豪州大陸最大のツーリングカー選手権、VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーの2019年シーズン第9戦、イプスウィッチ・スーパースプリントが7月27~28日に開催され、ここまで未勝利だった“ザ・セブン・タイムス・チャンピオン”ことジェイミー・ウインカップ(ホールデン・コモドアZB)がレース1で今季初勝利。続くレース2では罰金裁定のトラブルがありつつも、王者スコット・マクローリン(フォード・マスタング)が勝利し、フォードが早くもタイトルを獲得している。
オーストラリア東海岸のブリスベン近郊にあるクイーンズランド・レースウェイでの1戦も、金曜プラクティスからDJRチーム・ペンスキーとフォード・マスタング・スーパーカーの組み合わせが猛威を振るう展開に。
オーストラリア・スーパーカー:フォード独走阻止へ、さらなる性能調整
このイベント直前に実施されたシーズン2度目のCoG(センター・オブ・グラビティ)調整の影響を感じさせない速さで、現チャンピオンのマクローリンが今季定位置のポールポジションを獲得。これがDJRペンスキーにとって記念すべき100回目のポール獲得記録となった。
迎えた土曜120kmのレース1は、ポールシッターの現王者に対しフロントロウに並んだトリプルエイト・レースエンジニアリングのエースが意地を見せる展開となり、1コーナーへのホールショットを狙ったシェルVパワーのマスタングにアウトサイドから並んだレッドブル・レーシング・オーストラリア(RBRA)のホールデン・コモドアZBが、続くターン2への加速で先行し首位浮上に成功。
そのレッドブル・ホールデンに続く形でピタリと背後をマークしたセカンドロウ3番手発進、23Red Racingのウィル・デイビソン(フォード・マスタング)が2番手に上がり、マクローリンはいきなり3番手に後退してしまう。
オープニングラップ後方では、ティックフォード・レーシングのチャズ・モスタート(フォード・マスタング)も華麗なハンドリングを見せ、ターン4から6にかけてアウトサイドから先行車をオーバーテイクし、RBRAの2016年王者、SVGことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(ホールデン・コモドアZB)と、今季からフォード陣営に加入したリー・ホールズワース(フォード・マスタング)をパスして4番手に浮上してくる。
その後レースはこう着状態となり、10周目には3番手マクローリンがアンダーカットを狙って早めのピットへと飛び込むも、左フロントの脱着に手間取り9秒のロスを喫し、これで実質勝負あり。
この時点ですでに4秒のリードを築いていた首位ウインカップは、15周目にルーティンピットへ向かうと、盤石の作業で4輪ともニュータイヤに交換すると、マクローリンの前でコースに復帰。クリーンエアのなかフレッシュラバーのタイヤセットでさらにアドバンテージを築いていく。
レースは残り15周となったところでマスタング同士の争いに動きがあり、3番手デイビソンと4番手モスタートがテール・トゥ・ノーズの状態になると、ペースアップした2台は前を行くDJRチーム・ペンスキーの選手権リーダーにみるみる迫っていく。
すると後方からのプレッシャーに耐え抜いたデイビソンは、27周目のターン3でついにチャンピオンを捉え2番手に上がると、そのパッシングの機会を見逃さなかったモスタートも続き、ターン4の出口で続けざまにマクローリンをかわし、表彰台圏内を手に入れる。
そうしたマスタング勢の攻防劇にも助けられたウインカップは、2秒のマージンを維持して39周を走破し、久々のトップチェッカー。2018年耐久カップ最終戦サンダウン500でポール・ダンブレルと挙げて以来、自身の最多勝記録を114に更新する今季初勝利を飾った。
「たしかにこの数カ月、最後の勝利から少し遠ざかっていたのは気にかけていた」と、レース後に振り返った"ザ・セブン・タイムス・チャンピオン"。
「それにパドックのみんなからも『あいつはここ最近勝ててない』なんて名指しで言われていたこともあって、余計に意識せざるをえなかったよ。このグリッドに並んでいるうちの80%は勝利経験のないドライバーだっていうのにね」と、皮肉も込めつつ復活勝利に安堵した様子のウインカップ。
「フロントロウから良いスタートを切ったけど、スコッティ(マクローリン)やダボ(デイビソン)も同じく蹴り出しが良くて、ミラーにはホワイト&レッドのマスタングが大写しになっていた。そのままストレートにアウト側を回ったが、インサイドにいる17号車(シェルVパワー・マスタング)のトラクションと加速力は信じられないほどだったよ」
「彼はそのまま2コーナーに向けインサイドで深く飛び込んできたけど、なんとかポジションを奪取することができた。ここまで苦労したシーズン前半戦も、僕らトリプルエイトは懸命な努力を続けてきたし、コモドアZBの戦闘力も少しづつ取り戻せている。でもまだチーム全体で3勝目、それだけ他陣営が良い仕事をしている証だ。やるべきことは山積みだね」
そのVASCリビング・レジェンドの予言どおり、続く日曜のレース2に向けてはマクローリンのマスタングが2戦連続のポールを獲得すると、200kmの決勝でもSVGのアタックを退けてシーズン14勝目をマーク。
この結果、フォード・パフォーマンスとDJR&ティックフォード共闘の傑作として、このデビューイヤーから圧倒的戦闘力を見せつけたマスタング・スーパーカーの戦績により、フォードが早くも2019年のマニュファクチャラーズ・タイトルを獲得。
DJRのホームトラックということも加わり、決勝後のウイニングラン中に歓喜のバーンアウトを披露したマクローリンは、表彰台にも“Ford News: Mustang wins title(フォード・ニュース:マスタングがタイトル獲得)”と書かれたポスターを持ち込み観衆にアピールすると、これらのパフォーマンスが規定違反にあたるとしてバーンアウトで3000ドル(約32万円)、表彰台でのポスター掲示に10000ドル(約109万円)の罰金処分が科された。
続く2019年VASCシーズンの第10戦は、南オーストラリアのタイレムベンドに位置するザ・ベンド・モータースポーツパークを舞台に、8月23~25日に再びスーパースプリント・フォーマットでの勝負が繰り広げられる。
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