土曜から2年連続で断続的な雨が降り続き、決勝も月曜順延の末に2度のオーバータイム決着に持ち込まれた2024年NASCARカップシリーズ第24戦『ファイヤーキーパーズ・カジノ400』は、最後の最後でウイリアム・バイロン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)と同門のタイ・ギブス(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)を引き離したタイラー・レディック(23XIレーシング/トヨタ・カムリXSE)が今季2勝目、キャリア通算7勝目を飾る結果に。フォードのお膝元でもある2マイルトラックで、マスタングの9連勝を阻止している。
前戦リッチモンドの勝者オースティン・ディロン(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)に対し、ライバルを接触により撃退した“物議の勝利”により、ポストシーズンのプレーオフ進出権“のみ”剥奪というペナルティ裁定を決めたカップシリーズは、レギュラーシーズン残り3戦という終盤大詰めでミシガン・インターナショナル・スピードウェイに到着した。
疑惑の勝利から3日。優勝は留保もオースティン・ディロンのプレーオフ出場資格が剥奪へ/NASCAR
しかし走り出しのプラクティスが降雨によりわずか数分で終了すると、午後の予選は完全キャンセルの判断が下されることに。このためルールブックに従いポールポジションにデニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)とレディックの最前列以下、2列目にクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)とカイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)の並ぶグリッドとなった。
迎えた日曜午後もグリーンフラッグ目前にパラパラと雨粒が落ち始めると、フィールドは予定距離の4分の1を走った時点、200周中52周目にレッドフラッグが掲示される。このままストームが過ぎ去るのを待ったNASCAR運営側だったが、予報の悪さと日照時間の減少、そして夜間照明のないミシガンの設備的条件から、最終的に月曜への順延が選択された。
この月曜リスタートで命拾いをしたのがポールシッターのハムリンで、王者ライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)が勝利を飾った日曜の短いステージ1で単独スピンを喫し、序盤戦でインフィールドのグラスエリアを滑走しながらダメージなく復帰していた11号車カムリXSEは、明けた月曜再開後の116周目に発生したマルチタングルを避けることに成功する。
この時点で選手権首位だったラーソンを起因とするアクシデントでは、昨季のミシガン覇者クリス・ブッシャー(RFKレーシング/フォード・マスタング)を皮切りに、チェイス・ブリスコ(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)やジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)ら7台が巻き込まれる事態に。ここでラーソン、ベル、ロガーノ、そしてトッド・ギリランド(フロントロウ・モータースポーツ/フォード・マスタング)らが戦列を去る。
「本当に速いクルマに乗っていたのに、チームと他のドライバーたちのレースを台無しにしてしまったのは残念だ」と、ダレル“バッバ”ウォレスJr.(23XIレーシング/トヨタ・カムリXSE)への仕掛けを悔やんだラーソン。
「可能な限りステージポイントを獲得するために、できることをしようとしただけなのに、ここで失ってしまうなんて……」
■急逝した友に捧げる勝利
ここから2日間合計26回のリードチェンジというアグレッシブな展開となった勝負は、残り5周でレギュラーシーズンのチャンピオンシップ争い、そして段階的勝ち抜き方式を採用するプレーオフに向け、16名のカットライン当落線上を行き来するドライバーたちの運命を翻弄する展開に。
チェッカー目前のところで、ここまで未勝利ドライバー最上位を維持しているマーティン・トゥルーエクスJr.(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)の19号車に2戦連続の異変が発生。今季トヨタ陣営で頻発するバルブスプリングを由来とするエンジン不調か、ここでレディックを先頭に最初のオーバータイムへ突入する。
その45号車の背後には、同じく54号車カムリXSEのギブスが着けると、ボトムではバイロンの24号車カマロZL1のリヤに、序盤のクラッシュから2タイヤ戦略で這い上がってきたブッシャーの8号車マスタング“ダークホース”が続いていく。
ここでプレーオフ順位で12ポイントのリードを保っていたロス・チャスティン(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)が集団内ハイサイドからスピンオフを喫し、ここでウォレスにわずか1ポイント差の16位へと後退。レースは2度目のオーバータイムによる仕切り直しとなる。
先ほどのリスタートからボトムとハイラインを入れ替えた先頭4台は、ギブスのサポートを得たレディックがインサイドから伸び、そのままホワイトフラッグへ。最終周回でもポジションを維持した45号車カムリXSEが、わずか0.168秒差で勝利を収める結末となった。
「タイ・ギブスの素晴らしいプッシュのおかげだ。トヨタのレーシングファミリーはお互いを気遣おうとしているんだ! 今日はみんな、本当にいい仕事をした」と、僚友の支援に感謝の言葉を述べたレディック。
「今日のステージ3では、スタートの段階でリードラップ最後の1台だったことを考えると、この勝利はとてもいい努力の結果だったと思う」と語った勝者は、長年、家族ぐるみの付き合いがありながら、直近に飛行機事故で急逝したダートの名手スコット・ブルームクイストに勝利を捧げた。
「ここ数日は大変だったが、この瞬間は本当に助けになる。この勝利は彼(ブルームクイスト)と彼の家族や友人に捧げるものであり、彼にとってそれ(勝利)はすべてに大きな意味があった。大切な人が亡くなるのはいつだってツラいことだからね……」
一方、トップ3の背後ではシリーズ記録の19年連続勝利と、逆転でのプレーオフ進出を狙うカイル・ブッシュ(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)がリッチモンドに続く4位を記録。依然としてカットオフラインまでは遠いものの、復調を感じさせる成績を残した。
さらに5位には地元出身のブラッド・ケセロウスキー(RFKレーシング/フォード・マスタング)がフォード最上位とし、6位に僚友のブッシャーが続くことに。とくに後者はこの順位により、チャスティンをかわしてカットを16ポイント上回る15位とした。
そしてレギュラーシーズン争いでは、クラッシュに散ったラーソンに代わり勝者レディックがチェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)に10点差を付ける新たなリーダーに浮上。レースで9位にまで回復したハムリンがランキング3位に続いている。
併催されたNASCARエクスフィニティ・シリーズ第21戦『カボワボ250』は、残り16周でトップに立ったジャスティン・オルゲイアー(JRモータースポーツ/シボレー・カマロ)がコーションフィニッシュで勝利。そしてレースウイークを前に、来季より新生ハース・ファクトリー・チームとして再出発を切る2台には、ともに移籍組となるサム・メイヤーとシェルドン・クリードの複数年契約が発表されている。
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