昨季2022年、サファリで自身2度目の表彰台に上がり母国日本でも登壇を果たしたWRC世界ラリー選手権ドライバーの勝田貴元が、今度はヨーロッパのハイスピード・グラベル(未舗装路)ラリーで結果を出した。地元フィンランド出身のテーム・スニネン(ヒョンデi20 Nラリー1)との接戦を制し、豊田章男TGR-WRT会長が見守るなか『ラリー・フィンランド』で総合3位表彰台を獲得したのだ。
8月3日から6日にかけて、TOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム(TGR-WRT)の本拠があるフィンランドのユバスキュラを中心に開催されたWRC第9戦フィンランドで、自身4度目のポディウムフィニッシュを果たした勝田。同地在住の日本人ドライバーは火曜日に行われたオンライン取材会でこの一戦を振り返り、「個人的にもすごく嬉しく思っていますし、好結果をモリゾウさんにお届けすることができたので良いラリーになったと思います」と語った。
表彰台獲得の勝田貴元「アドバイスをくれたカッレにも感謝」トヨタ、1-3でWRC“地元戦”を締め括る
■失いかけていた自信を回復させたフィードバック調査
2週間前、前戦エストニアを総合7位でフィニッシュした勝田は「攻めきれなかった」「ピュアなスピードで非常に苦戦した」と述べ、苦しい週末を過ごしたこと明かすとともに、チームのホームであり自身にとっても“第2のホームイベント”となるラリー・フィンランドに向け、問題点をすべて洗い出し改善を進めていきたいと意気込みを語っていた。
果たしてそれは結実する。苦戦を強いられ続けたエストニアでのラリーから一転、フィンランド湾を渡って迎えた今季第9戦では、金曜のSS2でのステージウインなど計3回ステージ最速タイムをマークしたほか、2度のセカンドベスト、ステージ3番手タイムは都合9回記録した。そして最終的にライバルとの熱戦を制して総合3位表彰台を獲得するに至った。
この大きな変化を得るためには一体、どのような改善が行われたのか。そのことを勝田に尋ねると彼はふたつの要因があると言い、そのひとつがデータ分析を行ったエンジニアからのフィードバックであると答えた。
「例えばですが、トップから8秒くらい遅れているステージがあった時に、自分の中ではどこでどういうふうに8秒遅れてるのか、すぐにイメージができませんでした。それを全コーナー分、(チームメイトの走行データと)全部を比較していって、どこで遅れてどう(タイムを)ロスしているかというのを全部詳細に見せてもらいました」
その結果、ペースの遅れの原因が“決定的なものではない”ことと“根本的に攻めきれてない”ことに気がつくことできたと勝田は続けた。
■アクセル全開でもコンマ7秒遅れる
ラリー・エストニアとラリー・フィンランドは路面のキャラクターに違いがあるなど似て非なるイベントだがこれらのハイスピード・ラリーでは、コーナーでのほんのわずかなタイムロスが直後のストレートでの立ち上がり速度に直結し、それが積み重なってタイム差が生じる、と勝田は説明した。彼によれば、たとえ2台のクルマが同じようにアクセル全開であったとしても、少しリヤが流れてカウンターをわずかに当てただけで、コーナーの立ち上がりから次のコーナーまでに約コンマ7秒のタイム差が生まれるという。
エンジニアからもたらされたデータでそのようなセクションが多々あることを確認し、自らのドライビングに関する意識のズレや、これまで以上にスムーズに立ち上がることの重要性に気がついたトヨタのドライバーは、自信を失いかけていたなかで「気持ち的にも楽になった」と述べた。
「本当に小さな積み重ねで、コンマ1秒や2秒という積み重ね(の改善)が今回活きたと思います」
「本当に自信を失いかけてたところから、フィードバック調査で(タイムを失っている部分を)見せてもらったことによって、やっていたことが全部間違っていたわけじゃない、ではないですけど(遅れの原因は)本当に小さなことの積み重ねだったんだなって。それに気がつけただけで気持ち的にもすごく楽になり、自分のやっていたことにも自信を持てるようになりました」
「実際、小さな調整だけでうまく合わせることができたので、そこがまずひとつのステップとして、すごく大きな改善に役立ったと思っています。エンジニアのみんなには感謝しています」
■理解が深まったプレイベントテストでの同乗
勝田は前戦のラリー・エストニアから飛躍したもうひとつの理由に、TGR-WRTのチームメイトで良き友人でもあるカッレ・ロバンペラのプレイベントテストで、“現チャンピオン”が駆るトヨタGRヤリス・ラリー1に同乗したことを挙げている。
彼は自身のドライビングにおいて、いまの時点で足りてない部分を補う目的で「テストで横に乗せてほしい」とシリーズ史上最年少王者に相談。するとロバンペラはこれを快諾したという。
実際のテスト走行では、ロバンペラにアドバイスを受けながら彼のドライビングを五感で感じ、アプローチの違いやわだちでの走らせ方など、さまざまな発見やヒントを得ることができたと語った勝田。彼はまた、それらが本番でのプッシュにも活きたと続けた。
「(ロバンペラ選手の)横に乗ったことによって、彼が言ってることがより明確に理解できるようになりました」
「また、とくに2ループ目の走行時に(テストで)彼がやっていたことを自信を持ってトライしていけるようにもなりましたし、(ステージで)プッシュすることができましたのでそれがふたつめの要因だったかな、と思っています」
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契約の条件にしていたそうだ