Zは日産の大切な財産。新型の造形は日本刀がモチーフ
日本のスポーツカーは業績や時代背景に左右されがち。これまでさまざまなモデルが生まれ、消えていった。そんな中、1969年に1stモデルが登場したフェアレディZは途中に空白期間があったとはいえ、6世代、50年以上にわたり継続してきた。日本車を代表するクルマの1台である。
「Z-CARグラフィティ」新型フェアレディZプロトタイプ登場記念、写真で歴代モデルを見比べる
メーカーは「Zは日産にとって重要なモデル」と語る。だが、そんな想いとは裏腹に扱いは微妙だった。現行モデル(6th)は超ロングライフであると同時に、ここ数年は、ほぼリファインされていない。その境遇に、「日産は本当にZを大事にしているのか?」と疑問を持ったくらいだ。
しかし、5月に発表された日産の事業構造計画「NISSAN NEXT」でその疑問は解決した。内田誠社長兼CEOは「失敗を認め、正しい軌道に修正し、構造改革をいっさいの妥協なく断行する」と語り、工場の閉鎖、生産能力の最適化、アライアンスの強化に加えて「積極的な新車投入」を公言した。具体的には、「今後18カ月の間に12の新型車を投入する」という。その中にZも含まれていた。
そして9月16日、Zプロトタイプが発表された。日産の「◎◎プロトタイプ」は量産へのプロローグを意味する。商品企画を担当する田村宏志チーフプロダクトスペシャリスト(CPS)は「ほぼこの姿で量産化します。自信がなければ、このタイミングでお披露目しません」と語る。
エクステリアの第一印象は「ひと目でZとわかる」と「懐かしいのに新しい」だ。 Aピラーやルーフラインから推測すると現行Z34型の基本骨格を踏襲していると推測できるが、日本刀をイメージしたという、引き締まったプロポーションが目を引く。フロントのフード形状やティアドロップ形状のヘッドランプは1st(S30型)、リアのランプ回りは4th(Z32型)など、歴代モデルの特徴が盛り込まれている。最新の日産車には「Vモーショングリル」、「ブーメランシグネチャー」といった共通のモチーフが採用されるが、新型Zプロトタイプにそれはない。「Zらしさ」を重視したためだ。
シフトアップインジケーターがレーシー感覚を訴求!
インテリアは先進性を全面的にアピールしたデザインを採用。横基調のインパネ回りは現行モデルよりも伸びやかな印象だ。しかしリーフ用を流用したように見えるインフォテイメントやダイヤル式空調コントロールは少々スマートさに欠ける。このあたりの「ちょっと足りない」感じは「絶壁インパネ」といわれた2nd/3rdモデルを受け継いだのか!?
メーターは12.3インチのフルデジタルディスプレイで、中央にタコメーターをレイアウト。針が真上(7000rpm)を指すと同時にシフトアップインジケーターが左右から点滅する演出は、レーシングカーからのフィードバックだ。インパネ上部には歴代Zでおなじみの3連メーターを継承。ステアリング右側にはACCの操作スイッチが確認できるなど、運転支援デバイスにも抜かりはない。
期待のV6ツインターボ! 発売は2021年末!?
メカニズムは今回、V6ツインターボエンジンと6速MT以外の詳細は未公表。タコメーターのレッドゾーン(7000rpm)や海外で400Zのネーミングが商用登録された点などから推測すると、スカイライン400Rに搭載のV6・3リッターツインターボ、VR30DDTT型(405ps/475Nm)を積むのか。
このエンジンと6速MTの組み合わせは初となる。田村CPSが「絶対にMTでなければいけないと思いました」と語るように、速さを追求するよりも、自分で操る歓び・官能性を重視しているようだ。多くのユーザーにMTを受け入れてもらうために、シフトレバー右側にはシンクロレブコントロールのスイッチが確認できる。
プラットフォームは、現行FM型のアップデート版だろう。田村CPSの「素で勝負できるクルマ」、「GT-RがモビルスーツならZはダンスパートナー」のコメントから推測すると、制御系で対応するのではなく、車体の基本となる部分で大掛かりな変更が行われているはず。今回のZプロトタイプには前255/45R19、リア285/35R19サイズのダンロップSPスポーツMAXXと軽量アルミホイール、ホイールからチラッと見えるブレーキはGT-R(R35)用ブレンボが奢られていた。ただし、これはプロトタイプとしての演出だろう。
肝心な量産モデルはいつ登場するのか? 「今後18カ月の間に」を信じれば、2021年の東京モーターショーで量産モデルを世界初公開、年内に正式発売……というのが自然な流れだろう。正式デビューを期待して待とう!
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