「4気筒を搭載するつもりはない」とCEO
text:Mike Duff(マイク・ダフ)
【画像】これから発売されるアストン マーティンの新型スーパーカー 全170枚
アストン マーティンのハイブリッドV6は今後、同社のラインナップで多くのモデルに急速に採用が進む見込みだ。まずは新型スーパーカーのヴァルハラに搭載されてデビューすることがわかっている。
すべてが新開発されたこのパワープラントは、2022年に量産が始まる予定。現在ヴァンテージやDB11の下位グレード、そしてまもなく発売されるSUVのDBXに搭載されているメルセデスAMG製4.0リッターV8に取って代わることになる。
「メルセデスは、そのエンジン・テクノロジーがこれから向かう方向について隠そうとしていません。そして当然ながら、わたしたちは4気筒エンジンをアストンに搭載するつもりはありません」と、アンディ・パーマーCEOはAUTOCARに語った。「ゆえにわたしたちは、自分たちで進むべき道を切り開かなければならないのです」
電動モーターによるアシストが組み込まれたこのアストン マーティンのV6は、実質的にAMG製V8の代替となるべくして開発されたものだ。パーマーCEOは、このパワープラントには既存のトランスミッションが組み合わされることになると認めた。
エンジン自体は小さくなってもパワーは向上
重要なのは、6気筒+電動モーターという構成で、AMG製エンジンと少なくとも同等のパワーを達成することだ。「進歩すれば、一般的に考えてパワーは減少するのではなく、向上すると思うでしょう」と、パーマーは言う。「たとえエンジン自体が小さくなっても、パワーは向上すると皆さんが期待しているはずです。われわれのお客様は、アストンが後退すると思っているわけがありません」。
この新型エンジンは、ヴァルハラに搭載されるバージョンが最もパフフルであり、他のモデルに搭載する場合は様々な必要性に応じてデチューンと調整を施すことになると、アストン マーティンは認めた。
この英国のメーカーは、直列6気筒エンジンに関して長い歴史があるものの、これまでV6エンジンを採用したことは一度もない。しかしパーマーCEOは、間違いなくブランドに相応しい体験をもたらすものにすることが可能だと主張している。「鍵となる要素はサウンドです」と、同CEOは語る。「パイプをチューニングすることで、アストンらしい音になります」
「もちろん、十分なトルクを発揮するためにハイブリッド・システムと電動モーターを使います。電気の力によるアシストで、減ったシリンダー数を補うわけです」
「そうすればV8エンジンのようなフィールと勇壮なサウンドを実現できます。わたしはこれが将来に向けて完璧に理に適った方法だと思います。4気筒エンジンを搭載するよりもずっと理に適っています」
今後も当分はV12エンジンの製造を継続
このV6エンジンは英国で生産される予定だが、供給元はまだ決まっていない。フォードがまもなく閉鎖するブリッジエンド工場は、アストン マーティンのセント・アサン工場と地理的に近いものの、まったく無関係であるという話だ。
また、アストン マーティンは5.2リッターV12ツインターボ・エンジンの製造を英国に移すことも計画していると、Autocarは同社の関係者から耳にした(現在はドイツのケルンにあるフォードの工場で製造されている)。また、このV12エンジンには電気的な装置を加える計画もあるという。
アストン マーティンは昨年、1800台近くのV12エンジン搭載車を販売した。このパワープラントを英国に移すということは、引き続きその採用を意味する。
「長期的に見れば、いつまでも継続できるわけではありません」と、パーマーは認めた。「しかし、間違いなく今後も数年間は、V12エンジンの生産を続けることができます。われわれはこのエンジンのCO2排出量をさらに減らすことも可能です」
WEC参戦撤回の理由は「ルールが変わったから」
英国政府は、2035年までにガソリンおよびディーゼル・エンジンを搭載するすべての新車(ハイブリッドも含む)の販売を禁止する計画だ。これは自動車メーカーにとって大きな試練となるだろう。パーマーはマクラーレンのマイク・フルーイットCEOと同様、他の市場で需要がある限り、内燃エンジンを搭載するハイブリッド車の開発を止めるつもりはないと認めた。
「大事なことは、われわれが世界に向けてクルマを作っているという事実です。世界中が、ハイブリッドやプラグインハイブリッドに未来はないと言っているわけではありません」と、パーマーは言う。
「もし、われわれが英国だけでクルマを販売しているのであれば話は別です。しかし、われわれは世界中の市場を相手にしているのです。世界では、将来のテクノロジーやその使い方について、様々な見方があります」
次にわれわれはパーマーCEOに、アストン マーティンが世界耐久選手権のハイパーカー・クラス参戦を撤回したことについても尋ねてみた。
「ルールが変更されたからです。それ以上でも以下でもありません」と、同CEOは説明した。「主催者側は、IMSA車両の参戦を認めました。(ル・マンを主催する)ACOがビジネスケースを崩壊させてしまったのです。それ以外に、会社の状況とか、内部の駆け引きとか、一切関係ありません」
「当初の話では、ハイパーカーがハイパーカーと競い合うレースになるということでした。われわれもそう信じていたのです。しかし、今回のルール改変が、1年後のレースをより低コストで行う方法になるとは、われわれには思えませんでした。すべてが白紙に戻ってしまったのです」
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