半世紀にわたったトヨタ製アッパーミドル・セダン
トヨタのアッパーミドル・セダン、「マークX」は2019年12月に生産を終了。前身の「マークII」が1968年に登場して以来、半世紀にわたるモデルライフを終えることになりました。今回は初期のマークIIを振り返ってみましょう。
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クラウンとコロナの間で、よりコロナ寄りの立ち位置に
初代のマークIIは、3代目コロナ(T40/50系)と上級モデル、そしてフラッグシップだったクラウン(当時は3代目のS50系)との間を埋めるモデルとして1968年に登場しています。ボディサイズ(全長×全幅×全高)とホイールベースは、それぞれ4295×1610×1405mmと2510mmで、これはクラウン(4665×1690×1455mmと2690mm)とコロナ(4110×1550×1420mmと2420mm)の間、中間よりはコロナ寄りの数値でした。車両重量は1000kgで、これもクラウンの1195kgとコロナの945kgの間で、やはりコロナ寄りの数値となっていました。
サスペンションは、フロントが3車ともにコイルで吊ったダブルウィッシュボーン式で、リヤも3車ともにリジッド式でした。ですが、マークIIとコロナがコンサバなリーフスプリングで吊るタイプだったのに対して、クラウンは当時としては最新技術である4本のリンクでコントロールしたリヤアクスルをコイルスプリングで吊るタイプを採用。この点でもマークIIはクラウンとコロナの間で、よりコロナ寄りとの立ち位置が確認できました。
搭載していたエンジンも同様で、クラウンは2代目とともに世に出たOHC直6のM型(排気量は1988cc:φ75.0mm×75.0mm/最高出力105ps)と、初代クラウンとともに登場していたOHV直4のR型を2Lのフルサイズまで拡大した5R型(同じく1994cc:φ88.0mm×82.0mm/86ps)をラインアップ。そしてコロナは1.6Lまで排気量を拡大した7R型(同じく1591cc:φ86.0mm×68.5mm/85ps)をトップに据え、各種のR型系をラインアップしていました。
これに対してマークIIは、コロナのトップエンジンに位置づけられていた7R型をベースのエンジンとし、上級モデルには1.9Lまで排気量を拡大した8R型(同じく1858cc:φ86.0mm×80.0mm/最高出力はシングルキャブ版で100ps、ツインキャブ版で110ps)をラインアップ。ここでもマークIIはクラウンとコロナの間で、よりコロナ寄りとの立ち位置が確認できたのです。
そうです、マークIIが発売された当時のキャッチコピーにあった通り、マークIIは「コロナから生まれた理想のコロナ!」を目指して設計開発され、生産されていたモデルだったのです。
高性能モデルからピックアップまで幅広く展開
初代のマークIIを語るうえで、もうひとつ重要なことがありました。それはマークIIとコロナとの関係です。初代マークIIには、コロナの最上級モデル(というよりも2000GTの弟分)として知られる1600GTの、後継モデルとなる「マークII 1900 GSS」がラインアップされたのはよく知られたところです。
初代マークIIには当初から2ドアのハードトップがラインアップされていましたが、デビュー1年後の1969年9月に追加設定されたトップモデルが「GSS」です。8R型をベースに、ヤマハ発動機で開発したツインカムヘッドを組み込んだ10R型(排気量は8R型と同様1858cc/最高出力は140ps。後に8R-G型に形式名を変更)を搭載していました。まさに1600GTの後継(兄貴分)にふさわしいパッケージングでした。
その一方で、コロナの上級モデルとして登場したマークIIですが、そのラインアップには商用モデルのバンとピックアップ(トラック。2名乗車のシングルピックと5名乗車のダブルピックが存在)も用意されていました。乗用モデルのワゴンから転用できるバンはともかく、ピックアップまでラインアップしたあたり、トヨタの思惑は明確でないのですが、コロナをシンプルに4ドアセダン専用モデルとしたかったのでしょうか? 後に「ハイオーナーカー」、あるいは「ハイソカー」として君臨することになるマークIIも、その黎明期にはピックアップまで用意した万能モデルだったことは意外です。
コロナと決別し、一層上級にシフト
初代モデルの登場から4年を経た1972年1月、マークIIは最初のフルモデルチェンジを受けて2代目に進化しています。初代モデルがT60/70系と、コロナ(3代目がT40/50系、70年に登場した4代目がT80系)と共用していた型式名がX10/20系へと変わったことからも分かるように、2代目マークIIは、コロナとは決別。より上級セダンを目指すことになりました。
それを端的に表していたのは6気筒エンジンを搭載した「Lシリーズ」の登場です。これはクラウンの基幹エンジンとなっていたM型に電子制御式燃料噴射(EFI)システムを組み込んだM-E型(排気量はM型同様1988cc/最高出力135ps)や、M型にツインキャブを組み込んだM-B型(同じく1988cc/125ps)を搭載したもの。日産がスカイラインGTで先鞭をつけ、また2代目マークIIに続いてブルーバードUやローレルで展開することになる手法でした。
ちなみに、スカイラインGTやブルーバードUでは4気筒モデルに比べてホイールベースがストレッチされていましたが、マークIIやローレルでは6気筒モデルも4気筒モデルと同じホイールベースとなっていました。また初代モデルに搭載されていた4気筒エンジンは7R型が1.7Lの6R型(排気量は1707cc:φ86.0mm×73.5mm/最高出力95ps)に、8R型が2Lの18R型(同じく1968cc:φ88.5mmφ×80.0mm/110ps)に、それぞれ排気量を拡大。さらにホットモデルの「2000GSS」にはツインカムヘッドを装着した18R-G型(排気量は18R型と同様で最高出力は145ps)が与えられています。
シャシーに関してもブラッシュアップされています。フロントサスペンションのダブルウィッシュボーン式は初代から継承していましたが、リヤは同じリジッド式ながら、初代がアクスルをリーフスプリングで吊っていたのに対して、2代目ではアクスルを4本のリンクでコントロールし、それをコイルスプリングで吊るシステムに進化していました。
このように2代目はコロナと決別し、ある部分ではクラウンに匹敵しながらも、よりパ-ソナルな味付けの「ハイオーナーカー」へと進化していったのです。
モデルチェンジのたびに姉妹車も増加
2代目マークIIは1976年12月のフルモデルチェンジで3代目に進化しています。エンジンラインアップは2代目よりもさらに上級にシフトし、メインとなった6気筒は2Lと2.6L、4気筒も2Lのみとなり、サイズアップしたボディも5ナンバーのフルサイズセダンになっていました。2.6Lの4M-U型(排気量は2563cc:φ80.0mm×85.0mm/最高出力135ps)を搭載した3ナンバーモデルが登場したことが大きなエポックとなりましたが、それに呼応するようにシャシーもブラッシュアップされたのです。
サスペンションはフロントがマクファーソン式に一新されるとともにリヤも、上級モデルではセミトレーリングアームを使用した独立懸架に。ちなみに、ベースモデルでは先代から踏襲した4リンク+コイルのリジッドアクスル式で、ステーションワゴンとバンではリーフ・リジッド式となっていました。
もうひとつ、忘れるわけにいかないビッグニュースがありました。それはデビューから半年後、1977年6月にバッジエンジニアリングで姉妹車の「チェイサー」が誕生していることです。1980年に行われた次のフルモデルチェンジでは、三つ子車となる「クレスタ」も登場。以後はマークII/チェイサー/クレスタの3姉妹で「ハイオーナーカー」、いや「ハイソカー」のブームをけん引していくことになります。
国内がバブルの好景気に沸くという社会背景も手伝って、このブームは1990年代半ばまで続いていくのですが、バブル崩壊を受けてブームも失速。2000年に登場する9代目マークIIからはチェイサーやクレスタがモデル廃止となり、マークIIはふたたび独り立ちし、マークXにバトンを渡すことになりました。
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