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ボルボ最速の加速力 ボルボS60 T8ツインエンジンに試乗 PHEV 303ps+87ps

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ボルボ最速の加速力 ボルボS60 T8ツインエンジンに試乗 PHEV 303ps+87ps

控えめなボディにボルボ最速の加速力

text:Lawrence Allan(ローレンス・アラン)translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
ボルボが、控えめなアピアランスを保ったパフォーマンス・サルーンを設定した。しかも電動化技術の導入が加速する中で、他も追従したくなるようなパワートレインの構成となっている。

【画像】ボルボS60とV60、S90、V90 全107枚

S60 T8ツインエンジンは、ボルボ量産モデルの中で最も鋭い加速性能を持つ。だがドイツ勢とは異なり、大きなウィングも広げられたフェンダーも、幅広のエアインテークも備わっていない。マフラーカッターは大きいが、フラップ付きの4本出しではない。リアエンドにT8のエンブレムが付くだけだ。

控えめなデザインだから、一部の読者は興味が湧かないかもしれない。ボルボが目指しているのはBMW M340iの顧客を奪うことではないから、それで問題ないのだろう。大きなサウンドを響かせたり、派手なコーナリング姿勢は必要としない、大人なドライバーがターゲット。

このボルボが「ツインエンジン」と呼ぶ、T8のシステムは既に何度か紹介している。90シリーズやXC60でも、その素晴らしさはわれわれも理解している。

念のため確認すると、2.0Lの4気筒ガソリンエンジンは、ターボチャージャーとスーパーチャージャーによって加給される。トランスミッションは8速ATで、前輪を駆動。さらにプラグイン・ハイブリッドでもあり、後輪駆動用に87psのパワーを持つモーターを搭載する。複雑なパワートレインだ。

2019年仕様のT8には、従来よりもやや容量が大きくなった11.8kWhのリチウムイオン電池を搭載。ボルボによれば、48kmの距離を電気の力だけで走行が可能だという。

EVのようにスムーズなハイブリッド

ボンネットの内側は複雑だが、運転は簡単だ。昨今の多くのPHEVと同様に、いちいちドライブモードの確認は不要。スイッチを入れて起動させてアクセルを踏めば、システムが自動的に最大効率が得られる状態を選択しながら走り出す。

もちろんドライバーが任意に選ぶことも可能。電気モーターを常時動かし4輪駆動状態を保つモードや、レスポンスはやや劣るが燃料の消費量を最小限にするエコモード、逆に燃料をふんだんに燃やすパワーモードなどが備わる。

必要なら、駆動用モーターを完全に切り充電を優先させるモードも備わっている。色々試してみたが、標準のハイブリッドモードが多くの場面で一番バランスが取れているようだった。

ボルボはジーリーホールディング傘下での資金力を活かし、ハイブリッドの開発を数年に渡って進めてきた。その結果、都市部や郊外を穏やかに流している限り、純粋なEVのようにスムーズに走る。もしエンジンがスタートしてもスロットルを穏やかに踏んでいる限り、その存在はほとんど気づかないレベル。

EVモードとして125km/hまで加速が可能だが、BMW 330eよりもS60 T8の方が比較的エンジンは始動しやすい。ゼロ・エミッションで走るには丁寧なアクセルワークが必要ではある。

パフォーマンス・サルーンだと冒頭で触れたが、紙面上のスペックは悪くない。T8より安価なBMW 330eやメルセデス・ベンツC300eと比較すると、直線加速は優れている。0-100km/h加速に要する時間は4.6秒でしかない。

ダイナミクス性能と快適性とのバランス

充分に速く感じられる加速力だが、ドライバーが必要と感じた時に、常に満足できる加速力が得られるわけでもないのだ。ハイブリッドモードで走っていて急にアクセルを踏んでも、環境に優しいシステムが積極的な設定を目覚めさせるまでに、数秒のタメがある。

しかも4気筒エンジンは、回転数が高まっても比較的手前でシフトアップしてしまい、工業的なエンジンノイズが車内に響いてくる。T8としては従来と変わらない振る舞いではある。とはいえS60の場合、目覚めたパワーをしっかり扱いきれるシャシー性能を得ていることが特徴だ。

ボルボによればS60のサスペンション設定は、兄弟モデルのV60とは異なるとのこと。高まるSUV人気の中で、4ドアサルーンを購入する層はいわゆる走ることが好きなドライバー、という傾向があるためだという。

素晴らしいことに、スポーティな設定を得たシャシーは、ダイナミクス性能と快適性とがほどよくバランスしている。柔らかさとの引き換えに落ち着きが備わり、操縦する自信の湧く正確な身のこなしを獲得。

ステアリングも他のボルボ製モデルよりクイックで、手応えも優れている。クルージング時では穏やかにステアリングを握っていられる、クリーンなフィーリングも備えている。

サスペンションは衝撃吸収性に優れており、路面との設置感も従来よりは高く、19インチホイールでも不都合は感じられなかった。パフォーマンス・サルーンとしての資質を高めつつ、S60を日常的に利用することに悪影響を与えていない。

ただし、操舵感には常に人工的なところがある。コーナリングバランスは自然で落ち着いているが、楽しさに溢れているわけでもない。

PHEVとしての実力に疑問はない

ボルボS60 T8ツインエンジンは、BMWやメルセデスAMGと正面勝負をするつもりはないはず。スパイスが効いているが、足まわりは柔らかい方だし、ハイブリッドシステムの重量も軽くない。ポールスター社によるオーリンズ製ダンパーも間もなく選べるようになるらしいから、期待したいところではある。

いまのところS60は速く、快適で完成度も高いが、従来的な評価でのパフォーマンス・サルーンやドライバーズカーとは呼びにくい。パワートレインも興奮を誘う走りのためというより、実用性の高さや効率性に振った設定だ。

だが職場や自宅で充電が可能な人にとって、実力の高さに疑問はない。ガソリンエンジン以上にスムーズな走りと優れた燃費を持ちつつ、いざとなれば相当な運動神経も備えている。完璧に仕上げられた北欧らしい落ち着きを持つ車内には、大人4名が快適に過ごせる空間が用意されている。

エクステリアデザインもライバルよりカッコ良いと、わたしは感じている。同等のハイブリッド・システムを備えるライバルモデルと比較すれば、明確にS60の強みが見えてくるだろう。そうせずとも、少なくとも第一印象は上々だ。

ボルボS60 T8ツインエンジンのスペック

価格:4万9805ポンド(662万円)
全長:4761mm
全幅:1850mm
全高:1437mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:4.6秒
燃費:43.4-62.4km/L(WLTP)
CO2排出量:39g/km(WLTP)
乾燥重量:1960kg
パワートレイン:直列4気筒1950ccターボチャージャー+スーパーチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:303ps(ガソリンエンジン)+87ps(電気モーター)
最大トルク:40.7kg-m/1800-4800rpm
ギアボックス:8速オートマティック

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