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日産サクラ&三菱eKクロスEV 実の伴うプレミアムに試乗 航続距離180kmEVはズバリ買い?

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日産サクラ&三菱eKクロスEV 実の伴うプレミアムに試乗 航続距離180kmEVはズバリ買い?

THE EV感は敢えて抑えて

日産/三菱の軽乗用ラインナップは両社の協業により開発されたモデルであり、車体骨格を含むハードウェア類を共用した姉妹車として展開される。

【画像】小さな車体に余裕と良質【日産サクラ&三菱eKクロスEVを詳しく見る】 全188枚

この関係はサクラとeKクロスEVにもそのままあてはまるが、既存GVラインナップとの協調についてはスタンスが多少異なるようだ。

サクラの外観はデイズを思わせるものだが、デイズと共用しているのはフロントウインドウくらいで、他のウインドウ、および外板はサクラ専用に起こされている。

にしては「専用感」とでもいうべき際どさがないのが特徴的だ。

これに対して内装はデイズの面影皆無。

モノリス型メーターだけでなく、インパネやドアトリムの造形がまったく異なり、落ち着いた居住まいが演出されている。

一方、eKクロスEVはEV専用加飾を採用するものの、見た目はeKクロスのバリエーション。

インパネなどの内装もeKクロス(eKワゴン/デイズ)と共通したデザインを採用する。

元々、軽乗用最上位に位置するeKワゴンの上位モデルとして開発され、EV追加以前から特別仕立てのプレミアムモデルというキャラ付けでもあり、eK系のフラッグシップの印象が濃い。

なお、プラットフォーム、およびパワートレインなどの主ハードウェアはサスチューニングも含めて両車に共通した設定となっている。

中身は電動車群の上位仕様

搭載するモーターはMM48型。

ノート/ノート・オーラ4WDモデルのリア駆動ユニットに用いられるモーターと同型である。

ただし、パワースペックが異なりノート/ノート・オーラ用は最高出力が50kWだが、サクラ/eKクロスEV用は47kWとなっている。

最大トルクはノート/オーラ用を9.7kg-mも上回る19.9kg-mであり、デチューン版と捉えるのは間違っている。

最高出力の数値は業界自主規制値であり、実力的には最大トルクで図るのが相応だ。

プラットフォームはGV用をベースにEV用の改良を加えたものだが、大きな駆動用バッテリーの積載に応じてリアサスを設計変更。

GVの4WD車用リアサスをベースにした3リンク式を採用している。

また、ブレーキシステムには電子制御型を採用。

回生油圧協調制御ブレーキはEVでは常識的だが、日産のeパワー車が一般的な油圧ブレーキを用いたことを考えるなら、乗用車ミニマムながら技術的には日産電動車群の上位仕様と捉えることもできる。

駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は20kWh。

アウトランダーPHEVとほぼ同容量だが、BEVとしては最小クラスであり、軽量小型の車体を利してもWLTCモード満充電航続距離は180kmでしかなく、日常的に使われるコミューター用途を狙った性能設計である。

良質な動力性能が生む「余裕」

タイムラグほぼゼロの応答性と正確無比のトルク制御性は電動モーターの最大の特徴。

回転上昇に比例して細るトルク特性などの短所もあるが、モーター単体出力に余裕を持たせていれば、EVの動力特性は開発者の思想とセンス次第なのだ。

サクラ/eKクロスEVのドライブフィールは電動車としての良質にこだわったのが特徴。

電動車が得意な低中速域では大トルクを殊更にするわけでもなく、力強さと穏やかさを示す。

電動車が苦手とする高速域でもその印象は大きく変わらない。

速度によるドライバビリティの変化の少なさは電動車の弱点を感じさせず、なおかつ軽乗用とは思えない余裕と良質な動力性能を示した。

もっとも、それはアクセルペダルストロークの7分目くらいまでの印象。

ドライブモードによって異なるが、そこから踏み込んだ時の加速の上乗せは走行速度の影響を受け、80km/hを超える辺りから減少する。

全開で加速させれば電動らしい特性となるが、ふつうの急加速くらいなら全開近く踏み込むこともない。

全開加速でも騒音増もなく、軽乗用ターボ対比でも加速感は余裕だ。

また、100km/h巡航維持時のペダル操作量と頻度もターボ車とは段違い。

流れの速度変化が激しい高速道追い越し車線でも苦もなくついていける。

既存の軽乗用とは段違いといえる程だ。

普通車と比しても「上出来」

軽快さや切れ味を抑えて腰の据わった安定感。

とは言っても高減衰でベタッと路面に貼り付かせるような特性ではない。

操舵時のロール起動が早く、かつロール速度は抑え気味。

ロールしながら緩やかに回頭し、狙いのコーナリングに乗っていく。

定常円旋回時の舵角はやや深めであり、追舵反応も穏やか。

加減速によるラインの変化も自然で、操舵と連携したラインコントロールが容易。

こういった特性なので体感する横Gの変化も穏やか。

ロール少なく横Gの立ち上げが鋭いと乗員は激しく左右に振られやすく、高速直進でも揺すられるような挙動を意識させられるのだが、それがない。

コンパクトクラスと比してもほめられる乗り心地と安心感を備えている。

もちろん、全開加速も含めてエンジン音無しのBEVである。

静粛性も頗る良好。相対的にロードノイズの存在感が高まるが、ボルトマウントのバッテリーケースと電池重量の効果か、耳障りな高周波成分が少なく、これも軽乗用と異なる車格感を生み出している。

動力性能もフットワークも見事に大人味である。

eペダルのエンブレ回生の利きも繋ぎ滑らかで自然。

よく出来すぎて個性希薄といういい方もできるのだが、外連を求めず走りの本質論でグレードアップを図っていたのが印象的だった。

「航続距離180kmEV」は買いか?

航続距離のカタログスペックは180km。

この試乗での車両情報表示による電費はおよそ8km/kWh。

実使用容量を80%で計算すると航続距離は130km。

非効率な運転をしなければ高速巡航でも100kmは問題なし。

得意な市街地も高速も電力消費に差がないのは高気温高湿度の天候でのエアコン負担の影響が大きく、市街地でもちょっと渋滞すると6km/kWh台に落ちる。

さすがにこの航続距離では距離を延ばす用途には厳しく、コミューター用途限定と考えるべきだろう。

しかし、航続距離以外は極めて完成度の高いBEVである。

最高出力が同じ47kWでもターボ車とは動力性能の質が違う。

速いのではない、運転が楽なのだ。

据わりとしなやかさを両立したフットワークも然り。

運転に関わるストレスフリーの度合いは既存の軽乗用と次元違い。

安心楽々は走行性能で最も優先されるべきであり、サクラ/eKクロスEVはBEVの可能性を示した。

ターボ車との価格差は100万円以上。

軽乗用の上位モデルとして選ぶにしても高価過ぎる。

ただ、走りの質についていえば300万円近い価格も納得できる。

形は軽乗用でも質はプレミアムコンパクトと同等以上である。

航続距離の制限が残念ではあるが、実の伴うプレミアムをタウンコミューターに求めるなら投資価値は十分だ。

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