V90とV90クロスカントリーに日本導入以来初めての改良が施され、エクステリア&インテリアの一部変更とすべてのパワートレーンの電動化を実施した。ここではその中でも電動スーパーチャージャーを搭載した「B6」モデルの3台をテストドライブした。(Motor Magazine2021年1月号より)
デビューから4年たっても色あせないデザイン性
街で新世代ボルボを見かけると、いまもはっと心がときめく。ここでいう「新世代」とは2016年にXC90が発売されて以降のボルボで、チーフデザイナーのトーマンス・インゲンラート氏が描き出したまったく新しいデザインを備えたモデルのことを指す。彼のデザインの素晴らしいところは、デビューから4年経っても新鮮さを失っていない点にある。
●【くるま問答】ガソリンの給油口、はて? 右か左か、車内からでも一発で見分ける方法教えます(2020.01.21)
デビュー当時から、私はこの新しいデザインのことを「クラシックと未来感が絶妙のバランスで表現されている」と評していた。ただし、当初はどちらかといえばクラシックが支配的だったように思ったが、なぜかいまは未来感が勝っているように感じる。
薄暮れどきに、北欧の神話に登場するトールハンマーを模したT字型のデイタイムランニングライトが浮かび上がっているのを見るたびに、その未来感が新鮮な驚きとなって蘇る。ボルボの後ろ姿に輝く優雅なL字型のテールライトからも同様の感慨を覚える。
デザインの神通力に加え走行フィールも上質で洗練
もっとも、新世代ボルボが輝き続けているのはデザインの神通力だけが理由ではない。彼らが不断の努力でハードウェアの改良に取り組んでいることも新鮮さを保つ秘訣だろう。
そうした努力のひとつがマイルドハイブリッドシステムを装備したパワートレーンの投入である。ボルボは今、マイルドハイブリッドの採用に積極的で、XC60やXC90に続き、このほどV60やV90にもマイルドハイブリッドモデルが設定された。近ごろ話題のマイルドハイブリッドだが、これはどんなもので、何を目的としているのか?
ヨーロッパの最新排出ガス規制はユーロ6dで、これにはRDEという新しい計測方法が含まれている。一時期ニュースなどで報道されて注目を集めたRDEは、公道を走行中に発生する排出ガスを計測する点に最大の特徴がある。
RDEでは、従来のモード走行以上に大きなエンジンの負荷領域を用いるが、当然、そんなときにもエミッションが基準値を超えることは許されない。そこで急加速が必要になってもエンジンに大トルクを発生させることなく、バッテリーに蓄えた電力でモーターを駆動させて有害物質の発生を抑えるのがマイルドハイブリッドの主な役割である。
では、なぜモーターだけで走行できるフルハイブリッドにしなかったかといえば、それがコストに大きな影響を及ぼすからだ。200Vを超す高電圧を用いるフルハイブリッドは安全基準が異なり、高電圧部品に加えて安全対策にもコストがかかる。そして安全基準の境目が60Vにあるため、この上限に近い48Vがヨーロッパで規格化され、数多くのモデルに採用されているのだ。
ちなみに、ボルボのマイルドハイブリッドは0.5kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、10kW/40Nmのモーターを駆動する。単純計算すれば最大50秒間にわたって10kw(約14ps)が上乗せされるのだから、その効果は見逃せない。
新型V90はエンジン自体もアップデートされている。たとえば、従来のT6に相当するB6では、これまでの機械式スーパーチャージャーを電気式に置き換えることでフリクションロスを低減。さらに気筒休止機構を導入したほか、使用される部品をほぼすべて一新してマイルドハイブリッドに最適なエンジンに仕立てられた。そんな新エンジンを積んだV90、試乗すると実に上質で洗練された走行感覚が印象に残った。
まず、エンジン始動にはセルモーターを使わずにハイブリッド用モーターを用いるため、セルモーター特有の「キュルキュルキュル」という騒音を発することなく、「シュン」と瞬間的に、そして滑らかにエンジンは動き出す。これだけでも上質さというか洗練度はずいぶん違う。
立ち上がりが鋭い電気モーターを活用するとはいえ、発進のマナーはスムーズで、ドライバーの意に反した動きはしない。そしてマイルドハイブリッドがもっとも本領を発揮する中間域の加速では、アクセルペダルの踏み込み量に合わせて、まるで大排気量エンジンのようにスムーズに、そしてレスポンスよく加速していく。
こんな時、小排気量エンジンであればギアボックスがキックダウンしてエンジンを高回転まで引っ張るところだが、B6は同じギアのまますっと加速に移るところが上品で、なによりストレスが少ない。この辺がマイルドハイブリッドの最大の魅力といえる。新型の改良点はパワープラントだけに留まらず、足まわりの改良にまで及ぶ。
個性の異なるRデザインとインスクリプションとCC
私はSPAがデビュー当初から、その乗り心地にギクシャクしたところがあって、路面から強い衝撃を受けるとボディに微振動が残る傾向があると指摘してきた。しかし、新型ではこれらがすっかり解消され、目地段差を乗り越えた際のショックをスムーズに受け流すとともに、大きくうねった道でもボディをフラットに保つ心地いいシャシへと変貌していたのである。これもまた、上質さの改善に大きく寄与するものだ。
比較試乗に連れ出したのはRデザイン、インスクリプション、そしてクロスカントリー(CC)のグレードはB6AWDプロの3台。インスクリプションを標準タイプとすると、Rデザインは専用サスペンションが組み込まれたスポーツタイプ、CCは最低地上高をV90より55mm引き上げ210mmとしたオフロードタイプで、この位置づけが乗り心地やハンドリングにもそのまま反映されていた。
まず、乗り心地が快適でハンドリングとのバランスがもっとも高いレベルで両立されているのがインスクリプション。Rデザインはこれに比べると引き締まった乗り心地で、よりスポーティ指向。一方のCCはタイヤの外径が大きく、ハイトも高めなため、路面からの入力は3台中もっとも軽い。ただし、それだけに強い衝撃が加わったあとはゴム質系の弱い振動が短く残る傾向があった。また、ワインディングロードでは少し早めの操舵を心がける必要があるのもCCの特色だ。
もっとも、これらの違いは3台を乗り比べた時に初めて感じることであって、Rデザイン単独で試乗すればそうした印象は抱かなかったかもしれないし、CCのハンドリングがV90と異なると思わなかった可能性もある。それ以上に大切なのは、3台の違いがスペックの差を素直に反映したものであって、取り立てて指摘すべき変なクセを持っていなかった点にある。
だから、キャラクターの違いを必要以上に心配することなく、自分の使用目的にあったモデルを選ぶことがあとあと後悔せずに済む最大のポイントだろう。
ボルボらしさが感じられる期待どおりの改良である
今回は金沢から松本を経由して都内まで400kmを超すロングドライブを敢行したが、前述した乗り心地の改善もあって疲れはほとんど感じなかった。これには運転支援システムの強化も貢献していたはず。たとえばアクティブレーンキーピングは以前よりも滑らかに車線をトレースするようになっていたし、アダプティブクルーズコントロールの加減速にもギクシャクしたところはなかった。
冒頭でデザインは不変という主旨のことを述べたが、実際には今回のマイナーチェンジに伴ってフロントグリル、バンパーまわり、テールランプまわりの意匠が見直された。もっとも、それらは旧型を古く見せるための変更ではなく、あくまでも個性を際立たせるためのモディファイといえる。この辺からも、いかにもボルボらしいメッセージが感じ取れる。
そう、今回のマイナーチェンジをひと言で表現するなら「極まるボルボらしさ」となる。パワープラントや足まわりのアップデートは、洗練さと上質さを高め、人に心地いい空間を提供するための努力と思えたからだ。その意味でいえば、今回のマイナーチェンジはボルボファンの期待どおりの内容といえるだろう。(文:大谷達也)
■ボルボV90 B6 AWD インスクリプション(Rデザイン)主要諸元
●全長×全幅×全高=4945×1880(1890)×1475mm
●ホイールベース=2940mm
●車両重量=1930kg
●エンジン= 直4DOHCターボ+電動スーパーチャージャー
●総排気量=1968cc
●最高出力=300ps/5400rpm
●最大トルク=420Nm/2100-4800rpm
●モーター最大出力=10kW
●モーター最大トルク=40Nm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=8速AT
●車両価格(税込)=884万円(884万円)
■ボルボV90 クロスカントリー B6 AWDプロ 主要諸元
●全長×全幅×全高=4946×1905×1545mm
●ホイールベース=2940mm
●車両重量=1920kg
●エンジン= 直4DOHCターボ+電動スーパーチャージャー
●総排気量=1968cc
●最高出力=300ps/5400rpm
●最大トルク=420Nm/2100-4800rpm
●モーター最大出力=10kW
●モーター最大トルク=40Nm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=8速AT
●車両価格(税込)=904万円
[ アルバム : ボルボV90 B6/V90クロスカントリー B6 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
ベントレーくらい高級感と清潔感あるね。
ひと昔前は野暮ったい印象だったけど、イメージ一新したね。