恋のみずみずしさを詰め込んだ甘くてほろ苦い青春ドラマ『リコリス・ピザ』

　ポール・トーマス・アンダーソンの長編9作目『リコリス・ピザ』。1970年代のハリウッド近郊、サンフェルナンド・バレーを舞台に、カメラマンアシスタントのアラナと高校生ゲイリーの恋模様をみずみずしく描いた青春ドラマです。

　アラナ役に抜擢されたアラナ・ハイムは、姉二人と結成したバンド“ハイム”でグラミー賞最優秀新人賞にノミネートされ、2013年のフジロック・フェスティバルにも出演した若き才人。姉妹の母ドナはPTA監督の小学校時代の美術教師だったというから驚きです。そしてゲイリーを演じるのは、故フィリップ・シーモア・ホフマンの息子、クーパー・ホフマンです。

　そしてブラッドリー・クーパーが演じるのは、『フラッシュダンス』（1983年）や『バットマン』（1989年）など、多くの名作に携わってきた実在する映画プロデューサー、ジョン・ピーターズ。ショーン・ペン演じる俳優ホールデンも、あの同名俳優がモデルになっていると思われます。

　また、主人公ふたりの感情に寄り添う音楽を手がけたのは英ロックバンド、レディオヘッドのギタリストであるジョニー・グリーンウッド。PTA監督とは今回で5度目のタッグとなります。

　PTA監督作には舞台設定に合わせた旧いクルマが多数登場してきましたが、本作ではショーン・ペンが60年代のトライアンフらしきカスタムバイクで爆走するシーンもあるので要注目。なおブラッドリー・クーパーはちょっとした外出にも大型バイクに乗るほどのバイカーとして知られていて、BMWのHP4やトライアンフのスラクストン、ドゥカティの1199パニガーレなどを所有しているようです。

　歳の差男女の微妙な距離感がリアルに描かれ、散りばめられた当時の音楽やファッション、そして恋の痛みと喜びを全身で表現する主人公たちの姿が胸を打つ『リコリス・ピザ』は、2022年7月1日（金）よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー中です。