2018年11月9日、日本でデビューしたBMW8シリーズクーペ。これまで「8」の称号は特別なモデルに与えられてきたが、新型8シリーズはどうなのか。まずは10月に開催された国際試乗会の模様をレポートしよう。(Motor Magazine 2018年12月号より)
6シリーズクーペよりも全長は50mmも短い
ハイブリッドカーに救援要請しちゃダメ? バッテリー上がりで注意すべきこと
「8」という数字はこれまで、BMWにとってシンボリックで重要なモデルに好んで与えられてきた。1989年から96年のシリーズクーペ、2000年から03年のZ8ロードスター、さらには2013年から今日に至る現行のi8がそれだ。これらはBMWハイエンドスポーツカー、すなわちイメージ高揚のためのドリームカーとしての役割が与えられていた。
その末裔である新世代の8シリーズがカムバック、2018年11月のドイツにおける市場導入に先立って、ポルトガルのエストリルサーキットを中心に試乗会が開催された。BMWはこのモデルをルマン出場マシンM8 GTEのDNAを継承する「本格的スポーツカー」に位置付けたい意図があるからだ。
まずは現時点でのトップモデルM850i xDriveのハンドルを握る。このクルマの心臓は新たに開発された4.4L V型8気筒ツインターボで、Mパフォーマンス ツインパワー ターボテクノロジーによって最高出力390kW (530ps)と、最大トルク750Nmを発生する。0→100km/hの加速所要時間は3.7秒。最高速度は250km/hでリミッターが介入する。
標準装備でエレクトロニック可変ダンパーが組み合わされたアダプティブMシャシと、4WDシステムを装備。その特性はBMWの基本シャシセッティングである後輪への駆動重視、すなわち最大で100%のトルクをリアアクスルへと伝達することが可能だ。
ディメンジョンを見れば、この8シリーズ(型式G15)が運動性能を極めて重視していることがわかるだろう。これまでの6シリーズに代わるモデルだが、モデル名とは対照的に全長は4851mmと50mmほど6シリーズより短くなっている。同時に全幅は1902mmで10mmワイドに、さらに全高も1346mmで30mm低くなっている。一方、ホイールベースも2822mmと30mmほど短縮されている。
エクステリアデザインも鋭利なエッジと緊張感のあるサーフェスに包まれ、ダイナミックな印象が強調されている。とくに横に繋がってワイドな印象が強くなったキドニーグリル、その下のワイドに広がったエアインテーク、そしてこのデザインを受け継いだ抑揚の大きなリアトランクリッドスポイラーと左右のマフラーカッターが、8シリーズの高性能ぶりを視覚的にも印象付けている。
とことんスタビリティの高いオンザレール感覚を演出
さて、いよいよコースイン。完熟走行の後にスピードを上げて、主にコーナーでのダイナミック性能を見極めに入る。後輪駆動重視の4WDセッティングと電子制御のデファレンシャルロックは、ハイスピードコーナリングでの姿勢制御にピッタリのチューニングだ。決してテールハッピーな姿勢に陥ることはなかった。
そうしているうちに13カ所のコーナーに富んだ元F1コースが楽しく感じられ、速度が徐々に上がってゆく。もちろん冷静な分析も必要で88km/hまでであればハンドル操作に応じて最大25度反対方向へ操舵される4WDステアのおかげで、コーナリング時にハンドルを大きく切り込む必要はない。自然にスタビリティの高いオンザレールフィールを演出してくれる。ちなみに88km/h以上では同相に2.5度まで切れ、理論上のホイールベース延長効果でスタビリティを向上、レーンチェンジなどを快適にこなせる。
一般道では、コンフォートモードで快適なグランドツーリングを楽しむことも可能だ。さらにアダプティブクルーズコントロールの渋滞アシストにはストップ&ゴー機能も装備され、ストレスを感じることなくエンテンターテインメントのプログラムを楽しめる。
この新しい8シリーズだが、2ドアクーペに加えてすでに本国ではカブリオレも登場、この後、4ドア グランクーペも用意されているようだ。高性能版のM8にも同様のバリエーションが展開される予定だ。(文:木村好宏)
BMW M850i xDrive 主要諸元(データは2018年11月8日発表の日本仕様)
●全長×全幅×全高=4855×1900×1345mm ●ホイールベース=2820mm ●車両重量=1990kg ●エンジン=V8DOHCツインターボ ●排気量=4395cc ●最高出力=390ps/55000rpm ●最大トルク=750Nm/1800-4600rpm ●トランスミッション=8速AT ●駆動方式=4WD ●車両価格=1714万円
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