Audi A4
アウディ A4
マセラティ レヴァンテ vs ジャガー Fペイス、ハイパワーSUVの独伊バトル! 【Playback GENROQ 2019】
効能あらたかなマイルドハイブリッド化
2016年の登場から約5年の月日を経て、アウディのミドルセダン/ワゴンであるA4がマイナーチェンジを果たした。そのなかでも話題の中心となるのは、S/RSモデルを除く全てのモデルがマイルドハイブリッド化したことだろう。
システム的には、“たった”12Vのベルトドライブ式モーターと、バッテリーを組み込んだに過ぎない。しかしその乗り味には、これからのアウディの未来を予想させるトピックが、沢山詰まっていた。
「5歳」若返った第一印象
今回試乗したのは、FWDモデルである「A4 35 TFSI advanced」のセダン/ワゴン(アヴァント)モデルと、4WDモデルである「A4 45 TFSI quattro S line」セダンの合計3台。ちなみにこのマイナーチェンジからA4のグレード構成は、「base」「advanced」「S line」の3種類へと改められた。
最初に試乗したのは、FWDモデルの「35 TFSI advanced」。パーキングで出迎えてくれたA4セダンには、どことなく若返った印象を持った。人で言えば5歳くらい若くなった感じだ。
その最たる理由は、真っ赤なボディカラーに映えるフロントバンパー・エアスクープの差し色だが、よく見るとボディ側面からはA4の大きな特徴だったキャラクターラインが消えていた。いや、もう少し正確に言うと、ヘッドライトの目尻からリヤエンドまでスパッと通っていた深い掘りが、2枚のドアの部分から一段下げられている。
ブリスターフェンダーが全車標準へ
これだけで厳粛だった印象が和らぎ、カジュアルに見えるのだからデザインとは面白い。そしてこの変更をするためにアウディは、ボディパネルを作り替えたことになるわけだ。また今回の変更で、全幅を5mm拡大するブリスターフェンダーが全車標準装備となったようだ。とはいってもそれは後付けの安っぽいオーバーフェンダーではなく、フェンダーそのものを張り出させた丁寧な作り。
ここに新しくなったマトリックスヘッドライトと定番グリルを組み合わせることで、その印象を大きく変えることなく、しかし確実な若返りを果たしているのである。
全般的に底上げされた走りの質感
そして肝心な走りも、デザインとトーンを合わせたかのようにフレッシュさが際だっていた。
ちなみに35 TFSIの直列4気筒ターボエンジンは、1.4リッターから2.0リッターへと排気量が拡大された。ピークパワーこそ150psと変わらないが、その発生回転数は5000-6000rpmから3900-6000rpmへと低回転側にワイドレンジ化されており、さらに最大トルクは250Nm/1500-3500rpmから、270Nm/1350-3900rpmへと増やされている。
そしてこのクランクに、前述したBAS(ベルト駆動式オルターネータースターター)が連結されることとなる。この改変は、ベーシックグレードであるFWDモデルの質感を、本当に上手に底上げした。小排気量ターボでトルクを絞り出す必死さがなくなった分、全てに余裕が感じられ、走りが滑らかになった。
この12VのBASが、結構よい仕事をする。
その数字だけを聞けば、これが「環境性能対策への一応のポーズ」だと捉える人もいるかもしれない。しかし駆動抵抗の少ないFWDモデルでは実際に、そのトルクの押し出し感をじわりと体感することができるのだ。
確かな存在感を示すモーターアシスト
BASによるモーターアシストは、街中から峠道までまんべんなく機能する。eブーストと呼べるほどの迫力はないけれど、信号待ちからのゼロスタートでは気持ち良くタイヤを転がし、ワインディングではコーナーの立ち上がりから素早くトルクを立ち上げてターボをアシスト。4気筒ユニットがまさに低回転からトップエンドまで、フラットに心地良く吹き抜けていくのである。
聞けばそのアシストトルクは、A6/A7の48V仕様と同じ60Nmなのだという。ただモーターの回転許容範囲が低く、リチウムイオンバッテリーの容量が小さいために、このトルクを高回転まで持続することができないのだ。
とはいえドライバーは確実にそのトルクを感じ取ることができる上に、100km走行あたり最大0.3リッターの燃料を節約してくれる。
円熟を極めたアシさばき
セダンボディの乗り味は見た目通り、リヤスタビリティの高さに表れた。ターンインでは操舵に対してロール量が少なく、ボディを水平に保ったままノーズをコーナーの内側に入れていく。落ち着きのある、大人っぽい走りが特徴的だ。
対してアヴァントは、若干重心の高さが慣性として働くのか、ほどよくリヤサスを伸ばして軽やかにコーナリングしてくれる。ダンパーやスプリングが必要以上に固められてないから、セダンほどのどっしり感はないが、不整地での乗り心地もきちんと保たれていた。
落ち着きのあるセダンと若々しいアヴァント。A4のメインボリュームであるFWDモデルは、ここに熟成が極まった感じであった。
クワトロの真価、揺るぎなし
こうなるといよいよ都市部などの非降雪地域では、クワトロがステイタス以外の何物でもなくなるのではないか?
しかしそんな安易な考えを吹き飛ばすほどに、「45 TFSI quattro S line」の乗り味は重厚だった。価格が違うと言ってしまえばそれまでだが、お金をかければいいクルマができるのかといえばそうではない。それだけA4のプラットフォームはモジュール(MLB evo)仕立てとは思えないほど基礎がしっかりしており、装備やパワー、そしてトラクションを増すほどにその真価を発揮してくれるのである。
搭載される2.0リッター直噴ターボエンジンは、その最高出力が249ps/5000-6000rpm、最大トルクは370Nm/1600-4500rpmまで高められている。この高出力を受け止めるのはご存じクワトロだが、今回からこれがAWDクラッチ機構付きのウルトラテクノロジータイプとなった。試乗車にはさらにダンピングコントロールシステムの付いたスポーツサスペンションがオプション装着されていた。
重厚かつ濃密なクワトロのトーン
その乗り味は、ひとことゴージャス。4WD化等でおよそ80kg増えた車重はどっしり感へと上手に転化されており、これをダンパーが常に減衰力を可変させながら(オートモード時)、街中からもっちりと支えてくれる。どっしりに、もっちりだ。
BASによるアシストの恩恵は、FWDモデルほどは感じられなかった。注意深くその様子を観察すれば確かにモーターのトルクを感じ取れるのだが、アクセルを踏み込むほどに後輪の押し出し感の方が濃厚になり、その存在感が黒子的になる気がした。
パワーユニットはターボの吹け上がりとSトロニックの切れ感が双方ともややマイルドになった印象を受けたが、出力不足を覚えることはなくどこから踏んでもトルキー。かつシャシーのどっしり感ともトーンがきちんと揃っていた。
センターデフの有無がもたらす変化
ちなみにAWDクラッチ機構を得たことで、A4は伝統のセンターデフと決別することになった。具体的には40:60を基本に連続可変させていた前後のトルク配分は最大で50:50に。もっと言えば通常はFWDベースとなり、必要に応じて後輪にトルクを配分していくという仕組みになった。それもこれも、厳しい環境性能に対応するためである。
となるともはやFWDベースのオンデマンド式クワトロとなんら変わらないのではないか? 実際そのハンドリングからは以前のようなシャープさはなくなっていた。素早くノーズを切れ込ませ、4WDながらも後輪から押し出すようなトラクションで加速していく感じは薄らいだ。
ただ回頭性が薄らいだ分、操縦感には穏やかさが増した。セオリーどおりにブレーキングやアクセルオフでフロント荷重を作っていけば、しなやかな足まわりがタイヤを地面に押しつけて上質な旋回姿勢を見せる。
緻密な制御で姿勢を安定させる4WD技術
その際の4WD制御も緻密だ。制動時にはリヤに微少なトルクをかけて車体を安定させているらしく、姿勢は極めてステイブル。コーナーではアクセルの踏み込み量に対して後輪のトルクをリニアに協調させてトラクションをかけていく。
どうやらここにはフィードフォワード機能(先読み制御)が働いているようなのだが、ドライバーとしては制御に乗らされている感覚はなく、至って自然にアクセルを踏み込んでいける。これ以上の操作性は雪道にでも持っていかない限り精査できないが、少なくともオンロードではFWDから4WDへの移行も感じ取れないほど自然にクワトロの安定性を味わうことができた。
それでも以前のような回頭性を望むなら、あとはA6のようにリヤステアを付けるしかないのではないだろうか。参考までに言うと、S4やRS4といった上級グレードではセンターデフ式が引き続き採用されるという。
唯一残念だったのは・・・
むしろ残念だったのは、インフォテインメントが刷新されなかったことである。メーターナセルにはバーチャルコクピットプラスがインストールされているものの、ダッシュボードの中央にはA6のような二段式の液晶パネルではなく、未だにナビが備え付けられている。最新世代のようなインテリアの美しさを求めるならば、フルモデルチェンジを待つ必要があるのかもしれない。
そう考えると現行のクワトロオーナーは“待ち”を選択してもよいかもしれないが、ともあれ新型には乗ってみて欲しい。意外とその穏やかかつ重厚な乗り味に癒やされてしまうのではないかと思う。そして35 TFSIオーナーは、その洗練ぶりにきっと驚くはずである。
REPORT/山田弘樹(Kouki YAMADA)
PHOTO/峯 竜也(Tatsuya MINE)
【SPECIFICATIONS】
アウディA4セダン 35 TFSI advanced
ボディサイズ:全長4760 全幅1845 全高1410mm
ホイールベース:2825mm
トレッド:前1565 後1550mm
車両重量:1530kg
エンジン:直列4気筒DOHC インタークーラー付ターボ
総排気量:1984cc
圧縮比:11.6
最高出力:110kW(150ps)/3900–6000rpm
最大トルク:270Nm/1350–3900rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:FWD
サスペンション形式:前後ウィッシュボーン
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク
タイヤサイズ:前後225/50R17
燃料消費率(WLTC):13.6km/L
車両本体価格(税込):523万円
アウディA4アヴァント 35 TFSI advanced
ボディサイズ:全長4760 全幅1845 全高1435mm
ホイールベース:2825mm
トレッド:前1565 後1550mm
車両重量:1570kg
エンジン:直列4気筒DOHC インタークーラー付ターボ
総排気量:1984cc
圧縮比:11.6
最高出力:110kW(150ps)/3900–6000rpm
最大トルク:270Nm/1350–3900rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:FWD
サスペンション形式:前後ウィッシュボーン
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク
タイヤサイズ:前後225/50R17
燃料消費率(WLTC):13.6km/L
車両本体価格(税込):552万円
アウディA4セダン 45 TFSI クワトロ S line
ボディサイズ:全長4760 全幅1845 全高1410mm
ホイールベース:2825mm
トレッド:前1565 後1550mm
車両重量:1610kg
エンジン:直列4気筒DOHC インタークーラー付ターボ
総排気量:1984cc
圧縮比:9.6
最高出力:183kW(249ps)/5000–6000rpm
最大トルク:370Nm/1600–4500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後ウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後245/40R18
燃料消費率(WLTC):12.9km/L
車両本体価格(税込):627万円
【問い合わせ】
アウディ コミュニケーション センター
TEL 0120-598-106
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