2016年10月13日、新型インプレッサの発表会が行なわれ、正式にデビューした。この発表会までの経過を見ると、4月20日に北米仕様の紹介、7月26日に国内仕様車の情報を公開し、新世代のSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)の詳細も明らかにした。そして9月上旬に、ナンバー取得前段階のプロトタイプ試乗会がクローズドコースで行なわれている。
半年がかりのメディア展開を行ない、9月1日から販売店で受注を開始。そして10月13日に正式発表し、10月25日から2.0Lモデルの発売を開始する。1.6Lモデルは年末発売の予定だ。なお、1.6Lモデルは現時点では型式認証取得前で、2.0Lモデルはスポーツ(5ドア・ハッチバック)のFFがGT6型、AWDがGT7型、G4(セダン)のFFがGK6型、AWDがGK7型となっている。
車種はセダンが「G4」、5ドア・ハッチバックが「スポーツ」と従来通りの名称で、グレードは、1.6i-L(FF/AWD)、2.0i-L(FF/AWD)、2.0i-S(FF/AWD)という構成だ。ボディ色は7色となっている。
■商品力の向上とボディサイズのアップ
新型インプレッサの特徴は、スバルの新世代商品と位置付けられ、SGPの採用、1.6L、2.0Lエンジンともに事実上新開発のエンジン採用、大幅改良されたリニアトロニックCVTの採用、全車にアイサイトver3、歩行者保護エアバッグを標準装備するなど、従来型より商品力を高め、デザインテーマであるダイナミック×ソリッドと呼ばれるデザイン・テーマを採用している。
新型インプレッサは、全長4460mm(G4は4625mm)、全幅1775mm、全高1480mm(G4は1455mm)、ホイールベース2670mmとグローバルCセグメントとして企画されたことを示すボディサイズとなっている。従来型に比べると、全長で約40mm延長され、全幅は35mm拡大、ホイールベースは25mm伸ばされている。ただ5.3mの最小回転半径は従来通りとなっている。
■SGP スバル・グローバル・プラットフォームと骨格
スバルの新型プラットフォームは以前からインプレッサに最初の採用をするのが通例で、今回もスバルの新開発プラットフォーム(SGP)が最初にインプレッサに採用されることになった。
SGPの先行開発は2012年頃に開始されており、フォルクスワーゲン・グループのMQB戦略にやや遅れ、トヨタのTNGAとほぼ同時期に研究開発が開始されていることがわかる。いずれのプラットフォームも次世代のクルマの基盤となる役割を持つが、当然ながらフォルクスワーゲンMQBは多数の量産車種をカバーする厳密なモジュラー・プラットフォームとなっているのが特徴だ。また、トヨタTNGAはC/Dセグメントをカバーし、さらにトヨタとしての新たな走りの革新を担う役割を持つ。
しかしスバルは車種展開が少ないため、インプレッサ、フォレスター、レガシィ、つまりC/Dセグメントをカバーするフレキシビリティを与えられ、ハイブリッド、EV化に要素も盛り込みつつも、走りの質感や運動性能、衝突安全性能でヨーロッパ車を凌駕するレベルを狙うという使命を持っている。
つまり最新のモジュール設計としながら、運動性能やハンドリング特性と衝突安全性能にこだわることに開発の力点が置かれているのがSGPの大きな特徴なのだ。衝突安全性能に関しては今後10年間で新たに追加される衝突安全基準をクリアできるレベルに仕上げられており、それだけにキャビンの強度アップと、衝突エネルギー吸収性能を高めている。
そのため新たにホットプレス材の加工設備を導入。さらに北米仕様はBピラーにテーラーロールブランク(可変差厚鋼板+ホットプレス)を採用するなど、ボディ骨格の革新も行なわれている。
■動的質感の向上のために
運動性能やハンドリング特性については、性能レベルを高めるだけでなくドライバーが感じる官能性能にこだわり、特殊なテスト&計測システムを計測器メーカーと共同開発し、これを駆使して設計に反映するなど、珍しい取り組みを行なっている。
プラットフォームとボディ骨格は、剛性の連続性を重視し、さらにサスペンションなどの入力が集中しやすいサブフレーム、サブフレームとボディの結合点などの局部剛性を高めること、振動・騒音が発生しにくいボディとするなど、ボディ造りを従来よりはるかに高いレベルに引き上げていることは特筆できる。
ボディでの高張力鋼板の使用比率は従来の45%~55%向上。147MPaのホットプレス材は7%使用している。主要な骨格は断面の拡大とストレート形状にすることで、軽量さと高強度、高エネルギー吸収性能を高めている。フまたフロアボディ部はスポット溶接のピッチ短縮と構造用接着剤を新採用し、ボディの微小な変形を抑えるようにしている。
また全面衝突時にはエンジンは落下して床下に滑り込む方式に変わりはないが、プロペラシャフトの衝突時の収縮ストロークを増大させ、エネルギー吸収性を向上させている。
剛性面では、フロントのボディ曲げ剛性は90%向上、フロント・サスペンション剛性は70%向上、ボディねじり剛性は70%、リヤ・サブフレーム剛性は100%向上と、従来に比べて圧倒的な剛性向上を果たしており、これが運動性能やハンドリングの質感向上に直結しているのだ。
■デザインとパッケージ
新型インプレッサから、スバルのデザインテーマとなった「ダイナミック×ソリッド」が採用されている。これは躍動感と硬質な塊感を一体化させたデザインという意味で、今後のスバル車でもこのテーマの下でデザインされ、統一性を持たせるという。
新型インプレッサは、この「ダイナミック×ソリッド」のテーマの下で「スポーティ&アドバンス」をコンセプトとし、機能性とエモーショナルさを両立させたという。
基本的なプロポーションは、キャビンフォワードによるビッグキャビンで、5ドア・ハッチバックはロングルーフ・デザインだ。言い換えれば、インプレッサはキャビンスペース、機能が最優先されているのだ。そして、セダンのビッグキャビン、5ドア・ハッチバックのロングルーフを目立たせないようにデザイン処理されている。ただ見た目の印象ではフロントやサイドのライン、面の処理は過剰で煩雑感が感じられる。
その一方で、エクステリア、インテリアの質感を大幅に高めることも目標とされ、例えばドア開口部、Bピラー面、ドア下端の板金部分までデザイン処理を加えるなど従来になかったディテールへの配慮も採用されている。
キャビンのパッケージングは、リヤ席も含め大人がゆったりとできるスペースを確保。もちろんアメリカ人の体型に合わせたスペースとなっているため、日本人にはクラスの標準を上回る十分なスペースとしている。
インテリアのデザイン処理は、インスツルメントパネル部は左右のドア面まで連続する伸びやかなデザイン処理で、広がり感を強調している。またインスツルメントパネルやドアトリムは、上級車なみのソフト樹脂素材とステッチ処理を採り入れ、一クラス上の上質感を実現している。
ラゲッジ・スペースは、セダン、5ドア・ハッチバックともに開口部を大幅に拡大し、積載のしやすさを向上させ、ゴルフバッグは5ドア・ハッチバックは3個、セダンは4個が収納できる。
■エンジン、トランスミッション
新型インプレッサに搭載されるエンジンは、FB16型、FB20型と従来から名称に変更はないが、エンジンは大幅に刷新され、運動部品の軽量化と剛性の向上を図り、事実上、新型エンジンとなっている。エンジン内部の各部の軽量化により、エンジン重量は従来より12kgも軽量になっている。また内部部品の軽量化により、吹け上がりレスポンスも大幅に向上している。
2.0Lエンジンの大きな変更点はサイドフィード・ソレノイド・インジェクター式の200bar直噴となり、レギュラーガソリン仕様で圧縮比は12.5に高められている。1.6Lエンジンは従来通りマニホールド噴射で、圧縮比は11.0。1.6LはEGRクーラー追加などにより燃費を向上させている。
いずれのエンジンもカムシャフトは吸気中間ロック付きデュアル可変バルブタイミング機構を備え、そのため部分的にアトキンソンサイクル運転も行なうようになっている。また吸気マニホールドには従来通りTGV(タンブルジェネレート・バルブ)を装備し、低負荷での燃焼速度の確保と高負荷域での出力を両立している。
1.6Lのボア・ストロークは78.8mm×82.0mm、2.0Lは84.0mm×90.0mm。出力は1.6Lが115ps/148Nm、2.0Lが154ps/196Nm。JC08モード燃費は、1.6LのFFが18.2km/L、AWDが17.0km/L、2.0Lモデルは2.0iLが17.0km/L、AWDが16.8km/L、18インチタイヤ+16インチブレーキを装備する2.0iSのFFが16.0km/L、AWDが15.8km/Lとなっている。
トランスミッションは全モデルがリニアトロニックCVTで統一されている。改良型CVTは、Luk社と共同開発することで従来よりピッチを10%短縮した新型チェーンを採用。この結果、変速比幅は従来の6.3から7.03に拡大され、最新の多段ATには劣るものの6速AT、7速DCTを上回るワイドなギヤ比となっている。もちろん7速マニュアルモードも装備し、多段ギヤのようにアクセルの踏み込みが大きいときにはオートステップ変速も採用している。オートステップ変速の採用は加速感とエンジン音を一体化させ、爽快な加速感を実現している。
CVT本体ではフロンデフ、トルクコンバーターの軽量化などにより、回転レスポンスの向上も図られている。
■シャシー、サスペンション
サスペンションはフロントがストラット式、リヤがダブルウイッシュボーン式に変化はないが、細部は大幅な見直しを受けている。
まずフロントは、クロスメンバーの構造と、取り付け法を改良して剛性を高め、ストラットのキングピン軸を外出しすることで、ホイールセンター部でのキングピン・オフセット量を15%縮小。結果的に接地面ではマイナス・オフセットとなり、外乱に強いジオメトリーとしている。キャスター角は従来よりわずかに低減させ5.5度となっている。
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