新型ジープ「グランド・チェロキーL」の北海道試乗会に、GQ JAPANデジタル・エディターのイナガキが参加した。宿泊地は、旭川にオープンした星野リゾートの新ブランド「OMO」の第1号であるOMO7旭川。そこでイナガキが感じたこととは?
見ても乗っても高級車
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「新しい“グラチェロ”は高級車だ!」
北海道・旭川郊外で新型グランド・チェロキーLを運転しながら、強くそう感じた。
Lは、約10年ぶりにフルモデルチェンジしたグランド・チェロキーに新設定された3列シート・モデルを指す。試乗車はその最上級グレードの「サミット・リザーブ」で、価格は999万円! 初代グランド・チェロキーが300万円代で購入出来た1990年代は、遠い昔だ。
もっとも、大きさや作りが初代とは大きく異なる。グランド・チェロキーLは、全長×全幅×全高:5200×1980×1795mm、ホイールベース3090mmに達する。フルサイズとまではいかないけれど、なかなかのサイズだ。
ただし、全幅は2m以内に抑えられており、かつ、車両周辺の障害物をモニター上で確認できる「サラウンドビューカメラ」や、後席の乗員や荷物の有無に関わらず後方視界を確保できる「デジタルリアビュールームミラー」もあるから取り回しに困ることはない。旭川郊外は道幅が広いこともあって、なおさら問題なしだった。
インテリアは「これぞ高級車!」というレベルの、クオリティの高い仕上がりを見せている。ウッドやレザーといった素材だけでなく、つくりのよさで定評あるドイツや日本の高級車となんら遜色ない出来だと僕は思った。やるじゃん、ジープ!
サミット・リザーブは「パレルモレザーシート」という、同じレザーでもベースグレードの「リミテッド」より上質なものを標準装備する。イタリア風のソフトなタッチの本革だ。こういうところも、悪路をガンガン走る“オフローダー”というより、オンロードを前提にした“高級サルーン”である。
フロントマッサージ機能にも注目したい。さっそく試したところ、想像以上の指圧の強さで、身も心もほぐされた。高級マッサージチェアともいうべき完成度。でも、マッサージチェアは自宅に置くと、結構なスペースをとる。かわりに新型グランド・チェロキーLを買うのもアリだ。それにしても、最近の輸入車のマッサージ機能には驚かされる。
運転手付きで乗るのもアリ
16ウェイの電動調整機構で、身体にぴったり合うようシート位置を調整。いざ、発進だ。アクセルをほんのわずか踏み込むだけで、2250kgの巨艦はグイっと加速する。しかもエレガントに。そこにジープという乱暴さはなく、高級車として、さらなる存在感を高める。3.6リッターV型6気筒ガソリン・エンジン(286ps/344Nm)は自然吸気ならではのリニアなレスポンスが気持ち良い。
乗り心地は、まるで大型ヨットに乗っているかのごとく優雅だ。エア・サスペンション・システムがいい仕事をしているのだろう。路面の凹凸をしなやかにこなしていく。
静粛性が高いのも嬉しい。サミット・リザーブには、18個のスピーカーで構成される「McIntoshプレミアムサウンドシステム」が搭載されているので、せっかくだから、と、いくつかの曲を試聴したが、クラシックからポップスそして歌謡曲、あらゆる音楽をクリアに、そして迫力あるサウンドで楽しませてくれた。旭川郊外で聴く『大空と大地の中で』は、最高だったな~。
たったの約60分のクルージングだったけれども、グランド・チェロキーLはオフローダーというより、ホンモノの高級車だった。どれほどの高級車かといえば、運転手付きで乗ってもおかしくないほど。
海外では、大型SUVのリアシートに乗って、パーティ会場に乗り付けるセレブがいるけれども、その種の1台として新型グランド・チェロキーLはアリかもしれない。これまでキャデラック「エスカレード」や、リンカーン「ナビゲーター」が占拠していた“パーティ市場”に、食い込めそうなほどの高級感を僕は感じた。
送迎車にラングラー・アンリミテッド!?
今回の北海道試乗会では、星野リゾート代表の星野佳路氏と、ジープの輸入元であるステランティスジャパンの代表取締役社長兼CEO、ポンタス・ヘグストロム氏から興味深い話を訊けた。
なぜ星野リゾートかといえば、こちらが運営する山梨県富士河口湖町にある、日本初のグランピングリゾート「星のや富士」で、ジープの「ラングラー・アンリミテッド」がお客さんの送迎用に使われているからだ。ジープが取り持った縁である。
筆者も以前、星のや富士に宿泊した経験をあるが、駐車場すぐ近くにある「レセプション」でラングラーを初めてみたとき、キャビン(客室)まで行くのに「え?これに乗っていくの!?」と、驚いた。乗降性や乗り心地が“ワイルド”なだけに、送迎車として適しているのか? と不安に思った。
が、それは大きな間違いだった。「レセプション」からキャビンのあるエリアまでの道が意外なほど険しい。ラングラー・アンリミテッドにぴったりなシチュエーションが用意されているのだ。国産ワンボックスカーで走れないことはないけれども、ジープで向かっていくことで“ワクワク感”が高まる。
「非日常にお客様を連れていくことに意味があります。だから駐車場から離れたところに建物があるのです」
と述べるのは星野氏だ。
なぜ星のや富士では送迎用にラングラー・アンリミテッドを導入したのか? 「“グランピングリゾート”というコンセプトにピッタリ合ったのがジープだったからです。ジープの導入は大成功でした」
星野リゾートでは、“非日常”を大切にしているそうで、それというのも、「高度経済成長期は、皆おなじような旅で満足していました。たとえば“新婚旅行に宮崎”となれば、皆、宮崎に行っていました。それがマーケットの変化で、旅も“個性”が重要になりました。もっとも、最初はこの個性も旅行会社には受け入れられませんでした(笑)」と星野氏は考えているからだ。
ポンタス氏はこれを受けて、こう語った。「星野リゾートでは、ほかのホテルとは異なる貴重な経験が出来ます。ジープも、ほかのクルマとは異なる経験が出来ます。とくにラングラーは、多くのSUVとはスタイルも一線を画します。ジープと星野リゾートは個性的という点で通ずるところがあるのです」
続けて「ジープだと移動のテンションもあがりますね!」と、ニヤリ。
“個性”と“個性”の融合
星野リゾートとジープは、近年、結びつきを深めているらしい。前出の星のや富士×ラングラー・アンリミテッドだけでなく、ジープの試乗会が星野リゾートの施設でしばしば開催されている。なにより、星野氏とポンタス氏はスキー好きという点でも共通点がある。
今回のメディア向けツアーでは、大雪山旭岳ロープウェイでのバックカントリースキーも組み込まれており、星野氏とポンタス氏も参加。大いに楽しんでいた。しかもかなりの腕前で、3年ぶりに滑る筆者は、みるみるうちにふたりから離されてしまった。
スウェーデン出身のポンタス氏によれば、“スキー休暇”というものがあるぐらい、母国ではポピュラーなスポーツで、日本でもジープに飛び乗って、よくスキーに出かけているという。星野氏は軽井沢出身で、学生時代はアイスホッケーに打ち込むなどウインタースポーツと関係が深く、今でも頻繁に雪山を滑られているそうだ。
星野リゾートもステランティスジャパンもかなりの規模の企業であるが、そのトップがこれほどスキー好きだとは驚きだった。どうやら両社・両氏の相性はかなり良さそうだ。“個性”を取り扱う点でも似ているし。
宿泊した「OMO7旭川 by 星野リゾート」も個性があふれていた。もともとは「旭川グランドホテル」だったものを、星野リゾートがリニューアルし、OMOブランドとして再スタート。OMO1号が同ホテルである。ホテル開業時のプレスリリース冒頭には、このように書かれていた。
「『OMO』は、『星のや』『界』『リゾナーレ』に続く、星野リゾートが展開する4つ目のブランドです。当ブランドが提供するのは『部屋』ではなく『旅』。街と連携して都市観光を満喫していただくことで、都市観光客の旅のテンションを上げるホテルを目指します。」
同ホテルでは、地元民とっておき情報を提供する「Go-KINJO(ゴーキンジョ)」サービスや、「OMOベース」と呼ぶパブリックスペースなどを用意するのが特徴だ。豪華な朝食ビュッフェも魅力で、北海道民の食卓にも並ぶ山わさびを使用した「ローストビーフ山わさびごはん」や焼きたてのワッフルなどを楽しんだ。筆者は1泊2日のみの宿泊だったけれども十分、個性を味わえた。
個性という点では、ステランティスはスゴイ。ジープもさることながら、愛嬌ある「500」などを作り続けるフィアットや、走りの楽しいかなりスポーティなSUV「ステルヴィオ」を手掛けるアルファロメオ、独創的なシトロエン、“フランスの宝石箱”ともいうべきDS、など、イタリア、フランス、アメリカの個性的なブランドが7つもあるのだから。
星野リゾートとステランティスジャパンの2社は、今後もさまざまな取り組みを共同でおこなっていくそうだ。“個性”と“個性”の相乗効果に期待したい。
文・稲垣邦康(GQ)
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みんなのコメント
ラングラーみたいに流行りじゃないし
書き写しの記事はすごい勢いで、文字数稼いでますね!