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【F1第19戦無線レビュー】ライバルが猛追するなか、トラブルに苦しむフェルスタッペン「ブレーキング中に喋らないで!」

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【F1第19戦無線レビュー】ライバルが猛追するなか、トラブルに苦しむフェルスタッペン「ブレーキング中に喋らないで!」

 2023年F1第19戦アメリカGP。トップ3にはシャルル・ルクレール、ランド・ノリス、ルイス・ハミルトンが並び今季初優勝を目指した。一方前戦カタールで3度目のドライバーズタイトルを獲得したマックス・フェルスタッペンは、予選Q3でトラックリミット違反により最速タイムを抹消されたため、6番手からのスタートに。だがレースではブレーキトラブルに苦しみ、楽な戦いにはならなかった。アメリカGPを無線とともに振り返る。

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勝者フェルスタッペン「予想より苦労した。ブレーキの問題を抱え、大きなアドバンテージもなかった」/F1第19戦

 優勝大本命のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)がまさかの6番グリッドに沈む一方で、フェラーリ通算100戦目のシャルル・ルクレールがポールポジションを獲得。デビュー100戦目のランド・ノリス(マクラーレン)も、フロントロウから初優勝を狙う。

 一方、揃ってQ1落ちを喫したアストンマーティンの2台は、空力仕様やセッティングを大幅に変更し、ピットレーンスタートからの巻き返しを狙った。ところがランス・ストロールはレコノサンスラップからピットレーンに入らず、そのままグリッドへと進んでしまった。

ベン・ミッチェル:ランス、ボックス、ボックスだ。ピットスタートだぞ
ストロール:そうだった……もうグリッドだよ

 明らかな規約違反だが、レース後の審議でお咎めなしとなった。

 アメリカGPでは、スタート直後のターン1近辺の事故はつきものだ。今回もエステバン・オコン(アルピーヌ)とオスカー・ピアストリ(マクラーレン)が接触した。

3周目
ジョシュ・ペケット(→オコン):サイドポッドにダメージだ

 そのダメージのせいか、オコンのペースが伸びない。それでもチームメイトのピエール・ガスリーには抜かれまいと抵抗する。

ガスリー:エステバンに、僕のタイムをロスさせないように言ってくれ

 オコンはすぐに後退。角田裕毅(アルファタウリ)、周冠宇(アルファロメオ)にも抜かれていき、最終的にリタイアとなった。

 一方のピアストリも、走り続けるにはダメージが酷すぎた。

トム・スタラード(→ピアストリ):全開で走るな。リタイアだ

16周目
ノリス:何が起きてるのかわからないけど、ターン8と9の間ですごくバランスが悪い

 突然のマシン挙動変化に戸惑うノリス。決勝当日はこの3日間で一番風が強く、その影響もあったようだ。

ウィル・ジョゼフ(→ノリス):縁石を避けてみてくれ。風は不規則に吹いてる

 16周目以降、レッドブルの2台やカルロス・サインツ(フェラーリ)、ノリスらが最初のタイヤ交換に向かう。しかしメルセデスの2台は、ピットインする気配がない。

18周目
ジャンピエロ・ランビアーゼ(→フェルスタッペン):ハミルトンはターゲット+4で、1ストップを狙ってるのかもしれない

 目標周回数より4周伸ばして、1ストップ作戦に行くかもしれないと、担当エンジニアがフェルスタッペンに伝えた。

 当のメルセデスは、2台の間でタイヤへの感触がかなり違うようだった。

19周目
ピーター・ボニントン:このタイヤで、あと5周できると思うか
ルイス・ハミルトン:わからない。かなり厳しい

マーカス・ダドリー(→ジョージ・ラッセル):ジョージ、あと5周行けるか?
ラッセル:大丈夫だ

20周目
ボニントン:フェルスタッペンはピットウインドウに入ってる
ハミルトン:わかってるが、XXXだよ。タイヤと格闘中だ

 最初のスティントを引っ張って、首位に浮上したハミルトン。しかしこの時点でフェルスタッペンは17秒後方まで迫っていた。そしてピットロスは20秒、今ピットに入ると、フェルスタッペンの後ろでコース復帰してしまう。

 1回ストップ作戦を考えているチームとしては、あと2、3周伸ばしたい。だがミディアムタイヤは、もはや限界のようだった。結局ハミルトンはこの周にピットイン。フェルスタッペンの6秒5後方で、コースに戻った。

24周目
ジョゼフ(→ノリス):フェルスタッペンはミディアム、ミディアムだから、2ストップだ。僕らはプランBで行くぞ

 ノリスも2ストップだが、ミディアムからハード、ハードと行こうというのだろう。それを受けて、ハミルトン陣営も2ストップに作戦変更した。

26周目
ボニントン:このタイヤを使い切っていいぞ。ノリスがプッシュしてる
ハミルトン:トライするよ

 中盤28周目に、ついに首位に立ったフェルスタッペン。しかしブレーキの感触に不満を訴え続けた。

34周目
フェルスタッペン:昨日に比べたら、ブレーキは最低だ!
ランビアーぜ:わかった

 それでもフェルスタッペンのペースはさほど遅くなく、追いつけないハミルトンが焦り始めた。

ハミルトン:マックスは離れて行ってる!

42周目
ランビアーゼ:一応情報をあげとくよ、マックス。チェコに対してブレーキングで失ってるコーナーは11、12、20で……
フェルスタッペン:わかってる。ブレーキが完全にXXXなんだ

44周目
ハミルトン:まだ前とたっぷり差があるぞ
ボニントン:大丈夫だ。縮まってる。P2は射程距離だ

 この時点で、ハミルトンは3番手。2番手ノリスとの差はまだ3秒以上あったが、そこから一気にペースを上げ、49周目にはノリスをかわしてついに2番手に上がった。

 対照的に1ストップ作戦に賭けたルクレールは、2ストップ勢より明らかにペースが劣り、苦しい展開を強いられていた。

45周目
シャビエル・マルコス・パドロス:プランCにするのは、どうかな。それともこのまま、プランDで行くか
ルクレール:何をバカげたことを! プランCになんかしたら、僕のレースは台無しだ

 プランCはおそらく、新品ミディアムタイヤへの交換を指すのだろう。しかしこの段階での戦略変更などあり得るはずがなく、ルクレールが激怒するのも無理はない。相変わらずフェラーリのピット戦略は、呆れるほどに腰が座っていない。

 一方優勝争いは、緊迫の度合いを増していた。3周オフセット、しかもグリップに優れるミディアムを履くハミルトンが、フェルスタッペンを猛追していたのだ。

46周目
ランビアーゼ:ハミルトンと同じペースだぞ
フェルスタッペン:頼むから、話しかけないでくれ! ブレーキング中なんだ
ランビアーゼ:了解、マックス

 一方後方集団では、古い仕様に戻したアロンソが見違えるような速さをみせ、ピットスタートから7番手まで順位を上げていた。ところが……。

49周目
アロンソ:リヤサスに問題だ
クリス・クローニン:データ上は、何も出てない

 少しして、エンジニアからダメージの確認が出た。

クローニン(→アロンソ):問題はフロアだ

 これ以上の周回は無理と判断され、49周目に緊急ピットイン。そのままリタイアとなった。

 ブレーキが改善されず、ハミルトンに追われるフェルスタッペンが珍しく声を荒げた。

54周目
ランビアーゼ:ギャップは3秒6だ
フェルスタッペン:ブレーキング中に喋るなって!!

 直後にハミルトンは2秒8まで追い詰めた。しかしフェルスタッペンが逃げ切り、今季15勝目、自身のキャリアでは50勝目となる勝利を挙げた。

 チェッカー後のドライバーは、いつもながら悲喜こもごもだ。

ランビアーゼ:よくやった、マックス。優勝セレモニーを堪能してくれ
フェルスタッペン:了解した。タフなレースだったけど、また勝つことができた
クリスチャン・ホーナー代表:よくやった。通算50勝だ。トラブルが出てたのに、よく乗り切った

 今回の最大の敗者は、ポールスタートから6位完走が精一杯だったルクレールか。

ルクレール:この戦略では、これ以上は無理だった。すべてを出し切ったと思うけど……
パドロス:本当にタイヤをうまく持たせてくれた
ルクレール:XXXな結果の前には、そんなことはどうでもいい

 そして角田は久々に、努力の報われた一戦となった。

マッティア・スピニ:やったぞ、P10! そしてファステスト獲得だ!
角田:みんな、よくやってくれた。運にも恵まれたけど、素晴らしいレースだった

 角田はこのあと、ハミルトンとルクレールの失格で8位に繰り上がり、合計5ポイントを獲得する、今季最高の週末となったのだった。

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