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「パリダカ」は完走できれば御の字 メルセデス・ベンツ280GE レプリカ(1) 悲願の優勝へ挑む

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「パリダカ」は完走できれば御の字 メルセデス・ベンツ280GE レプリカ(1) 悲願の優勝へ挑む

完走できれば御の字のパリ・ダカール・ラリー

日本では「パリダカ」として知られる、パリ・ダカール・ラリーは過酷を極める。完走できれば御の字。マシンの故障だけでなく、精神的な不調でリタイアするチームもある。40年ほど前は、犯罪集団からの襲撃も珍しくなかった。

【画像】1983年のダブル優勝 メルセデス・ベンツ280GE レプリカ 現行Gクラス 911 ダカールとプロドライブ・ハンターも 全121枚

それでも、フランス・パリからアフリカ大陸を目指し、サハラ砂漠を横断してセネガルを目指す大冒険に、多くの人が惹きつけられてきた。バイクやクルマ、大型トラックなど、独自のマシンを仕立てて。

このパリダカを考案したのが、フランス人実業家のティエリー・サビーヌ氏。彼は、世界ラリー選手権だけでなく、ル・マン24時間レースにも出場するなど、10年以上のキャリアを積んだレーシングドライバーだった。

荒野でのモータースポーツへ魅了されたキッカケが、1977年に参戦した「ラリー・コート」。フランス南部のコートダジュールからアフリカ西部のコートジボワールまでをバイクで走るイベントで、サビーヌは3日間も砂漠の中で孤立した。

無事に生還した彼は、独自のラリーを企画する。それが、1978年に初開催されたパリ・ダカール・ラリー。その頃は「オアシス・ラリー」という名称で、記念すべき第1回は彼が主催者となり、ヘリコプターから競技車両を見守った。

参加車両は、合計170台。バイクとカー部門に別れたマシンが、フランスの海岸線を抜け、アルジェリア、ニジェール、オートボルタ(現ブルキナファソ)を経由し、セネガルを目指した。

四輪駆動に乗ると決めたジャッキー・イクス

冒険心を持つ人は多く、徐々にパリダカの認知度は上昇。エントリー・クラスだけでも参加車両は216台へ増え、ルートにはチャレンジングなセクションが追加されていった。1983年には、サハラ砂漠中央の危険なテネレ地域もコースへ含まれた。

そんな難関ルートへ挑んだのが、1982年に5位完走を果たした、メルセデス・ベンツ・フランス。マシンはゲレンデヴァーゲンで、ドライバーがジャッキー・イクス氏、コドライバーがクロード・ブラッスール氏というペアだった。

イクスはF1レースで25回も表彰台へ登り、ル・マン24時間レースでは4度も優勝していた。だが、サーキットで成功を掴んだ彼もまた、オフロードへ魅了されたらしい。

パリダカへの初参戦は1981年で、ドライブしたのはシトロエンCX 2400。前輪駆動クラスでの優勝を狙ったものの、エンジントラブルでリタイア。その年は、ランドローバー・レンジローバーが優勝した。

1982年は四輪駆動車に乗ると決めた彼へ用意されたのが、メルセデス・ベンツ280GE。メルセデス・ベンツ・フランスが、ドイツのファクトリー・チームのサポートを受けて作ったマシンで、耐久性と動力性能の向上が図られていた。

アンダーボディには、アルミニウム製スキッドプレートが張られ、シャシーやドライブトレインを保護。この装備で増えた車重は、軽量なグラスファイバー製フェンダーとボンネット、ポリカーボネイト製ウインドウで相殺された。

吸排気系の更なるチューニングで223ps

キャビンからは内装が剥ぎ取られ、カーペットのないフロアへ2脚のバケットシートを固定。リア側には124Lの燃料タンクが追加され、2本のスペアタイヤとスタック脱出用のラダー、スコップなどが積まれた。

エンジンは、2.8Lのツインカム直列6気筒ガソリン。M110型ユニットの最高出力はノーマルの156psから202psへ強化され、当時の280GE AMGの182psを凌駕した。

ワークス態勢の280GEは、アフリカで強さを発揮。結成されたばかりのイクス/ブラッスール・ペアは、全17ステージの中で区間勝利を何度か果たす。それでも、5位での完走に終わった。

1982年のカー・カテゴリーで優勝を掴んだのは、四輪駆動のルノー20 ターボ。ゲレンデヴァーゲンは、ジャン・ピエール・ジョソー氏とミッシェル・ブリエール氏によるペアの3位が、最高位になった。

翌1983年、メルセデス・ベンツ・フランスは悲願の優勝へ燃えていた。ただし、M110型ユニットには、ハイリフトカムと半球形ピストンが組まれ、耐久性を考えるとチューニングの限界に達していた。しかし、吸排気系には改善の余地があった。

適合するアイテムを探す中で、W126型Sクラス用のインレット・システムの形状が近いと判明。エンジンを数度傾けて搭載し、ステアリングコラムの固定位置を変更するだけで、ボンネット内に収まった。結果、最高出力は223psへ上昇した。

非常に効果的だった空力特性の改良

280GEのパフォーマンスを大幅に高めるべく、空力特性にも改良が加えられた。そこで招かれたのが、最高速記録へ挑んだメルセデス・ベンツC111-IVの開発にも関わった、専門家のリュディガー・ファウル氏。

当時のオフローダーは、空気抵抗の大きい四角い形を補うため、パワーと操縦性へ重点がおかれていた。トラック・カテゴリーのマシンと同様に。

ファウルが施した改良は、シンプルでも非常に効果的だった。フロントガラスのラインと合致するよう、フロント外側のロールケージは形状を変更。ボディ側面の凹凸は滑らかにされ、後方での気流の分離を促す3枚のウイングが追加された。

これらにより、1983年仕様の280GEは最高速度が195km/hへ上昇。空気抵抗を示すCd値は、ノーマルのゲレンデヴァーゲンの0.52から0.41へ小さくなり、燃費も劇的に改善したという。

かくして1983年のパリダカは、新ルートで過去最も過酷なチャレンジとなった。1982年の優勝チーム、マレアス兄弟のペアは、V6エンジンを搭載したルノー18 4x4で参戦。2.5Lのクライスラー・エンジンを積んだ、ラーダ・ニーヴァも加わった。

欧州ラリーで手腕を発揮したベルナール・ダルニッシュ氏は、日産パトロール(サファリ)をドライブ。初参戦だったが、280ZX(フェアレディZ)用のエンジンへ換装され、不足はなかった。

この続きは、メルセデス・ベンツ280GE レプリカ(2)にて。

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