄まっていった。
Eタイプの後継にあたるモデルはどれも高性能GTで、週末に山道を攻めたり、ヒルクライムに挑むという目的よりも、長距離を快適に移動する目的に適したクルマだった。
一方、911の名を受け継ぐモデルは、濃密なドライビングプレジャーを提供するという初代の目的をかたくなに守り続けてきた。現行のタイプ997は、1963年生まれの初代911以上にサーキット走行を得意とするスポーツカーである。
だが、現代の新生ジャガーは、今再び自らのDNAに刻み込まれたハイパフォーマンス指向の遺伝子にフォーカスを当てたクルマ作りに取り組み始めている。そしてその成果をわれわれに華々しく示してくれたのが、なにを隠そう先頃発表されたXFRであった。XFRは世界最高のスポーツサルーンと呼べるクルマで、高いスポーツ性を実現しながら、洗練度をほとんど犠牲にしていない希有なクルマだ。
心臓に加え内外装がリファインされたXKR
そうしたジャガーのパフォーマンスを重視した開発姿勢は、今回フェイスリフトを受けたXKシリーズにも色濃く表れている。自然吸気およびスーパーチャージャー付きの新開発の直噴5.0ℓV8を得た新しいXK/XKRは、従来モデルに比べて格段に速くなった。そのほかのハードウェアもアップグレードされ、ダイナミクス能力とドライビングプレジャーが高まっている。
高性能バージョンのXKRに搭載されるスーパーチャージドV8は、510psもの出力を発揮する。定評ある6段ギアボックスはその素晴らしいレスポンスにさらに磨きがかかった。シャシーは新たな「アクティブ・ディファレンシャル」と「アダプティブ・ダンピング」の恩恵を受けている。
後者についてだが、従来モデルでは単に「ソフト」と「ハード」を切り替えるだけだったが、新型XKシリーズではダンピングが無段階で最適化されるものになった。
走りにかかわるハードウェアの強化に加え、新型XKシリーズは装備も充実し、ギアセレクターはXFと同じダイヤル式を採用するなど、室内デザインも若干リファインされた。また、外観にもマイナーチェンジが施されている。よりスポーティに、より逞しくなったこの新型XKRなら、911と張り合うだけのポテンシャルを備えているかもしれない。そう考えて企画したのが今回の比較テストである。
911もビッグマイナーチェンジ直後
一方、伝説的存在の911だが、こちらも昨年ビッグマイナーチェンジを受けている。完全新設計されt直噴エンジンの採用がその目玉だ。さらに、デュアルクラッチ式トランスミッション(PDK)がオプションで用意され、ブレーキも強化されている。今回のテストに参加する911はそのPDKを装備しているが、対するXKRはATしかない。
新しい911はインフォテインメントシステムもアップグレードされた。外観上の変更点はきわめて少ないが、XKシリーズと同様、一部のランプ類にLEDを採用(テールランプのLEDの配列はXKRのそれと奇妙なほど似ている)している。385psの3.8ℓエンジンを搭載するカレラS(PDK仕様)は1451万円で、1550万円のXKRに比べて100万円ほど安い。
だが、XKRは段違いにパワフルで、それは実際の走りでも感じられる。走り出してすぐに気づくのが、このクルマではスロットルの踏み加減を軽めに心がけなければならないということだ。普通に踏んだつもりでも予期せぬほどクルマが前へと押しやられ、前方にいるクルマにバンパーをぶつけるようなヘマをやらかしてしまいかねない。
スロットルの加減でクルマの前進を微妙に操るのがむずかしいというわけではないが、市街地のノロノロ運転で2~3mほど動いて止まるというようなときに必要なスロットルの踏み込み量が普段とは違うことを、頭の中で切り替えなければならない。
もちろんこれは、ひとたび開けた道に出れば、それだけこのXKRが速いことを示すものだ。しかし、それを確かめるのは、ロンドンを抜けて西に向かい、ほど良いカントリーロードに到達するまでお預けである。
余裕たっぷりなXKR
いくらボディシェルがアルミ製でも、911に比べてボディサイズが大きく、エンジンも大きいXKRは車重も重い。だが、スーパーチャージドV8が放つパワーは、その重さをものともせず、911を圧倒するには十分だ。車重1tあたりの出力で比べると、282psというXKRの数値は911の257psを超えている。
しかしながら、PDK(ギアが1段多いぶんMTモデルよりも有利で速い)を装備する911は、0-100km/hのスプリント加速タイムで、ジャガーXKRよりもコンマ1秒速い、4.5秒を記録した。
だが、トルクの点で相当なアドバンテージを持つXKRは(911の42.8kgmに対し63.7kgmで、さらにトルクバンドも広い)、きわめて楽に加速していく感覚があり、たいていのシチュエーションにおいてXKRのほうが明らかにパワフルに感じられる。
余裕たっぷりに山道をハイペースで駆け抜けるXKRはとても魅力的だ。太いタイヤとアップグレードされたシャシーのおかげで、ダムの割れ目から流れ出る水のようにコーナーを勢いよく抜けていく。
DSCとアクティブディファレンシャルがオーバーステアを防いでくれるが、DSCをサーキット走行モードに切り替えれば多少のドリフトが許容され、さらに刺激的なドライビングが楽しめる。
スイッチひとつで変わる乗り味
あるいは、ダイナミックモードのボタンを押せばダンパーが引き締まり(ただしそう極端に硬くなるわけではない)、スロットルレスポンスが鋭くなり、アクティブディファレンシャルの動作がよりダイナミックなドライビングスタイルに適したものになる。
このXKRのボディサイズとグリップ能力、潜在的なダイナミクス性能の高さを考えれば、限界付近に近づくには、もっと広い道路とドライバーのさらなる度胸が必要となる。補足しておくと、わたしが後日サーキットで試乗したときの体験では、素晴らしい振る舞いを示し、限界まで攻めるのが楽しいクルマであった。
スイッチひとつでキャラクターが変わるのはポルシェ911も同じだ。だが、それ以前に、エンジンに火を入れた瞬間から、XKRよりも活気にあふれるクルマのように感じられる。911はXKRに比べて実際にそうであるが小柄に感じられ、結果的により扱いやすい印象を受けた。
PDKがノーマルモードの状態では、911の走りはほとんどおとなしいと形容していいほどだ。なぜなら、シフトアップのタイミングが比較的早めで、トルクピークに達しないうちに次のギアにつながれてしまうからだ。
もっともこれは、センターコンソールのスポーツボタンを押すだけで豹変する。スロットルレスポンスが鋭くなり、ギアも1段か2段低いものが使われ、フラットシックスの本来のポテンシャルを引き出せるようになるのだ。
PDKはシフトショックも
PDKはステアリングのシフトスイッチで変速可能だが、その操作ロジックが一般的なパドルシフトとは異なるために慣れが必要であることを付け加えておこう。今回のテスト車はオプションの「スポーツクロノ・パック」を装備しており、究極のシフトチェンジを可能としたモデルであった。
ただしこの場合、ドライブラインから軽くドシンというショックが伝わってくるほどダイレクトなつながり方となることだけは、了承しておいたほうがいいだろう。それ以外のセッティングでは、このトランスミッションはオリンピックのリレー選手のようにエレガントな正確さで次のギアに切り替えを行う。唯一、Dレンジ、あるいはリバースに入れた瞬間の動作はそうとはいえないのだが。
かたやジャガーのドライブラインからは、ドシンという衝撃の類を感じる場面はほとんどない。それでいながら、ロータリー式のギアセレクターでスポーツモードを選ぶと、トランスミッションは狂騒的なまでの振る舞いを見せてくれる。
その状態では、トルクがもっとも高まるスイートポイントを追い求めるように、常に低いギアが保たれるようになる。サーキット走行会で哀れなカモを追いかけているか、あるいはほかのクルマのいない山道で自分のペースでドライビングを満喫できるとき以外は、この状態が続くとドライバーは疲れ果てて少々辟易してくるかもしれない。そんなときは、素晴らしいパドルシフトでトランスミッションとの対話を楽しめばいい。
上品なGTではない
もちろん、ドライバーが疲れてしまうのはこのXKRの意図するところではないが、乗り心地に関しては必ずしも快適とはいえない。スタンダードモードでも、乗り心地はややゴツゴツした感じがして、ジャガーのクーペが35年来、提供してきた上品なGTの世界とは異質の乗り味だ。もっとしなやかな乗り心地のジャガーに慣れてきた人びとは、このXKRの振る舞いに驚くだろう。
だが、これによる犠牲は最小限にとどめられており、しばらくすれば、このXKRが1日に1000km走破しても少しも苦にならないクルマであると気づくはずである。ただしわたしの個人的なささやかな不満としては、フロントシートのクッションのせいで長距離を走ると足が痛くなったことを挙げておきたい。また、130km/h以上での風切り音が気になった。
それよりももっとうるさく感じられるのが911だ。こちらは1000kmの旅に出かけるのをためらうほどのレベルである。まずもってロードノイズは911の魅力をスポイルしている。粗いアスファルト路面でのタイヤノイズが、場合によっては落ち着かない乗り心地以上に気に障ってしまうのだ。
ただし、今回のテスト車はセラミックブレーキを装着していた関係でバネ下重量が軽く、そのおかげでわれわれが昨年ロードテストした911PDKに比べれば、乗り心地は多少ましであった。
ともに優れたエンジン
911の乗り心地はジャガーXKRよりも良好で、さらにステアリングフィールも明らかに豊富だ。スポーツモードを選べば刺激的なスポーツカーに変わり、XKRよりも短いホイールベースとスレンダーなボディのおかげで、それだけ機敏な身動きを示してくれる。
そして歴代911の魅力ともいえるよく回るエンジンは、相変わらず快感以外の何物でもない。コーナーからコーナーへと駆け抜けるのが本当に楽しい。ステアリングからスロットル、ブレーキにいたるまで、すべてのレスポンスがシャープでダイレクトであり、操りやすいのも好感が持てる。
XKRも負けてはいない。6気筒のEタイプ以降のどんなジャガー製クーペよりも活気にあふれた仕上がりなのだ。フロントのグリップも信じられないほど強力で、アンダーステアは微塵も感じられない。
ステアリングは911ほどフィールは豊かでないが、正確で、手応えもちょうどいい。仮にフロントが流れ始めるようなことになったとしても、その状況変化をドライバーに伝えてくれるはずだ。
より快適で洗練されたXKR
にもかかわらず、タイトで曲がりくねったカントリーロードでは、XKRの走りは911ほど活き活きしているようには感じられなかった。ブレーキペダルのフィールがセラミックブレーキを装備したポルシェ911に比べて頼りなく、ハイスピードでの視認性に劣る計器類、そして車体の大きさがもたらす扱いにくいという誤った印象がつきまとっていたからだ。
ちなみに、車体が大きさからすると、XKシリーズのパッケージングはひどいものだ。これだけのサイズがありながら、後部の「座席」と呼ばれている場所に座ってくれるのは、途方に暮れたヒッチハイカーくらいなものだろう。
しかしながら、このテストの勝者は僅差ながらもXKRである。そもそも、この2台は異なるキャラクターを持つクルマだ。XKRはこれまでのどんなジャガー製クーペよりも速くて、スポーティなモデルである。
一方、911はもっと純粋で鍛えられたスポーツカーだ。つまり、スポーツカーらしさという点に関していえば、明らかに911にアドバンテージがある。だが、それを別にすれば、ジャガーXKRのほうがより完全なクルマであったのだ。より快適で洗練され、実用性が高いのはXKRであった。そして、さらに魅力的なポテンシャルと、これから開拓するのが楽しみな奥深いダイナミクス能力を備えていた。間違いなく今回の勝者はXKRである。
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