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2つのキャラを持つ贅沢な「M」──BMW M4カブリオレ・コンペティション試乗記

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2つのキャラを持つ贅沢な「M」──BMW M4カブリオレ・コンペティション試乗記

サッカー、テニス、フィギュアスケート、駅伝……。最近、スポーツを観ていて思うのは、選手の“イケメン化”が著しいこと。昔のスポーツ選手はこんなに小ザッパリしていなかった。とくに変わったのは“髪型”であると思う。みんなカッコよくスタリングしていて、あれだけ激しく動いているのにまったく崩れないのがまた不思議だ。その点、未だ坊主頭がデフォルトの野球は、イケメン度においてやはり一歩遅れをとっている気がする。きっと高校球児だって、風に髪をなびかせたいと思っているに違いない。

そんな最近のイケメンアスリートのようなクルマが「M4カブリオレ」である。450psを発揮する超級のアスリート・カーでありながら、屋根を開ければスカした4座オープンカーに早変わりする。天から2物を与えられたイケメンスポーツカーだ!

今なおスポーツセダンの最右翼──BMW新型3シリーズ公道試乗記

以前、BMW「M」のクーペといえばM3だった。しかし、先代3シリーズから“セダンは3シリーズ、クーペは4シリーズ”、と区別されるようになったため、クーペモデルは「M4」と呼ぶようになった。

今回導入されたカブリオレは日本初導入だ。オープン・モデルは1985年登場の初代M3以来になる。M4カブリオレはこれまで日本未導入であったが、今回初めて日本で販売されることになった。なんと30余年越しの“初(再?)来日”である。

あらためて説明すると、M3/M4はBMWのレース部門開発を担当する「M社」がチューニングしたスポーツカーである。初代M3はツーリングカーレースに出場するためのベース車両として製造されたが、現行M3/M4もサーキットでの走行性能追求を掲げ、エンジンから足まわりまで徹底的に手が入った本気のスポーツセダン/クーペなだ。

M4カブリオレは、M4の中でもっともスパルタンな“コンペティション”がベースだ。搭載する3.0リッター直列6気筒ツインターボ・エンジンは最高出力450ps、最大トルク550Nmを発揮する。カタログ値によれば静止状態から100km/hまでに要する時間は4.3秒で、クーペと僅か0.2秒しか変わらない。フル4シーターのオープンとしては世界最強の1台だ。

モード切り替えで自在に変化するキャラクター

今回試乗したM4カブリオレはツヤ消しレッドの外装に、内装は真っ白なレザーだった。派手なコントラストのカラーは、オープンで乗っていたら「スターか?」と、言いたくなるほどのオーラを放っていて、一般人が乗るにはちょっと気後れしてしまう。なので、まずは閉めたまま乗り込んだ。

コクピットは、センターコンソールが運転席側に傾けられたドライバー・オリエンテッドなしつらえ。眼前にはMモデル専用の丸型4連メーターが並ぶ。速度計の目盛りは330km/hまで刻まれ、ドライバーを“ヤル気”にさせる。スポーツカーには最近主流のデジタルメーターよりアナログメーターの方が似合うと思う。

シフトレバー横には、エンジン特性、サスペンションのダンピング、ステアリングの重さをそれぞれ「コンフォート」「スポーツ」「スポーツ+(プラス)」に切り替えられるスイッチが備わる。たとえばタイトな峠道を走るとき、エンジンとサスはスポーツ+で、ステアリングは操舵力の軽いコンフォートを選ぶといったセッティングも可能だ。

とりあえずオール・コンフォート・モードで走り出す。「M」の威光と450psのスペックに気圧され、恐る恐るアクセルを開けるが、いざ走り出すと意外なほどのジェントルさに肩透かしを食らった。低回転域から力強いトルクを活かし、7速DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)が早め早めにギアを上げ、するすると加速していく。

乗り心地も悪くない。スポーツクーペとしては十分に快適だ。電子制御式ダンパーを備えるアダプティブMサスペンションは路面の凹凸をしなやかにいなす。これなら同乗者からも文句は出ないだろう。M4クーペと乗り比べた訳ではないので確かなことは言えないが、この乗り心地のよさには、おそらくクーペより240kg重い1880kgの車重が寄与しているのではないか。

想像以上にジェントル……とはいえ、やはり「M」により仕込まれたモデルである。エンジン、サスペンション、ステアリングの各モードをスポーツ+に切り替え、パフォーマンスを開放すればたちまち本性をあらわす。エンジンは咆哮と呼ぶに相応しい快音を上げ、アクセルひと踏みで、身体がシートに押し付けられるような加速を味わえる。もちろん街中でその性能をフルに発揮するのは不可能であるが、各モードを組み合わせることでTPOに応じた走りを楽しむことができる。

モードを切り替えつつひと通り走ったあと、ついにルーフを開ける。3分割のメタルルーフが格納され、クーペからオープンに変身するまで約20秒。18km/hまでなら走りながらでも開閉できる……らしいが、街中で試すのはさすがに照れくさい。路肩に止めて御開帳。

屋根を開けると、M4カブリオレはまったくキャラクターの違うクルマになる。スポーツカーとオープンカーがせめぎ合うものの、オープンのキャラが勝ち、アスリートからエンターティナーへと変貌する。

開口部の大きい4座オープンの開放感は抜群だ。風のいなし方は見事に計算されていて、サイドウィンドウを上げていればオープンのままの高速走行も快適である。温風で首元を温めるネックヒーターを効かせながらドライブしていると、もはや目を3角にして飛ばそうという気にならない。

正直、M4にオープン・モデルは必要か? M4はクーペだけでよくて、カブリオレは普通の4シリーズに設定されていればいいんじゃないか? と、疑問も湧く。

一方で、M4のような超級のハイパフォーマンスカーにオープン・モデルを用意する、というのが欧州の自動車文化の“厚み”とも言える。たとえば、メルセデス・ベンツはCクラスのカブリオレモデルにAMG仕様を設定するし、アウディもS5にカブリオレを設定する。贅沢を知らずして文化は語れない。とすると、30年余年越しに日本に導入されたM4カブリオレは、日本のクルマ文化の成熟をはかる試金石ということか。

願わくは、日本のイケメンアスリートが風に髪をなびかせ、M4カブリオレを颯爽と乗りこなす姿を見てみたい! と、思うのであった。きっと、いや間違いなく似合うはずだ。

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