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ドゥカティのライダーが決まった一戦。ヤマハは唯一の強みを捨てた?/MotoGPの御意見番に聞くイタリアGP

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ドゥカティのライダーが決まった一戦。ヤマハは唯一の強みを捨てた?/MotoGPの御意見番に聞くイタリアGP

 5月31日~6月2日、2024年MotoGP第7戦イタリアGPが行われました。前戦カタルーニャGPの決勝で優勝を飾ったバニャイアがイタリアGPも好走を披露。スプリントで勝利を飾ると、決勝でも見事なスタートを決めて、優勝。2位にはチームメイトのエネア・バスティアニーニが入り、母国GPとなったドゥカティ・レノボ・チームはワン・ツーフィニッシュを飾りました。

 そんな2024年のMotoGPについて、1970年代からグランプリマシンや8耐マシンの開発に従事し、MotoGPの創世紀には技術規則の策定にも関わるなど多彩な経歴を持つ、“元MotoGP関係者”が語り尽くすコラム、2年目に突入して第32回目となります。

苦手克服で6年振りのドゥカティ優勝。鍵となるタイヤへのアクション/MotoGPの御意見番に聞くカタルーニャGP

* * * * * *

--いやー、久々に凄いレースを見せてもらいました。派手なクラッシュシーンや、オーバーテイクの応酬があるわけではなかったですが、まさに息詰まる一戦と言う言葉がふさわしい好レースでしたね。

 タイヤ内圧が上がってしまうので、あまり接近できないというジレンマを抱えていて、勝負は一瞬で仕掛けるしかないという事情があったかもしれないけど、結果的にそれが見応えのあるレース展開になったよね。

 例えが悪いかもしれないけれど、剣豪が一定の間合いを取って対峙したまま身じろぎもせず、それでいてふたりの脳裏では既に何度も切り結んでいて、動きがあったと思ったら一瞬で勝負がついている……そういった緊張感が最後まで続いたね。

 特にエネア・バスティアニーニ選手が残り2ラップでマルク・マルケス選手を抜き返し、その勢いでラストラップの最終コーナーでホルへ・マルティン選手を仕留めた時の切れ味の鋭さは最高に痺れたね。

--バスティアニーニ選手はずっとマルケス選手の圧力に耐えていましたから、抜かれた段階でもうダメなのかなと思いましたが、今回は違いましたね。

 今回のスペシャルカラーのアズーロ(青)が力を授けてくれたんじゃないのかな。

 国を背負って走るというのはプレッシャーでもあるけれど、モチベーションが爆上がりする要因でもあるしね。高揚感が良い方向に働いて、いつも以上の力が出せたのかもしれないね。

 それにしてもスペシャルカラーでの参戦は今回みたいにうまくいくとは限らないから、結構リスキーな側面もあるんだよ。今回はレースの神様は完全にイタリアに忖度してくれたみたいだけどね。

 バニャイア選手も前回のトラウマを乗り越えて久々にスプリントで優勝したし、レースでも不可解なペナルティでの3グリッド降格を実に巧みなライン取りで帳消しにしてしまったのは見事だった。

--プラクティスでアレックス・マルケス選手の進路妨害をしたということでしたが、あれは本当にペナルティに相当する行為と言えるんでしょうか?

 ビデオを見る限りでは、バニャイア選手が走行ラインを邪魔したようにも見えないし、それほど危険なシーンという感じではないね。

 直前にマルク・マルケス選手が後ろ振り返りながら低速走行していたから、バニャイア選手も速度を落としたようにも見えるし、文句言うなら自分の兄貴に言えよと思ったけどね。

 まぁ、結果的にバニャイア選手が3グリッド降格して兄貴のフロントロウスタートに貢献したので、最近F1でも話題になっている「チームプレー」というところかな。

 もっとも兄貴はアウト側の4番グリッドの方が良かったと迷惑そうに言っていたけど……(笑)。

 でも接触したとか言うわけでもないのに、アレックスの過剰なボディアクションに惑わされるスチュワードにはますます不信が高まるね。

 そういえばカタルーニャGPのバスティアニーニ選手のペナルティもなんだか釈然としないし、ドゥカティファクトリーに厳しい裁定になってるような気もしないではないな……。

--イタリア人のチャンピオンが2年続いたので、そろそろスペイン人チャンピオンをというところですか、まさかそんなことはないですよね(笑)。

 さすがにね。でもイタリア対スペインという構図になっているのは間違いないし、カタルーニャGPではバイニャイア選手が勝って悔しい思いをしたスペインのファンも、ここイタリアでスペイン人ライダーが勝つのは気分が良いだろうね。

--ところで今年も最速マシンはKTMでしたね。それも366.1km/hとレコードとまったく同じでした。偶然とはいえ出来すぎな感じがしませんか。

 昨年はブラッド・ビンダー選手がスプリントで記録したレコードだけど、今年はワイルドカード出場のポル・エスパルガロ選手がプラクティスで記録したね。

 常々、測定地点の最高速で一喜一憂すべきではないと言ってはいるものの、エンジンと空力両面の性能が出してくる数字なので、トップスピードランキングでKTMが常に上位に固まっているのは事実だし凄いことだね。

 一方で最新のドゥカティ・デスモセディチGP24は、最高速という点ではそんなに速くないというかむしろ旧型のGP23の方が速い感じだね。

--それは言えますね。スプリントではマルク・マルケス選手が割りと簡単にマルティン選手をストレートでオーバーテイクしてましたよね。

 当然スリップの効果を使ってのオーバーテイクなんだけど、マルティン選手が抜かれた後の周回のストレートで間合いを詰めているようにも見えなかったから、そこは印象通りということかな。

 エンジンの個体差とかどのくらい使い込んでるかによって性能差はあるだろうから、一概に新旧マシンの傾向と決めつけるべきではないのかもしれないけど気になるところではある。そこを敢えて犠牲にして得たものは何なのか? とかね。

 GP24はロングコーナーでのリヤタイヤの摩耗が少ないという話も聞くので、その辺りの差異を生んでいる要素が空気抵抗を増加させているとも考えられるけれど、フレーム剛性とかも関係するから正直なところ良くわからない(笑)。

--そのマルティン選手ですが、スプリントでバスティアニーニ選手に1コーナーの進入でパスされた際に、その後のラインがクロスしてバスティアニーニ選手を結果的にリタイアに追い込んでしまいました。ドゥカティファクトリーの残りひとつのシートを争う形になっている当事者たちなので、ちょっと微妙だなと思って見ていました。

 たしかにそうなんだけど、このケースはレーシングインシデントということで仕方ないのかなと思うね。でもムジェロのレースの神は、そうは思わなかったのかな。後でマルティン選手にきついお仕置きをしたようだから、バスティアニーニ選手のファンとしては、少し溜飲が下がったかもしれないね(笑)。

--ところで、ドゥカティでの初優勝も時間の問題と見られているマルク・マルケス選手ですが、今回は予選の課題はクリアできたということでしょうか?

  予選の走り方はどのライダーも同じで、まず前後ニュータイヤで数ラップ走行し、ピットインしてリヤだけニュータイヤに替えてタイムアタックというルーティンだね。

 マルケス選手は、その2回目のタイムアタックでフロントをプッシュするのが問題だと言っているわけで、今回Q2でもフロントプッシュで転倒しているから根本的に問題が解決したわけではなさそうだよ。今回は1回目の走行で、そこそこ良いタイムが出ていたのでことなきを得たけれどね。

--リヤタイヤが新品だとグリップがあるのでフロントが負ける感じですかね。そうだとしても他のライダーがそれで問題ないとすれば、長年ホンダ機で染みついた乗り方とかが関係しているんですかね。ところで、カタルーニャGPの前の週にここでプライベートテストをしたヤマハとホンダですが、結果的にはその効果が出たとは言い難い結果になってしまいましたね。

 そう言われると返す言葉もないけど、少なくともヤマハの金曜日に関しては、走り込みの成果があったのか、今シーズンで一番希望に満ちていたように思えたね。

 ファビオ・クアルタラロ選手が僅差で(マーベリック・)ビニャーレス選手に負けたけど、Q1で勝ち抜けて来ると思っていたしね。あの時点ではチームはかなり楽観的に構えていたようだし、僕もそう信じていた。何かやってくれそうな感じがしていたんだけどねぇ……。

--クアルタラロ選手のスプリントでの不運なアクシデントもありましたが、全体な流れもレースの結果も“ジリ貧”という感じがしましたね。原因はどんなところにあるんでしょう?

 外観的な変化としては、カタルーニャGPから新しいエアロパッケージが投入されたことかな。結果論になるけれど、新しいエアロのおかげで一発のタイムは出るようになったけれど、ロングランでは体力的に厳しいということを少し楽観的に考えていたのかもしれないね。

 特にムジェロは中高速で左右に切り返すコーナーが多いから、カタルーニャより体力的にきついレイアウトなんだよ。本来こういうレイアウトがヤマハにとっては唯一強みを発揮できる生命線ともいうべきところなのに、結果的にそこを捨ててしまったのかな……。

--でもムジェロで事前テストをやったわけですから、その辺りも検証済みなのではないですか?

 仰る通り。でもそこがプライベートテストの危ういところで、他に速いマシンが走っているわけでもないから比較対象がないなかで評価をするのは難しいんだよ。トラックコンディションに左右されるからタイムだけでは正確な評価指標とは言えないしね。

--ところで、ライダーマーケットに動きがあったようで、この間引退を表明したアレイシ・エスパルガロ選手の後任にホルヘ・マルティン選手が決まったようです。そしてドゥカティファクトリーの残るシートはマルク・マルケスが勝ち取りましたね。

 僕がドゥカティの首脳だったら、今回のレース結果だけでバスティアニーニ選手に決めるけどね。チーム内のパワーバランスとか考えたら、セカンドライダーとしてはベストな選択だと思っていたよ。

 現役時代のバレンティーノ・ロッシもセカンドライダーに関しては注文がうるさくて、将来的に自分を脅かす存在は絶対にノーだったからね。ケーシー・ストーナーなんかも候補に挙がっていたんだけどね。

--でも最新ファクトリーマシンじゃなきゃ嫌だとか、プラマックはありえないとか言っていた御仁もいますが、一方プラマックはヤマハが接触しているというような噂もあって、いろいろな絡みからどこも難しい選択を迫られているようですね。

 そういうこと!! レースへの関心が高まるように、アッと驚くような展開があるといいね。

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みんなのコメント

9件
  • xxx********
    御意見番の記事の内容初めて読んだが・・・
    感想は・・・普通。
    いたって普通の御意見。
    何も特別な事も無い。
    これで誰に意見するの?
    恥ずかしくないのか?
    御意見番とか言われて。。。
  • tes********
    数年前まではロッシやロレンソが駆るM1がストレートの終わりでホンダやドゥカティに追いつかれても、コーナーセクションでどんどん差を広げていくという痺れるシーンを見てさすがコーナリングのヤマハと思ったのが懐かしい。今や全方位に強いドゥカティの前では、コーナリングなら負けないとかエンジンのパワーならとかでは太刀打ちできない状況になってしまったね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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