2020年シーズンで5年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニリングディレクター。ようやく始まった2020年シーズンのF1だが、第1戦でのハースは2台ともにブレーキトラブルでリタイアというまさかの結果に終わった。約4カ月ぶりの走行を迎えたハースの現場の事情を、小松エンジニアがお伝えします。
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マグヌッセン「オコンの背後で冷却が不十分になり、ブレーキが終わった」:ハース F1オーストリアGP日曜
2月のバルセロナテスト以来、約4カ月ぶりの走行となりましたが、率直な感想としては、やっと始まってホッとしているというのが正直なところですね。かなり早い段階から、この日程でオーストリアから開幕ということは聞いていたのですが、全世界のいろいろなところで刻々と状況が変わっていっているので、実際に始まるまではやはり心配でした。
もしダメだったら2020年のシーズン自体が今度は大丈夫かということになってくるので、無観客での開催ではありましたが予定どおりに始めることができて、ホントに良かったと思っています。
パドックでは様々な新型コロナウイルス対策が取られていますが、不便なことは実際はあまりなかったですね。移動もチャーター機でプライベートターミナルから飛んだのでちゃんと隔離されていましたし、到着してからもレンタカーまで直行(レンタカー屋に行かずに)とスムーズに行きました。
5日ごとに受けなければいけないテストやマスクの着用なども問題ないですし、ガレージ内での作業やエンジニア間のミーティングなども何も問題ありませんでした。みんなずっとイギリスで在宅勤務をしていたり、工場でもそれなりの対策をとって作業に当たっていたので、慣れていたのかもしれません。
フリー走行1回目では(ロマン)グロージャンがブレーキトラブルに見舞われましたが、これはフロントのブレーキラインに不備があったためです。この部品はサプライヤーから受け取った後、工場できちんと試験をしているので、サーキットでは起こってはならない問題です。このプロセスの中でどこに落ち度があったのかはわかったので、今後このようなことが2度と起こらないように対処しました。
レースでは、2台ともブレーキの冷却不足によるトラブルでリタイアとなってしまいました。金曜の走行データはほぼ想定どおりだったのでレースで対応できる範囲だという判断をしていたのですが、レース序盤の他車との混走で冷却性能が想定以上に悪化し、その対処も後手にまわってしまい、最悪の結果になってしまいました。
レッドブルリンクは標高も高いですしブレーキの冷却にはとてもきついサーキットなのでそれなりの準備はしていたのですが、このようなことになってしまいとても不本意です。またすぐに同じレッドブルリンクで第2戦があるので、早急に対応策を立てているところです。
今年のクルマは去年のクルマに比べてレースペースは改善されているのですが、予選での一発の速さに欠けるということはバルセロナテストで明らかでした。ですから予選での苦戦は予想されていましたが、実際に15番手(グロージャン)、16番手(ケビン・マグヌッセン)ととても厳しい結果になってしまいました。
またフェラーリのパワーユニット(PU)を使用する3チームは、すべて去年の予選タイムを下回り、PUの性能不足も浮き彫りになりました。
フェラーリなど直線区間で去年より1秒前後タイムロスしています。Q2になんとか残ったロマンの予選タイムはQ2のシャルル・ルクレール(フェラーリ)よりコンマ6秒遅れと、チームの現状を考えれば対ワークスとしてはある程度の結果は出せたと思っています。
もちろんPUの性能は我々がどうにかできることではないので、自分たちのできることに集中してなんとか予選パフォーマンスを上げたいと思っています。まだまだクルマのセットアップでも今年のクルマの性能をすべて引き出せていない面があるので、第2戦で一歩でも二歩でも進みたいです。
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