2022年9月11日(日)、アネスト岩田ターンパイク箱根で記念すべきイベントが開催された。そのイベントとは、脊椎損傷による下半身不随や大腿切断により、バイクの操作ができなくなってしまった人たちがツーリングをするというもの。壮大な取り組みを紹介しよう。
文、写真/青山義明 協力/一般社団法人サイドスタンドプロジェクト
障がい者がターンパイクでツーリングってマジか!? 「サイドスタンドプロジェクト」の夢が実現
主催は元2輪WGP王者が代表理事を務める一般社団法人
早朝からパラモトライダーとそのバイク仲間、スポンサー企業関係者、クラウドファンディング出資者、そしてボランティアスタッフと200名を超える参加者が集まった
神奈川県にある「アネスト岩田ターンパイク箱根」で2022年9月11日(日)、「やるぜ!!箱根ターンパイク2022」が開催された。このイベントを主催したのは「一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP)」。このSSPの代表理事を務めているのが青木治親で、2輪ロードレース界のレジェンドライダーとして1990年代から活躍している青木三兄弟の三男である。
その青木兄弟の次男・拓磨は1998年にGPマシンのテスト中の事故によって脊髄を損傷。車いす生活を余儀なくされ、現在はその活動の場を4輪に移し、車いすドライバーとしてさまざまなレースに挑戦をしている。SSPは拓磨にもう一度バイクに乗せる企画を、長男・宣篤ととも実現させたのがきっかけとなり、治親が2019年に立ち上げた。バイク事故などによってバイクを降りざるを得なくなってしまった一般のライダーにもバイクに乗る楽しさを再び感じてもらおうと「パラモトライダー体験走行会」なるイベントを頻繁に開催している。
青木拓磨が再びバイクに乗るために治親が用意したのが、シフト操作を手元で行なえるハンドドライブユニット。手元にレイアウトしたボタンで足元のシフトペダルを動かすアクチュエーターを動かすことで、シフト操作をし、ブーツをビンディングでステップに固定し、太腿部をベルトで締めて固定させることで、下半身が不随であってもバイクの操作が可能となる。
バイクが最も不安定になる動き出しと停止のタイミングでは、ボランティアスタッフがバイクを受け取って支える。これがこのSSPのネーミングの由来である。これにより下半身不随の障がい者でもバイクの乗車体験が可能となる。「パラモトライダー体験走行会」は、サーキットや自動車学校といった場所を使用し、コースを完全閉鎖して開催している。現在では脊椎損傷以外に加え、視覚障がい者にも広く門戸を開いている。
14名のパラモトライダーが往復26kmのコースを走行
SSPの目指すところは実際の公道である箱根ターンパイクでパラモトライダーたちと一緒にツーリングをするというものであった。というのも、事故で障がいを負ってしまったパラモトライダーの多くは、事故後に2輪が乗れないということで2輪免許を返納してしまっている。そのため一般公道でありながらも、占有が可能な箱根ターンパイクならパラモトライダーでもツーリングが可能だ。
SSP設立当初からいつかは箱根ターンパイクで、というのが合言葉として存在していた。できれば10年以内、2030年までには実施したいというのが夢であった。ところが、今年急きょその話が現実的なものとなり、SSPは計画を8年前倒し。この企画のためクラウドファンディングを立ち上げ、この日の開催に至ったのである。
そして集まったパラモトライダーは、SSP側から招待された14名。各パラモトライダーはそれぞれ一人につき9名まで友人を誘って一緒に箱根を走行できるという企画となっている。ルートは箱根ターンパイクの小田原料金所から大観山展望台まで駆け上がり、ここでUターンし再び小田原料金所まで戻ってくる26km。バイクにはSSPのハンドドライブシステムを組み込み、下半身不随でもバイクを操作できるようになっている。
予定のルートを走り切り感動のフィナーレ
パラモトライダーの前後には、先導車と、緊急時用にタンデムでサポートスタッフが乗り込んだ追走車2台がつき、その後ろに友人たちが一緒に走行した
会場に集まった150名におよぶボランティアスタッフは、スタート&ゴール地点でのパラモトライダーの乗せ下ろしや発進&停止のサポート以外に、コースの沿道にもスタンバイし、パラモトライダーたちの走りを見守り、声援を送った。
初秋の好天に恵まれたこの日、小田原料金所近くはまだ残暑が残るイメージだったが、箱根に上がると涼しく、まさにバイク日和。ルートの途中からは、富士山や相模湾もしっかり見渡せる一日となった。
参加したパラモトライダーは「今まで経験のないくらいうれしい出来事。来年以降もまた走りたい」「サーキットとかと違って落ち葉があったりして、いい意味で緊張感もあって楽しかった」「20kmを超える距離なので心配しましたが、走り出してしまったらあっという間で楽しく終わることができました」「こんな日が来るなんて本当に考えもしなかった。あきらめてきたことが実現できる、なんてすばらしい1日なんだろう」とツーリングを終えバイクを降りた参加者たちはその感動を口にしていた。
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みんなのコメント
まるで、非常識とでも言いたげな口振りだな。
青木さん、転倒時は時速50,60キロでした。今のようにエアバッグジャケットがあれば防げたハズなんですが残念です