ホイール脱着の下準備
本稿の主役・カワサキ ZZR600は全体の構成が自分の思う「完成形」におおむね近づいてきましたが、次は思い切ってホイールの自家塗装をやってみることにしました。作業したのは昨年暮れから2022年1月ごろまでの一番寒い時期でしたので、それを踏まえてお読みいただければ幸いです。
古くてシンプルだと侮るなかれ! 現代のバイクでは味わえない「キャブレター車」の楽しみ方
「前輪と後輪、どっちから塗装をしようか?」と考えたところ、センタースタンドで車体を自立させておくには、先に後輪を外した状態のほうが、前輪を外すよりも安心感があります。
でも「だとしたら面倒なのは前輪だな」というわけで(!?)、前輪を先に取り掛かれば自分の尻にも火がついて作業をサボれないだろうという自己追い込み型の発想で着手。
いざ始めてみると、以前持っていたアクスルシャフトを回す大きな六角レンチが行方不明で、近くの工具屋さんに買い求めに行くなど想定外なこともありましたが、ホイールは無難に外れました。ただ、ZZR600(およびZZR400)のフロントフェンダーって形状が深いため、ホイールを外す際にはうまくよじらないと当たって割れそうになるので要注意です。
実際に経年劣化のせいで、ちょっとだけ割れました(笑)。ものぐさせず、事前にフェンダーを外さないとダメですね。
それからアンダーカウルを外し、当て板の木材を介してジャッキをかけて車体を上げておきましたが、この段階で車体安定のためにハンドルの付け根とアッパーステムにベルトを通し、車庫の天井を支える単管パイプから吊るして軽くテンションをかけておきました。
万一強烈な地震があってもジャッキだけで保持しているよりも安心感が全然違いますからね。
剥離をせずに古い赤塗装を隠す!?
ホイールを外したら、まずはサークリップを外してスピードメーターに繋がる金具やホイール内周に付くバランサーなどを撤去するんですが、元のバランサーが
付いていた位置付近には、一応オートポンチで目印を付けておきました。
色褪せたわりに、微妙にくどい色合いの赤い純正ホイール。
表面の地肌には微細な凹凸があるため、塗装を剥離するには、サンドブラストでの全面剥離がいいのでしょうが、上塗り前のサフェーサーで隠蔽性は期待できるため、3本スポークの凹凸部分のみ手作業でペーパーがけをする。
塗装後に光沢が出るよう小細工を実行。海外番組の「名車再生」のエドさんなんかも、元の塗装を剝がさずに塗っちゃってることもあるしと、自己暗示をかけて進行します。
実を言うと、最初はタイヤを外さずに脱脂後途中までスポークの凹みに筆で下塗りをしたんですよ。でも、近所のバイク屋さんに依頼して、やっぱりタイヤを外しました(笑)
タイヤをマスキングして何とかできないかと思ったんですが、ビード部が外れるくらいエア圧を抜いてホイールの縁まで塗装するのは無理だよなぁ、と思い直した訳です。耳掃除用の綿棒も駆使して、細かい部分まで脱脂に奮闘の後、いよいよ塗装に取り掛かりました。寒い時期にアセトンを使ってホイールをウエスで拭きまくるのって、ちょっとした修行のようです。指先の小傷に、アセトンが沁みるのなんのって!
いざ、ゴールドの本塗りついでにベアリング交換
そして冬場の某日、古鍋でお湯を沸かし、手加減しながらサフェーサーの缶を暖めます。程よく缶スプレーのサフが温まったら、最初は足付け的に軽く吹いてサフを馴染ませてしばらく乾燥させ、また塗り重ねました。
4度とか5度程度の外気温だったので、春~夏の時期よりも気長に乾燥を待つ。サフを塗ったら、その日はそこで作業はオシマイ。埃が付かないように保管しておきます。
本塗りのゴールドは、2日後に塗装しました。これもサフと同様にお湯を沸かしてホイールカラーを十分暖め、窪んだ部分から徐々に塗り進めて、その後全体の重ね塗りをしていきました。
ちなみに、ゴールドの塗装前には、バーナーでホイール全体を遠火(?)で暖めました。冷えきった状態よりも、この方が塗料のノリがいいような気がしたのと、重ね塗りの合間にも遠火で加熱し「なんちゃって強度アップ」を意識したんです。ただし、アルミの母材自体を傷めては本末転倒なので手で触われる程度の暖めです。
ゴールドはまあまあ艶も出て塗れましたが、そのまま数日乾燥。完成後の強度は、素人塗装にしてはまずまずでしたが、バランサー付け直しの際には部分的に塗膜が剥がれちゃいました。粉体塗装や高硬度のダイヤモンドコートのようなプロ塗装と熱の入れ方にかなわない点でしょう。そりゃそうだ。
でもって、ついでにベアリングを新品に交換しました。何年使っていたのか分からないホイールベアリングだし、塗装の合間にネット通販で発注しておけば、新品のNTN製ベアリングが短期間で届くご時世ですからね。
ところがその新品ベアリング、元の型番を見て発注したんですが、側面のオレンジ色のシールがないのが来たんです。「はて、これで良かったんだろうか?」と、以前同時期にDE耐に出場していた仲間の家で世間話しながらホイールとベアリングを見せたところ、「シールがないですけど、このホイールには穴が空いてて密閉空間になってないですよねー」と指摘されました。
ホントだ! このホイールはハブ部分に穴が空いていて雨水侵入の可能性もあるので両面シールでないとマズい。結局ネット通販で調べ直したところ、型番が違っていた(変わっていた?)ようで、シール付きに買い直してベアリング交換となりました。
また、冷やしばめ、焼きばめの理屈を知っていたのに、ベアリング交換の打ち込みの際、ベアリングを冷やすのも忘れてましたよ。冬で寒かったせいかなあ。
でも、そこで再度、別番号で発注して問題解決。このホイール、中心部に3カ所穴ボコが開いてるのをつい忘れてました。
その後、平素からお世話になっているバイク屋さん(松戸のドリームハウスさん)でタイヤを付け直してもらい、ディスクローターを左右に装着&フォークに取付けてカウルも装着。
やっと足場パイプで吊るしたベルトとジャッキから開放され、車体が転がせるように復元。さぼってはいなかったけど、短期間では完了できませんでした。
そして、車体全体で遠目で眺めてみると、車体のフロント側の足まわりがゴールドになっても、違和感がなさそうに感じました。
紫、白、銀に赤の刺し色の車体ですが、ホイールのゴールドがこの配色に対して少し大人っぽく感じられ、個人的には納得です。そんなわけで「寒いけど、この勢いで後輪もやっちゃえ!」と決意した2022年1月末のことでした。
レポート&写真●小見哲彦 編集●上野茂岐
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