左ハンドルのアルファード 正体は?
text:Kumiko Kato(加藤久美子)
【画像】海外でも威厳 アルファード海外仕様/日本仕様、違いは?【比べる】 全100枚
日本の中古車情報サイトでアルファードの価格を見ていた時のこと。
車両本体価格798万円、総支払額850万円という新車のアルファードが数台並んでいるのに気が付いた。グレードはすべて最上級の「エグゼクティブラウンジ」である。
新車と書いてあるが保証については様々だ。
そして説明書きには意外な一言が記されていた。
「希少な左ハンドル車」。え? 左ハンドル?
車両紹介の写真を見ると確かに左ハンドルだ。どこから来たクルマなのか?
よく見てみると、センターコンソールのタッチパネル画面の上部にキリル文字のロシア語が表示されていた。
説明文には「30台のご用意があります」とも書いてある。
なぜロシアのアルファードが日本の中古車販売店で売られているのか?
中古車販売店を経営する知人数名にも聞いてみたが、おそらくこんなに大量の左ハンドル・アルファードが販売されるのは初めてではないか? ということだった。
この謎を解くべく、もっとも多い台数が中古車情報誌に掲載している、岐阜県岐南町の中古車販売店「リアルカースタジオ」に聞いてみることにした。
謎の左ハン コロナ禍が関与していた
答えてくれたのは「株式会社リアル REAL CO.,LTD.」代表取締役の毛利竜也さんだ。
同社は世界各地に海外事業部を有し、レクサスLX570やランドクルーザー、ジムニー、パジェロなどの左ハンドル車をはじめ、日本では入手が難しい車両を世界から輸入販売している。多くの実績を持つ自動車販売会社だ。
アルファードに関しては初めて左ハンドル車を輸入したという。どういう経緯だったのか。
――左ハンドルのアルファードはどのような経緯で日本に入って来たのでしょうか?
「コロナ感染拡大防止のため、世界多くの港がロックダウンとなったことに始まります」
「弊社は欧州やドバイでクルマを購入してカンボジアや中国、アフリカなどに輸出しています。今回のアルファードも、海外で販売予定でした」
「いつも通り、ロシアで購入した50台のアルファードを中国はじめ、アジアの国々で販売するために船に載せたのですが、コロナが世界各国に広まっていくうちにアジアの国々は次々と港を閉めてしまいました」
「目的の港でアルファードをおろせないのはもちろん、ロシアに戻ることもできません。これが5月の中旬位でしたね」
「そこで、いっそのこと日本に持ってきて売ってみようかというアイデアが生まれました」
「アルファードは日本でも大人気ですし、ステイタス性に加えて希少な左ハンドルのアルファードはきっと新たな価値を見出してくれるだろうと」
ロシア仕様と日本仕様、違いはどこ?
――ロシア仕様ということですが、日本仕様と違うところは?
「グレードも最高級のエグゼクティブラウンジで、仕様もほとんど同じです」
「違うのはホイールのカラーがロシア仕様はゴールドになっていることですね。見た目の大きな違いはこれくらいです」
――販売を初めてみていかがですか?
「多くの問い合わせをいただいていて、反響のすごさに驚いています」
「関東がダントツに多いですね。東京、横浜、千葉など。また、九州にある高級車専門のレンタカー会社などからも問い合わせがありました」
「お客様の送迎用に使いたいというお話もいただいています」
「また中国で大変人気があるクルマなので、中国の自動車販売業者さんからもご相談をいただいています」
――日本で乗るうえでの保証はどうなっていますか?
「アルファードは海外での生産はなく、すべて日本で製造されています。しかし、今回の左ハンドル・アルファードは海外に輸出されたクルマです」
「したがってトヨタ車であっても並行輸入車と同じ扱いになるのでトヨタ自動車の新車保証はつきません」
「また、整備に出す場合も、購入された販売店での対応となります」
「当社で販売する車両に関しては12か月走行距離無制限で保証を付けています。さらにオプションで3年間の保証も付けることも可能です」
新車装着のタイヤ 実は銘柄が異なる
ちなみに、新車装着時のタイヤも実は銘柄が異なっている。
日本向けのトーヨータイヤはミニバン専用タイヤでおなじみの「トランパスR30」だが、ロシア仕様は「プロクセスR30」を履く。
この違いはどういう理由かを製造元のTOYO TIRE株式会社に聞いた。
「採用に至った経緯はOEM側の情報につき、当社からの回答は差し控えさせてください」
「トランパスR30とプロクセスR30は名称の違いだけではございません」
「スペックの違いに関する情報について開示することはできませんが、新車用、補修用ともに対象となる車種、使用環境、求められる性能を考慮して開発をおこなっています」
との回答だった。
アルファード逆輸入 検査はスムーズ
ところで、日本で生産されたクルマであっても海外に輸出されたのちに日本へ逆輸入して登録(=ナンバーをつける)する場合は、新車並行(輸入)車と同じ手続きとなる。
つまり、排ガス検査をはじめ、日本の保安基準に適合しているかどうかの確認作業も非常に多くの項目が検査対象となる。
しかし、これら煩雑な保安基準適合の審査もアメリカや欧州、オーストラリア、韓国などいわゆる「58協定(98協定)」のメンバー国であれば、あまり時間や手間をかけることなく審査をパスできる。
58協定とは1958年に締結された国連欧州経済委員会(ECE)の多国間協定「車両等の型式認定相互承認協定」のことである。
日本は1998年に加盟しており、以降、ECE規則を国内向け車両に順次採用し、加盟国との間でそれら規則の相互認証が実現している状況だ。
今回の左ハンドル・アルファードは58協定加盟国のロシアで販売されたクルマゆえに、日本で登録するための審査が比較的スムーズだったというわけだ。
左ハン・アルファード 今後どうなる
ところで、今回、たまたま輸入されることになった左ハンドル・アルファードだが、今後はどうなるのだろうか?
毛利さんはこう答える。
「反響が大きいこともあり、継続して輸入販売を検討しています」
「左ハンドル・アルファード以外にも、中国をはじめ、アジアで大人気となっているレクサスLMのスタイルに換えられる外装パーツなどの輸入も考えています」
なお、ロシア仕様のアルファードは実績のある会社が輸入した希少価値の大きな左ハンドル車であることの他に、もう1つメリットがあるという。
それは、「即納」が可能だということ。
大人気のアルヴェルは地域によっては納車が年を越してしまうケースもあるようだが、「すぐに欲しい!」という人には斬新で良い選択になるだろう。
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みんなのコメント
右直事故に巻き込まれたが左ハンドルの車は相手の発見の遅れるしホント迷惑。
外車でもない車に左選択するとかアホ丸出しにしか感じない。