「新しいアルピーヌ A110がとにかくイイ!」という話は、2018年の夏あたりからクルマ好き・スポーツカー好きのあいだで出まわっていたように思う。とはいえ話題の渦中にあったのは50台の初回限定モデル「プルミエール・エディション」だった。800万円を越す車両価格にもかかわらず、購入希望者が殺到した結果、多くの人が抽選に漏れ、購入出来なかったのである。
しかし、発足したばかりのアルピーヌ・ジャポンがなかなかいい仕事をしてくれた。フランスのノルマンディ地方にあるディエップ工場から、日本市場への割り当て分をきっちり確保したのだ。それが、ディーラーのカタログ・モデルとして恒常的にラインナップされ、かつ右ハンドル仕様も選べる「ピュア」と「リネージ」である。価格は「ピュア」が790~811万円、「リネージ」が829~841万円で、いずれもハンドル位置は左右選べる。
1位はアルピーヌ A110!──2018年の「我が5台」 Vol.13 河村 康彦 編
アルピーヌとも密接にかかわるルノー・スポールにとって、日本はここ10数年来、世界で5本の指に入る重要市場という。こうした実績もあって、日本市場にいち早くカタログ・モデルが導入されたのだろう。ともあれ日本のマーケットで、スポーツカーの選択肢が増えたのは大歓迎すべきだ。
富士スピードウェイを拠点におこなわれた試乗会は、撮影サンプル用にリネージ、そして公道の試乗用に右ハンドルのピュアが供された。右ハンドル仕様のA110とは、初対面だった。
MTのクルマなら利き腕の右でシフトする左ハンドルに、一定のメリットはあるかもしれない。しかし、右ハンドルがあるに越したことはない。A110ほどコンパクトな車体の場合、とくに日本の路上では右折時に対向車が見やすく視界が効くし、さらに7速DCTはステアリングに備わるパドルでシフト操作する以上、積極的に左ハンドルを選ぶ理由は薄い。いざシートに座ってみて、ステアリングポストと2ペダルのレイアウトに妙なオフセットがなかったので、ますます右ハンドルの優位を感じた。
ピュアのシートはサベルト社製軽量モノコックバケットタイプだ。リクライニングもシート高調整も付かないが、身長175cmの筆者はステアリング側のテレスコピック調整を併用し、すぐに最適なドライビングポジションに合わせられた。ただし、背の高い人は座面高が調整できるリネージのレザーシートがいいかもしれない。しかもヒーター機能が備わるうえ、落ち着いたブラウンカラーが魅力的だ。
公道試乗は、できるだけ通行量の少ないと思われる峠に向かった。結果、これが大当たりだった。頂上まで対向車と1台もすれ違わないほど空いていたため、存分にA110の走りを味わえた。とにかく軽快かつ痛快であったのだ!
常識的なスピードで走行したため、横滑り防止装置の介入もほぼゼロだった。にもかかわらず、旋回速度がナチュラルに速いのか、マルチファンクションスクリーン内のテレメトリー上で、横方向の1G超えが頻繁に表示されたのは驚きだった。
しかも、荒れた路面も少なくないなか、しなやかな乗り味が印象的だった。フロント、リアともにダブルウィッシュボーン・サスペンションを採用する利点を強く感じた。さすがWRCやモンテカルロなどのラリーで鳴らしたメーカーらしい、ホイール・コントロールが巧みだ。
全長4205×全幅1800×全高1250mmのコンパクトなサイズに1110kgのマスを収めた「軽さ」と、前後44:56の重量配分も、味わい深いドライビング感覚を創り出すのには欠かせない。しかし、もっとも重要なのは、重心を着座位置、つまりドライバーのお尻に来るようにしたこと。物理的にも「人間(乗員)中心主義の骨格」が、すべての下支えになっている点だ。だからこそ、加速または減速時の前後の動き、左右のロールなど、あらゆる方向への荷重変化がとにかく感じやすく、4輪の接地状態が掴みやすい。それゆえ、ドライバーはA110を積極的に操れるのだ。
強大なパワーを硬めた足まわりと幅広タイヤといった“力業”で安定接地させ、ロールレスかつバカっ速いオン・ザ・レールを実現したようなスポーツカーに「乗せられる」より、A110であれば、はるかにドライビングの感性が磨かれそうで、運転が上手くなりそうだ。
しかもA110は、峠以外のフツーの一般道でも十分楽しいスポーツカーだった。四つ角ひとつ曲がるにも、自分の背骨を軸に“クルり”と向きを変えるような、そんな自在感がある。乗り心地も、スポーツカーのなかでは望外に柔らかく快適。もう購入しない理由が、約800万円の価格以外みあたらない。しかも、経年劣化の少ないアルミニウムを、なんと96%も使ったボディだから、長いあいだ楽しめそうだ。
A110を自らドライブしたあと、開発ドライバーの隣に乗って同乗試乗を体験した。ドライビング技量の違いに驚くのは当然であるが、A110の魅力をここまで引き出すか!? と、その乗りこなし術に驚く。
今回、同乗試乗を担当したテストドライバーのダヴィッド・プラシュ氏は、先代「メガーヌR.S.」でニュル最速を叩き出したテストドライバー、ロラン・ウルゴン氏の同僚で、同じくルノー・スポールやアルピーヌの車両評価を担当している。
「さぁ行こうか」と、コースインするや否や、まるでラリーカーのように軽々とふりまわして攻めたてた。ドリフトでスッと向きを変えると即加速。出口のRが徐々に狭まるようなコーナーでも、加速&スライドによってこなしていく。A110を自由自在に操り、アグレッシブにコントロールする。
「いいタイムを出すことが目的のハイグリップタイヤやスリックタイヤでは、こう遊べないからね。A110はタイヤを含め、すべてにおいて楽しいクルマにしがっていると思うよ」と、プラシュ氏は話す。
公道やサーキットなどあらゆる道でA110を操り、絶賛される理由がよくわかった。とくに、道を選ばない走りの楽しさは最大の美点だった。約800万円の価格は高価かもしれないが、その価値を理解出来る人にとってはバーゲンプライスでしかない、と、思うのであった。
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