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タイでもカローラクロス大ブーム!! 迎え撃つホンダが投入した意外な車種とは!?

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タイでもカローラクロス大ブーム!! 迎え撃つホンダが投入した意外な車種とは!?

 タイには、自国量販ブランドはないものの、日本メーカーを中心に多くの自動車メーカーが工場を持ち、東南アジアのマーケット向けの乗用車を生産している。さらにEVの生産などでここのところ注目を集めている。

 そんなタイの街角を多くの日本車が走行している。タイでは販売の約9割が日本メーカー車という状況で、2020年デビューのカローラクロスが人気を集めている。

タイでもカローラクロス大ブーム!! 迎え撃つホンダが投入した意外な車種とは!?

 日本に先行してカローラクロスのGRスポーツが発表されるなどSUV人気を集めているこの国では、トヨタに対抗してホンダや中国、韓国メーカーがSUVを投入してしのぎを削っている。その販売現場をレポートする!

文・写真/小林敦志

■タイでも大ヒットのカローラクロス

タイでは2020年7月にデビューしたトヨタ カローラクロス。日本国内モデルとはフロントフェイスが異なる。写真は日本に先行して登場したGRスポーツモデル

 2022年3月に、およそ3年ぶりにタイの首都バンコクを訪れた。そして、大通りで通り過ぎるクルマを見ているとトヨタカローラクロスがとにかく多く走っていることに驚かされた。日本でも大ヒットしているカローラクロスであるが、ここタイでの大ヒットぶりもハンパではないことになっていた。

 タイでトヨタカローラクロスがデビューしたのは2020年7月となり、これがワールドプレミアにもなった。その後、日本だけでなく、ASEAN諸国、アメリカ、中南米、中国など世界各国でリリースされている。

 タイにおけるカローラクロスは、いわゆる“グローバルフェイス”と筆者は呼んでいるが、広く世界市場で採用される顔つきとなっており、日本仕様とは顔つきが異なっている。

 ちなみに日本仕様の顔つきは、中国での合弁会社のひとつ“広汽豊田(広州トヨタ)”にて生産される、現地ではカローラクロスの兄弟車となる、“鋒蘭達(フロントランダー)”と共通になっている。

 タイの地元事情通によると、「カローラクロスはデビューした時に、タイでヒット間違いなしだと思いました。雨季の道路冠水でも最低地上高が高いので安心ですし、ラゲッジルームが広いことなど使い勝手も良いですからね。とにかくジャストサイズなところが良かったですね」と語ってくれた。

 2017年12月にタイでC-HRがデビューすると、やはり大ヒットとなり、バンコク市内で多数目撃することができた。

 トヨタの現地法人である“トヨタ モーター タイランド”のウエブサイトを見ると、車種ラインナップ紹介のカテゴリーに“SUV”はなく、C-HR、カローラクロスともに“パッセンジャービークル”として、カローラアルティス(セダン)、カムリ、GRスープラなどと同じカテゴリー分けとなっている。

 タイでトップの販売シェアを誇るトヨタだが、都市向けクロスオーバーSUVのラインナップはC-HRとカローラクロスの2台だけとなっており、満を持してC-HRより実用性が高く、地元事情通にいわせれば「サイズが調度よい」とされるカローラクロスが、C-HRを上回る大ヒットとなったようである。

 タイ国内でのカローラクロスは全4グレード設定となり、そのうち3グレードはHEV(ハイブリッド車/残り1グレードは1.8Lガソリン車)となっているので、販売の中心はHEVとなっている。

カローラクロスを猛追するホンダHR-V。日本のヴェゼルにあたる

「ライバルがいないからよく売れているのでは」と思う人も多いかもしれないが、先代では、C-HRと比べるとHEVの設定がなかったこともあり、C-HRに人気で及ばなかったHR-V(日本での初代ヴェゼル)をホンダはタイでラインナップしている。

 そして、タイでは2021年11月に2代目(日本での2代目ヴェゼル)がデビューしており、いまのところ新型HR-Vがカローラクロスを猛追している。

 ちなみにHR-Vは“e:HEV”のみの設定となっている。日産系ではカローラクロスに相当するモデルはラインナップされていない。

 マツダはクロスオーバーSUVを多くラインナップしているのだが、ブランドとしてはトヨタやホンダなどと同列というわけでもなく、消費者の間では“頭ひとつ”上のようなイメージづけとなっており、“感度の良い”都市在住者にマツダブランド全体がよく売れているとのことである。

 筆者は、HR-Vは2代目ではHEVのみのラインナップとなっているし、今後はカローラ クロスとの販売バトルが激しくなっていくのではないかと考えている。

■タイ市場で受け入れられつつある中韓メーカー

ヒョンデ スターリア。タイでの韓国ブランドは大型ミニバンをメインにしている

 ほかに量販ブランドでは韓国系と中国系があるのだが、韓国系では起亜はほぼ大型ミニバンの“カーニバル”に絞り込んでいる。ヒョンデブランドも状況は同じで、スターリアという大型ミニバンをメインにしている。

 “クレタ”という新興国向けクロスオーバーSUVもラインナップしているが、こちらはサイズが小さく、しかもFFのみとなっているのでカローラクロスやHR-Vのライバルとはならないだろう。

 ただ、いままではミニバン一辺倒だったヒョンデが日本メーカーとの真っ向勝負を避けることになるが、クロスオーバーSUVをタイ市場に投入してきた意味は大きいように見える。グローバル市場では多彩なSUVをヒョンデはラインナップしているので、今後タイ市場にもカローラクロスと同クラスのSUVを投入してくる可能性は高い。

 気になるのはやはり中国系の動きである。2014年にタイ市場に中国ブランドとして初めて参入した上海汽車のMGブランドでは、ZSというクロスオーバーSUVがカローラクロスクラスのモデルとされている。

 1.5L直4エンジンを搭載しているのだが、このZSにはBEV(バッテリー電気自動車)となる派生モデル“ZS EV”が2019年よりタイでも発売され、バンコク市内でも多数見かけることができる。

 またZSの上級でカローラクロスよりやや大きい“HS”というモデルもMGはラインナップしているが、こちらは1.5LエンジンベースのPHEV(プラグインハイブリッド車)をラインナップしている。

 前出の事情通に話を聞くと、「日本のみなさんは中国車と聞くと、価格は安いが品質に問題があると思いがちですが、実際に運転してみると日本車とは遜色ない走行性能や品質を持っており、数カ月間乗っていましたが、とくに不満に思う点はありません」としている。

 また「カローラ クロス、HR-VそしてZSとも、一定期間内の値落ちスピードは同じとなってます。そのため、新車価格がカローラ クロスやHR-VよりリーズナブルなZSは、ある年式までは中古車価格が買い得となるので、中古車人気も高くなっています。

 かつてMG車なんかは相手にもされていませんでしたが、いまでは新車でも人気モデルとなっています」と説明してくれた。

 さらに気になるのが2021年に、タイ市場を撤退したGMの生産設備などを買収する形でタイ市場に参入した、GWM(長城汽車)の存在である。ブランド自体2021年から参入したばかりの割には、MGほどではないもののバンコク市内及びその周辺でパラパラと見かけることができた。

 「プロモーションもかねてGWMが街なかを走らせているのかもしれないが、それでもよく見かける」と前出事情通は話すが、街なかでよく見かけることには間違いない。

 GWMも当然BEVをラインナップしているのだが、現状でタイ市場ではコンパクトハッチバックスタイルの“グッドキャット”のみ。それ以外に“ジョリオン”と“ハーバルH6”というクロスオーバーSUVをラインナップしているのだが、いずれも中国車としては珍しいHEVとなっている。

 調べた範囲ではH6はマイルドハイブリッドユニットを搭載しており、GWMではやや世代の古いモデルなのだが、ジョリオンは内燃機関、BEV、FCEV(燃料電池車)などマルチに対応できる、“L.E.M.O.N”と名付けた新世代プラットフォームを採用し、ハイブリッドユニットを搭載している。

 しかも、カローラクロスの最上級グレードが約455万円なのに対し、ジョリオンの最上級グレードの価格は約377万円と80万円ほど安くなっているのである。

 ちなみにMG ZS EVの上級グレードの価格は補助金を差し引くと約386万円になるので、カローラクロスのHEV並みの価格(廉価グレード)でBEVを購入することが可能となっている。

 ジョリオンに話を戻すと計器盤は全面液晶の大型ディスプレイを採用したフルデジタルタイプとなる、シフトは電子制御タイプを採用するなど、見た目ではカローラクロスをしのぐ先進的なものとなっており、質感もひけをとらないものとなっている。

■中韓包囲網が日本車を脅かす?

GWM(長城汽車)ジョリオン。中国車では珍しいHEVとなっている

 BEVでは欧州勢も積極的に市場投入しているが、MG ZS EVの倍以上の価格となり、ターゲットユーザーが確実に異なっている。

 現状ではBEVについては中国で生産して輸入しているとのことだが、2023年からはタイでの現地生産を中国系両ブランドは予定しているとのことなので、日本車にとってはさらに“気になる存在”となっていくようである。

 現状のタイ市場では内燃機関車が販売の中心であり、日本ブランドはその参入の歴史と販売ネットワークなどの差で、販売実績では中国系を寄せ付けない強さを見せているが、現地で話を聞く限りでは確実に中国系が“日本車城”の堀を埋め始めているように見えてならない。

 仮に日本メーカーがBEVのラインナップで巻き返しをはかってきたとしても、今度は価格設定の差が問題となってくるだろう。先日日本国内で正式デビューしたトヨタのクロスオーバーSUVタイプのBEV“bZ4X”の2WDの日本国内価格は600万円。すでにMG ZS EVより220万円ほど高くなっている。

 ただし、業界通は「bZ4XはASEANなど新興国で販売するつもりはないでしょう。あくまで先進国市場向けモデルとなるでしょう」と話してくれた。

 トヨタは2022年3月31日からインドネシアの首都ジャカルタで開催された“IIMS(インドネシア国際モーターショー)2022”において、“キジャン イノーバEVコンセプト”を発表している。“bZ”と名乗っていないところをみると、ASEAN地域でのBEVの展開にはbZ4Xは絡まないように見える。

 とにかく、見た目品質や装備内容、最新トレンドを取り込むスピードでは、すでに中国メーカーの多くは日本メーカーを超えているといっていい状態になっているので、中国車のことを極端に“安かろう、悪かろう”というのは、世界でも日本人ぐらいといっても過言ではない。

 また、現状で話せばタイでも新車の納期遅延は深刻な問題となっている。しかし、中国メーカー車は日本メーカー車に比べると納車は早めとのこと(最新状況では中国国内各地で新型コロナウイルスのパンデミックが発生しているので、とくに現状では中国からの完成車輸入となっているBEVでは今後の行方は不透明)。

 仮に「日本車にはBEVがないし、納期も遅いので」と、たまたま中国メーカー製造のBEVに乗り換えて、「結構いいじゃん」となれば、日本車離れに拍車がかかるかもしれない。

 日本メーカーはタイ市場のこのような、日本メーカーにとっては“そよ風”程度の動きかもしれないが、果たしてリアルタイムでしっかり情報を把握できているのかはおおいに気になるところである。

 現状では8割強という圧倒的販売シェアをタイで持つ日本車であるが、そんなタイでも日本メーカーは着々と追い込まれようとしていると思うことが、考えすぎであって欲しいと願うばかりである。

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