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月間販売100台以下の「ニッチな小型車」なぜ売り続ける? スズキが軽だけじゃなく小型車に注力する訳

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月間販売100台以下の「ニッチな小型車」なぜ売り続ける? スズキが軽だけじゃなく小型車に注力する訳

■軽自動車市場の競争過熱に危機感

 スズキは軽自動車が中心のメーカーとされますが、小型車も意外に多くラインナップしています。軽乗用車は、軽商用車ベースの「エブリイワゴン」を含めて8車種、小型/普通乗用車は7車種です。
 
 小型/普通乗用車のうち、ミニバンの「ランディ」はトヨタ「ノア」をベースにしたOEM車ですが、そのほかはすべてスズキ製です。

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 2022年におけるスズキの国内販売状況を見ると、総台数は60万2722台。小型/普通車は10万1382台で、国内販売全体の17%を占めました。

 一方、ライバルメーカーとなるダイハツの小型/普通車は、トヨタ「カムリ」のOEM車の「アルティス」を含めて4車種です。そしてダイハツ製の「ブーン」「トール」「ロッキー」は、それぞれ「パッソ」「ルーミー」「ライズ」としてトヨタに供給されています。

 そして2022年におけるダイハツの国内販売台数は57万6185台で、小型/普通車は3万7211台でした。小型/普通車の比率は6%ですから、スズキの17%に比べると、さらに少ないです。

 ちなみに、今のダイハツはトヨタの完全子会社で、国内で販売するのは基本的に軽自動車です。自社で生産する小型車はトヨタに供給するOEM車がメインとなっています。

 小型/普通車はトヨタ、軽自動車はダイハツといった分担ですが、その点でスズキには、ダイハツのような他社との役割分担がないため、小型/普通車にも力を入れられます。

 このあたりの事情について、スズキの販売店は次のようにいいます。

「最近の軽自動車は税金が高くなり、維持費の安さは薄れました。そうなると、軽自動車規格のメリットがいつまで続くかは分かりません。

 また今はホンダや日産も軽自動車に力を入れ、競争が従来以上に激しくなっています。そこでスズキは、ホンダや日産とは逆に、小型車に力を入れるようになりました」

 軽自動車税は、自家用軽乗用車の場合、以前は年額7200円でした。それが2015年4月1日以降に新規検査を受けた車両では、年額1万800円を納めることになり、1.5倍に増税されました。

 その一方で小型/普通車の自動車税は減税されています。2019年10月1日以降に新規登録を受けた排気量が1リッター以下の小型車は、従来の年額2万9500円から2万5000円へ引き下げられています。

 他社の動向も影響を与えています。今の軽自動車の販売1位は、スズキやダイハツではなく、ホンダ「N-BOX」となっており、同車は国内販売の総合1位でもあります。

 日産の軽自動車「ルークス」「デイズ」「サクラ」も売れ行きを伸ばしており、2022年に国内で販売された新車の39%が軽自動車になりました。

 軽自動車市場の競争が過熱していることから、スズキは軽自動車の将来に不安を感じて、小型/普通車に力を入れているというわけです。

 前出の販売店では「今はダウンサイジングの時代といわれますが、実際には軽自動車からコンパクトカーにアップサイジングするユーザーもいて、スズキとしても小型車を取り扱う意味があります」と説明しました。

■販売が少ない「イグニス」「エスクード」なぜ残す?

 小型車にも力を入れるスズキですが、すべてのモデルが堅調に売られているわけではありません。

 2022年にもっとも多く売られたスズキの小型車は、全高が1700mmを上まわるボディにスライドドアを備えた「ソリオ」で、1か月平均登録台数は3466台。ライバル車のトヨタ ルーミーは、発売から約6年を経過しながら1万7436台に達します。

 商品力は2020年に登場したソリオが高いですが、売れ行きはルーミーの約5分の1となっています。

 スズキの小型車の販売2位は「スイフト」です。2022年の1か月平均が2093台で、約半を1.4リッターターボを搭載する「スイフトスポーツ」が占めています。3位は「ジムニーシエラ」で1か月平均が1485台、4位は「クロスビー」で同1026台でした。

 1位から4位以外の小型車は、2022年の1か月平均登録台数が1000台以下です。ランディはノアをベースにしたOEM車だから除くとしても、「イグニス」は1か月平均が166台、「エスクード」は98台と少ないです。

 イグニスとエスクードは、ボディがコンパクトなSUVです。ライバル車はトヨタ「ヤリスクロス」などとなっており、人気のカテゴリーですから、もう少し多く売れても良いでしょう。

 販売が芳しくない理由を販売店に尋ねると、以下のように説明されました。

「今のコンパクトカーでは、ソリオのように車内の広い車種が人気なので、ボディがコンパクトで荷室が狭いイグニスは個性派です。

 またエスクードは、ハイブリッド専用車になって価格が高くなりました。エスクードとイグニスは宣伝もあまり行われず、知名度が低いです」

 イグニスは全長を3700mmに抑えたコンパクトカーで、運転感覚が適度に機敏です。最低地上高は180mmで、悪路のデコボコも乗り越えやすいですが、販売店スタッフが言うように荷室は狭いです。

 しかも全高は1660mm-1690mmですから、立体駐車場を使いにくいというという事情もあるでしょう。

 エスクードは2022年4月からハイブリッド専用車になり、駆動方式は4WDのみ、グレードも1種類に絞られ、価格は297万円。ヤリスクロス(ハイブリッドZ・E-Four)の283万7000円よりも価格が高く設定されています。

 WLTCモード燃費は、エスクードは19.6km/Lですが、ヤリスクロスハイブリッドZ・E-Fourは27.8km/L。エスクードのトランスミッションは6速のAGS(オートギヤシフト)で、以前に比べると改善されましたが、ヤリスクロスハイブリッドに比べると滑らかさに欠けます。

 ソリオとスイフト以外は苦戦しているスズキの小型車ですが、それでも販売を続けているのは、スズキが小型/普通車を1年間に10万台以上登録する目標を掲げているからです。

 イグニスとエスクードを合計すると2022年の登録台数は3000台を上まわり、そこにジムニーシエラとクロスビーを加えると3万台を超えます。

 スズキは海外を中心に販売される小型車を国内に投入することで、毎年10万台以上の小型/普通車を販売しています。

 これらの小型/普通車を扱い慣れていれば、軽自動車だけでは国内販売が成り立たなくなった時でも、迅速にコンパクトな車種へのシフトを進められます。

 つまりイグニスとエスクードのラインナップは、なるべくコストを費やさずに小型車を充実させるにはどうすべきか、国内販売の将来を考えた結果なのです。

 また2022年におけるメーカー別国内販売ランキングは、スズキがトヨタに次ぐ2位でした。仮に小型/普通車の10万台がなければ、スズキの国内順位はダイハツに次ぐ3位になります。スズキの国内市場を固める上でも、小型/普通車は大切な存在なのです。

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