グループPSAジャパンは、2020年7月29日、フレンチラグジュアリーブランド「DS」のコンパクトSUV「DS 3クロスバック」に、EV「E-TENCE(Eテンス)」を設定することを発表した。
全車右ハンドル仕様となり、価格は、499万円~534万円となる。
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ラグジュアリーなSUVでありピュアEVということで、2020年7月15日に概要を発表した日産「アリア」のライバルとなりうる、注目車を紹介したい。
文/大音安弘
写真/DS AUTOMOBILES
【画像ギャラリー】日本に上陸したラグジュアリーEV! 「DS 3 クロスバック Eテンス」の詳細をチェック!!
■ラグジュアリーブランド「DS」が生み出した見た目も未来的なEV
DSは、シトロエンから派生したラグジュアリーブランドで、往年のシトロエン名車「DS」の名と受け継ぎ、アヴァンギャルドな世界観を展開している。現在は、新生代モデルのクロスオーバーSUVのみが展開されており、コンパクトSUV「DS 3クロスバック」とミッドサイズSUV「DS 7 クロスバック」の2車種を展開中。もちろん、将来的には、セダンなども新型車が投入されることも明かされている。
そのブランドエントリーとなる「DS 3クロスバック」は、ガソリン仕様のみだが、これに新たにEV仕様の「E-TENCE」が加わった。
フロントセクションは、サテンクロームのDSウィング、DS マトリックスLEDのきらめきがクールかつ華やかな表情を生み出すヘッドライト、それに縦に連なるデイタイムランニングライトが特徴的な「DS 3 クロスバック Eテンス」
元々、かなり攻めたスタイリングを持つモデルだけに、見た目の差別化は限定的。専用ボンネットマスコット、リヤテールの専用エンブレム、サテンクロームのDSエンブレム付きのアントラシートグレーの専用フロントグリルなど、敢えて控えめな演出としている。
そのスタンスは、インテリアも同様だが、上級グレード「グランドシック」では、オフホワイトで統一された明るく温かみのある仕様に。シートにはナッパレザーを使用。ダッシュボードやドアトリムには、テップレザー(人口皮革)を使うことで、贅沢な雰囲気に仕立てている。また操作系統は、ガソリン車と基本的には同様なので、運転の操作感覚にも戸惑うことはない。
ダッシュボード中央のひし形モチーフからラップラウンドして、ドアトリムまで大胆にダイヤモンドステッチを入れたインテリア
ボディサイズは、全長4120×全幅1790×全高1550mmで、ホイールベースが2560mmとなる。これはガソリン車と共通で、日本の立体駐車場にも対応可能なサイズだ。車両重量は重くなるものの、1580kg(※グランドシック)と普通乗用車程度に収められている。
■新生代プラットフォームを採用 EVに特化したメカニズム
プラットフォームは、グループPSAで共有する新生代プラットフォーム「CMP」をベースに開発させたEV専用「eCMP」を採用。CMP開発段階から、EV化を見据えて開発されたことで、EVに最適な基本性能を備える。この新プラットフォームは、プジョーのEV「e-208」と共通ものだが、本国での開発と市販化は、こちらが先。グループ全体でも、DS 3クロスバックが初採用だという。
EVのパワートレインは、最高出力100kW(136ps)、最大トルク260Nm(26.5kgm)の高出力モーターを搭載し、前輪を駆動する。駆動バッテリーには、50kWhのリチウムイオン電池を搭載。航続距離は、320km(WLTCモード)。これは欧州でのコンパクトカーの1日の平均走行距離40kmを毎日走行しても、週1回の充電でカバーできる容量としている。
次世代コンパクトプラットフォームCMPをベースとした「eCMP」を採用した「DS 3 クロスバック Eテンス」。バッテリーユニットは前席座面下、後席座面下、センターコンソールなどに重量配分を考えて巧みに格納されている
また走行モードを切り替えることで、モーター出力を変化。バランス重視のノーマルモードでは、80kW/220Nm(22.4kgm)を発揮し、エネルギー消費を抑えるエコモードでは、60kW/180Nm(18.4kgm)に抑制し、加速もゆるやかとすることで航続距離の拡大につなげる。もちろんスポーツモードを選択すれば、モーター出力を最大化できる。
回生ブレーキにも工夫が施され、2モードを用意。シフトレバーをDモードにすると、エネルギー回生を弱め、ガソリン車に近い操作フィールを実現。もうひとつのBモードでは、アクセルオフで積極的なエネルギー回生を行うことで、ワンペダル操作に近いEV特有の操作フィールを味わうこともできる。
フォーミュラEからインスパイアされたDモードとBモードの2つのエネルギー回生システムが実装。Dモードでは、内燃機関のエンジンブレーキの挙動に近い自然な減速感を実現。Bモードではいわゆるワンペダルドライブに近い運転が可能だ
充電については、3kW/15Aの200V普通充電ケーブルを標準搭載し、後部に設けられた専用ソケットに接続して行う。普通充電時では、約18時間で100%充電を完了するが、日常的な走行なら、50km走行可能な電力なら、4時間弱でOKとなる。また出力の高めた6kWのウォールボックス型普通充電器ならば、100%充電で約9時間。50km程度の電力なら、2時間弱で済む。
もちろん、日本で一般的な急速充電規格CHAdeMOにも対応。50kW出力タイプなら、約50分で80%まで回復することができる。また専用アプリを活用したリモートチャージングや遠隔でのエアコン操作なども快適なEVライフをサポートもある。
■同門EVプジョー「e-208」よりも高価だが……
新型EV「DS 3 クロスバック Eテンス」の価格は、エントリーモデル「ソーシック」が499万円で、上級グレード「グランドシック」が534万円となる。
ただソーシックは、ADAS機能が省かれるので、事実上は、ACCやトラフィックジャムアシスト、レーンキープアシスト、アクティブブラインドスポットモニターなどの先進の安全運転支援機能が充実し、DSらしい特別感のあるヘッドライト「DSマトリクスLEDビジョン」やヘッドアップディスプレイ、18インチアルミホイールなどの充実装備を誇る「グランシック」一択となるだろう。
やはりラグジュアリーブランドということもあり、価格は少しお高め。そうなると、同等のEVスペックを備えるプジョー「e-208」の存在が気になる人もいるはずだ。上級グレード「GTライン」なら、ADASなどの現代の定番装備をしっかりと押さえながら、価格は423万円とより身近だ。
2020年7月2日にプジョーが発表したピュアEV「e-208」。よりワイドに、より低く生まれ変わった
しかし、グループPSAでも、DSはラグジュアリーブランドという位置づけだけに、しっかりとキャラクターや内容を差別化している部分もある。快適性や高級感、そして先進性ではDSにアドバンテージがある。
もっともキャラクターもしっかり異なり、ラグジュアリーコンパクトSUVの「DS 3クロスバック」に対して、プジョー208は、カジュアルスポーツ路線のハッチバックである。結果といて、得られる価値はことなり、両者が直接的にバッティングすることはないだろう。
コンセント型普通充電(3kW/200V)、ウオールボックス型普通充電(6kW/200V)の加え、CHAdeMO(50kW)の急速充電に対応。コンセント型は満充電まで18時間、急速充電の場合は約50分で80%充電が可能になる
国内外の各社は、電動化に積極的だが、コンパクトなラグジュアリーEVというのは、珍しい。「DS 3クロスバックEテンス」は、都市部のユーザーに加え、地方のセレブな奥様方には、サイズ感や内容も魅力的だと思われる。今後の活躍がEVの未来がより広げることになるかもしれない。
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