そんなにたくさん売れたわけじゃない。でも、何年経ってもみんなが覚えている……そんなクルマを取り上げるこの企画。今回は時代先取りし過ぎのWiLLサイファ。コンセプトだけならもしやテスラ超えかも!?
※本稿は2024年7月のものです
文:小沢コージ/写真:茂呂幸正
初出:『ベストカー』2024年8月10日号
[テスラ超え]の機能!! トヨタ[WiLL サイファ]は時代先取りしすぎ
■世が世ならテスラを超えてたかも?
2002年から2005年に販売されていたトヨタ WiLL サイファ
2020年代の今、この新車コンセプトがあったら一体どうなっていたんだろう? そう思わずにいられないのがトヨタ WiLLサイファだ。
知る人ぞ知る20年前の異業種合同プロジェクトから生まれた面白カー。トヨタ、アサヒビール、花王、松下電器(当時)、近畿日本ツーリストほか国内7社が集まり、いろいろなWiLLプロダクトが作られた。
ただし第3弾サイファはかぼちゃの馬車をイメージした第1弾Vi、ステルス戦闘機的だった第2弾VSとはひと味違っていた。
自動車専業とは思えない奇抜デザインは変わらずだが、もうひとつ開発テーマがあり、それはネットワーク社会とクルマが融合する「サイバーカプセル」であること。まさにイマドキITコネクティッドカーの先取りだったのだ。車名のサイファもサイバーとフェートン(馬車)の造語だしさ。
具体的にはトヨタが開発中のテレマティクスサービスG-BOOKを通信機ごと全車搭載。ただし今のネット回線とは違い、ガラケー的接続で容量は限られ、サービスも専用ナビでの渋滞、観光、目的地情報の受信やウェブメールの送受信、盗難追跡ができるくらい。しかし時代先取り度は凄く、ある意味テスラ超えだ。
とはいえ今やG-BOOKは最新Tコネクトが登場して、2022年にサービス終了。サイファのG-BOOKナビは電源こそ立ち上がるが、どこにも繋がらない。ってか繋がってもスマホより遅くて意味がない。ただし、残ってる地図情報を使ってのナビ検索はできる。
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■中身はヴィッツなのでパーツ供給も問題ナシ!
今回の87psの1.3L、FFでも1トン以下ゆえ普通に走るが、さらに105psの1.5L、4WDモデルもあるが微妙に高くてタマ少なめ
なにより面白カーとしての実力は充分だ。骨格は初代ヴィッツで、しかも2005年まで作られていたモデルなので装備はモダン。イマドキの先進安全装備こそないがパワステ、パワーウィンドウ、キーレスエントリーはもちろん、デュアルエアバッグ、ブレーキアシストまで普通に付く。
そしてデザインテーマたるディスプレイ一体型ヘルメットどおりの未来派エクステリアが凄い。
一瞬メインがどこかわからない縦4連ライトは爬虫類的で、全体のヘルメットフォルムもSF映画もビックリの出来。それでいてサイズはきっちり全長4m以下どころか3.7m切りの5ナンバーサイズなので超扱いやすい。
いまだ映画ブレードランナーに出てくるような近未来カーやオールステンレスのデロリアンが欲しい人は多いと思うが、これぞ世界で最も手軽で安心なSFマシン。もちろんあれほど異様ではないけど。
インテリアも素材感は初代ヴィッツの延長で全面ハードパッドで無難。ステアリングもウレタンだし。
ただシフト回りを除きデザインはほぼオリジナルでWiLLバッジの入ったステアリングや半円センターメーター、空調3連ダイヤルが左にまとめられ、丸型大型G-BOOKナビは斬新。
ほどよいアニメ感があり、プレミアムではないけどほぼ20年経た今でも樹脂パネルにヒビ割れはなく、テカテカした生地のシートもほつれやヘタりは一切ない。さすがはトヨタ!
なによりトータル3万台以上売られた実績や発売からほぼ20年目の古すぎず新しすぎずのタイミングもあって車両価格は底値。今回乗った最終年式の距離4.5万キロの上物がたったの27万円。思わず小沢も「駐車場が空いてれば買っちゃおうか」と思ったほど。超手軽に買える未来かもよ。
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■WiLL サイファ伝説1:あの頃スマホがあれば……時代先取りのG-BOOK
電源は入るがどこにも繋がらないというのがまた哀愁
さほど流行らなかったトヨタG-BOOK。それもそのはずガラケーiモード程度の通信速度やサービスで専用ナビに渋滞、観光、目的地情報が受信できる程度。今のスマホのインターネット検索の利便性とは雲泥の差があった。
だがもっと囲い込みせずに全メーカー共同で車両ITサービスをやってたら? もしやテスラやアップルに勝てたかも!?
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■WiLL サイファ伝説2:約3年間で3万台超え! 人気のWiLLは今が底値
今がお買い得時。懐かしい気持ちに戻りたい、あの頃に戻りたい、そんなあなたにおすすめの一台
国内累計3万台以上とVi、VSに続くトヨタWiLL3連作の中では最も売れたサイファ。ヘンテコキュートなサイバーヘルメットデザインや扱いやすいサイズもよかったが全車G-BOOK標準装備の利点もウケたのか?
そして今通信こそできないがナビは使え、なにより20年落ち前後の底値がゆえナンバーなし上物が20万円台からと激安! こりゃいいかも?
●小沢コージ氏の評価
・タイムスリップ度:★★★★
・レア度:★★
・お金かかりそう度:★
・乗って楽しい度:★★★
●トヨタ WiLL サイファ 懐かしスペック
・カテゴリー:コンパクト5ドアハッチバック
・全長×全幅×全高:3695×1675×1535mm
・ホイールベース:2370mm
・車両重量:990kg
・エンジン:1.3L直4 DOHC横置き
・最高出力/最大トルク:87ps/12.3kgm
・ギアボックス:4速AT
・駆動方式:FF
・サスペンション:前=マクファーソン式 後=トーションビーム
・国内累計販売台数:3万1856台
・テーマ:ディスプレイ一体型ヘルメット
【画像ギャラリー】あの頃は企業もまだまだ挑戦的だった!! 異業種コラボから生まれたトヨタ WiLL サイファ(18枚)
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みんなのコメント
そういった家具が持ってる懐かしいような未来のような
不思議な魅力がある