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池沢早人師が愛したクルマたち『サーキットの狼II』とその後【番外編3:サーキットの狼ミーティング】

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池沢早人師が愛したクルマたち『サーキットの狼II』とその後【番外編3:サーキットの狼ミーティング】

サーキットの狼ミーティング in トヨタ博物館 2020.2.9

2月9日、トヨタ博物館で開催され大盛況を呈した「サーキットの狼ミーティング」。作者である池沢早人師先生のトークショーと共に特設駐車場では同作品に登場した47台のスーパーカーが集結しファンたちを魅了した。広大な駐車場を舞台に居並ぶ名車たちは、1970年代を席巻したスーパーカーブームの主役であり、数々の伝説は今もなお自動車ファンによって伝承され続けている。

池沢早人師が愛したクルマたち『サーキットの狼II』とその後【番外編3:サーキットの狼ミーティング】

昭和、平成、令和になっても色褪せぬ70年代スーパーカー

イベントレポートの3回目となる今回は、参加した希少なスーパーカーを厳選し、『サーキットの狼』の作者である池沢早人師先生と共に振り返ってみたい。なお、本文で紹介しきれなかったスーパーカーたちの一部は、本記事の「すべての画像を見る」から閲覧できるのでそちらもご覧頂きたい。約半世紀の時を経ても輝きを失うことのない名車たち。その伝説が今、蘇る!

スーパーカーの草分け的存在でもある強烈な存在感!

「ランボルギーニ ミウラS」

現在のオーナーである石川さんが、憧れの「ランボルギーニ ミウラSを手に入れたのが2001年。既に20年近くも手元に置いていることになるのだが、ベストコンディションに仕上げるためには膨大な時間と手間が掛かったという。最近でこそ、ランボルギーニ社から再販パーツがリリースされるようになったが、ボディやエンジン、内装などの再生は並大抵の苦労では成し得ることはできない。石川さんは「コツコツと自分で手を入れ、友人たちのサポートを受けながら8年の歳月を費やしてベストコンディションへと復活させました」と語ってくれた。

新車と見紛うばかりの美しい内装は友人の申し出によりレクサスに採用される上質なレザーを使って再現。作業を施してくれた友人は「ミウラの内装を手掛けてみたい」というボランティアであったが、その手間と仕上がりに驚いた石川さんは「慌ててお礼を手渡しました」と笑う。石川さんは「ミウラを維持するには時間とお金が必要。それを抑えようと思えば、自分でコツコツと作業ができなくては無理だと思います。周囲のサポートも大きな力になっていますし、自分だけではミウラを維持することはできません。本当に友人たちには感謝しています」というように、世界が誇る珠玉の名車はオーナーの情熱と友人たちのサポートによって守られている。

池沢先生(以下:池沢):やっぱりランボルギーニ ミウラはスーパーカーの王様だね。今回のイベントに来てくれたミウラSは本当にコンディションの良い個体で、ここまでの状態を維持するのは並大抵の努力じゃ絶対に無理。だって、新車のミウラでさえ、手間が掛かり過ぎて維持するのが大変そうだったからね。

『サーキットの狼』を連載し始めた頃だから、1975年当時の話だけど、ミウラに乗っていた友人は常にトラブルに泣かされていた。それを見て、大好きだったミウラを「ボクの手には負えないクルマ」として、自分のクルマとしては手に入れることはなかったんだ。

でも、ミウラは大好きなクルマだったから『サーキットの狼』では“飛鳥ミノル”という重要なキャラクターを乗せたし、今でも仲の良い関根さん(編注:GENROW Web連載「池沢早人師に訊くスーパーカーブームの裏側」第10~13回を参照)はイオタに乗る“潮来のオックス”として登場させた。

関根さんはミウラSVを新車で手に入れた1976年から所有し続けてるけど、このクルマとボクの512BBを交換して箱根や伊豆を走りまわった思い出がある。絶好調なクルマだったけど「自分で所有するには手に負えないクルマ」として、乗りたいときだけ交換して楽しんでいたことを思い出したよ(笑)。

今回のイベントに来てくれたオーナーの石川さんは、プロ野球の中日ドラゴンズに所属していたレジェンド、山本 昌さんとラジコン仲間なんだってね。山本さんとはボクも何回かお話しをしたことがあるけど、彼も熱狂的なクルマ好きで、今も黄色のミウラSVに乗っているんだよね。

以前、レアな1/18ダイキャストカーの特別仕様のミウラをプレゼントしたことがあって山本さんからお礼の電話をもらったこともある。何だか世間は狭いよね。特にスーパーカーのオーナーはどこかで繋がっているから面白い。

同じ時代を生き、同じ映画に憧れたオーナーの相棒

「ポルシェ 911T」

会場に佇む1973年式のポルシェ 911T。落ち着いたスレートグレーのボディがクラシカルさを演出するナローポルシェは、オーナーであるHERO英雄さんのこだわりが凝縮されている。その理由は単純明快。このモデルは映画『栄光のル・マン』で主人公を務めるスティーブ・マックイーンが愛車にしていたモデルをリアルに再現していることにある。

同作品の冒頭では細い田舎道を駆け抜け、小さな橋を渡り教会へと向かうシーンがあり、そこに登場しているのが1973年式のポルシェ 911T。劇中で使用されたモデルはマックイーンの愛車と全く同じ仕様として用意され、その違いはフェンダーにクローム製のモールが付いていること。

今回、会場へと駆けつけてくれたHERO英雄さんの愛車は、劇中ではなくマックイーンの愛車を再現したものだという。オーナーであるHERO英雄さんが『栄光のル・マン』に憧れ、遂に手にした名車ポルシェ 911T。素晴らしいコンディションを維持しながら今も現役として活躍している。豊かな人生を飾る最高のパートナーはこれからもHERO英雄さんと共に数々の名シーンを描き続けるに違いない。

池沢:HERO英雄さんの気持ちは痛いほど分かる。ボクも『栄光のル・マン』が大好きで、田舎道を走り教会へと行き付くポルシェ 911と、その後で911のフロントスクリーン越しに「ル・マン」の看板が映し出され、サーキットに到着するシーンは今でも観る度に鳥肌が立つ。

この映画に憧れて「ポルシェ 911に乗ってサーキットに向かい、ポルシェでレースをする」ことがボクの夢だった。そんな夢を叶えるために、ポルシェのカップカーレースにはポルシェ 911で乗り付けた。『栄光のル・マン』で見たシーンを実現できた瞬間だったね。

オーナーさんとは同じ時代を生き、同じ映画に憧れた朋友的なシンパシーを感じちゃう。一般的には「池沢早人師=フェラーリ」ってイメージがあると思うけど、ボクのなかでは「池沢=ポルシェ 911」なんだよね(笑)。

世界で一番好きなレーシングカーも『栄光のル・マン』でマックイーンが乗ったポルシェ 917。もし、この記事を読んでくれている人のなかに『栄光のル・マン』を観ていない人がいたら、絶対に観ることをおすすめする。

40年来の友人、いのうえこーいち氏も参加!

「ディーノ 246GT」

乗り物評論家(自動車ジャーナリスト)として雑誌やメディアで活躍する、いのうえこーいち氏。池沢先生とは40年来の友人であり、イタリアでのランボルギーニ ディアブロ取材を共にした戦友でもあるという。そんないのうえさんは愛車であるディーノ 246GTに乗って会場へと駆けつけてくれた。

既に45年間も維持し続け、今では同氏のアイコンにもなっているディーノは、日常的に使われている“足”としての威厳を放っていた。また、ディーノは「ピッコロ・フェラーリ」、「リトル・フェラーリ」のルーツであり、数々の伝説を背負う特別な存在。『サーキットの狼』の作中では“沖田”の愛車として登場し、今もなお数多くのファンに支持され続けている。

池沢:いのうえさんとは40年来のお付き合いになる。トレードマークになっているハンチング帽とオーバーオールは相変わらずだった(笑)。ボクは漫画家でありながらも、自動車雑誌での仕事が多いので自動車評論家のいのうえさんとお仕事をする機会も多くてね。GENROQの取材でランボルギーニを取材した時もイタリアを一緒に走り回ったことは大切な思い出になっている。

ディアブロSVが発表された時だから、もう25年も前の話になるんだね。でも、当時からディーノに乗っていたいのうえさんをとても身近な存在に感じていたし、人柄も良くて尊敬できる自動車評論家だ。でも、ボクはいのうえさんを自動車評論家ではなく「熱狂的なエンスージアスト」だと思っている。いのうえさんの記事や書籍は単にクルマを評論するのではなく、クルマに対する愛情を感じるんだよね。

『サーキットの狼』では悲運の登場人物として“沖田”を描いたんだけど、短命に終わらせる予定だったから名字しか考えていなかった。短い人生だったエンツォ・フェラーリの息子の名前を付けたこともあって、悲運のディーノが持つイメージを膨らませて沖田の愛車に選んだんだ。

ボクもディーノが大好きで、一度は手に入れたのに不調続きで満足できずに手放してしまったのは今でも悔いが残っている。それに比べて、45年間もディーノ 246GTに乗り続けているいのうえさんを凄く尊敬している。それもコレクションではなく日常の足として使い続けているのは世界中でもいのうえさんだけじゃないのかな。

もし、『サーキットの狼』を描く前にいのうえさんに出逢っていたら“沖田こーいち”って名付けたかもしれない(笑)。今回も自動車評論家ではなくプライベート参加としてイベントに駆けつけてくれた気持ちが嬉しい。これからもディーノと絶妙なコンビで自動車業界を盛り上げください。

自動車文化を凝縮したクルマファンの聖地「トヨタ博物館」

今回、イベントの会場となった「トヨタ博物館」は、日本を代表する自動車メーカーであるトヨタ自動車の創立50周年記念事業のひとつとして1989年に創立された。自動車が100年に一度の変革期を迎える今、その歴史をしっかりと振り返り未来に向けた文化向上を目的とした施設として日本全国から数多くのファンが訪れている。同施設は車両展示の他、レストランやブックカフェ、体験施設も併設されアミューズメントパーク感覚で楽しむことができる。

館内にはトヨタ自動車の製品だけでなく、世界の自動車とクルマ文化を物語る歴史的遺産を数多く所蔵・展示。「クルマ館」では19世紀末のガソリン自動車の誕生から、現在までの歴史を物語る日米欧の代表140台を一望することができる。生活に密着した移動の要となる乗用車を基本に展示し、展示車両のほとんどが走行可能な「動態保存」されているのも大きな見所だ。

昨年「文化館」に新たな展示施設としてオープンした「クルマ文化資料室」には、ポスターや自動車玩具、マスコットなど4000点もの文化的資料が展示され、800台を超えるミニチュアカーと共に閲覧することができる。そのなかにはクルマを題材とした映画や音楽と共に、漫画にフォーカスしたコーナーが設置され、池沢先生の代表作である『サーキットの狼』も展示されている。

REPORT/並木政孝(Masataka NAMIKI)

PHOTO/降旗俊明(Toshiaki FURIHATA)

【MUSEUM DETA】
トヨタ博物館


住所:愛知県長久手市横道41-100

電話:0561-63-5151

開館時間:9:30~17:00(入場受付は16:30まで)

休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)及び年末年始

入場料:大人/1200円 シルバー(65歳以上)/700円 中高生/600円 小学生/400円

駐車場:無料

※公共交通機関の利用:リニモ(東部丘陵線)「芸大通駅(トヨタ博物館前)」下車(1番出口)徒歩約5分

※クルマ利用の場合:名古屋瀬戸道路「長久手IC」より西に400m(東名高速道路日進JCT経由)

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