ガソリンのTSIに比べて1回の給油で1700円以上も安い!
今年2月、いよいよフォルクスワーゲン(以下VW)も、ディーゼルモデルの国内投入を発表した。過去にはディーゼルゲートで話題になったVWだが、実際にはディーゼルモデルの国内投入を心待ちにしていた人も多いはずだ。私自身もディーゼル車に乗っていた経歴があるので、ディーゼルの魅力を知っている人にはこの発表は素直に嬉しい。
【意外と知らない】燃費良好のディーゼル車がもつ5つのデメリット
そのVWディーゼルモデルの、国内導入第1弾となるのがパサートだ。パサートはVWブランドの上級モデルになるのだが、じつはこの新しいパサート、欧州では会社の役員クラスが乗るファクトリーカー(セダン)としても扱われているのだ。今回試乗したパサート・ヴァリアントの印象と一緒にVWのディーゼルエンジン「TDI」について紹介しよう。
VWグループで生まれたTDIエンジンは歴史が長く、1989年までさかのぼる。そこで生まれたこのターボ過給直噴ディーゼルエンジンは、現在までに多くの進化を積み重ね、現代の厳しい排ガス規則のもと、最新の技術を投入して環境性能と走行性能を高いレベルで両立させている。
まずコモンレール式燃料噴射システムが、燃料の完全燃焼のための緻密な制御と燃料を超高圧噴射させ、微細な霧状にすることでNOx(窒素酸化物)とPM(粒子状物質)低減を両立している。可動式ガイドベーン付きターボチャージャーが、エンジン回転に応じてターボへの排ガス通路を効率よく切り替えることにより、排気の流速を高めたり、抵抗を減らしたりすることで、過給レスポンスが向上しストレスのないパワフルな走りに繋げているのだ。
ここからさらに排ガスをキレイにする装置がある。それがNSC(NOx吸蔵触媒)と尿素(AdBlue)を使ったSCR(選択還元触媒)を併せたクリーンディーゼルの心臓部だ。排気温度が高くなればSCRシステムで9割近くのNOxが抑えられるのだが、まだ温度低いうちは効果が激減してしまう。そこをカバーするのがNSCだ。
この触媒はとくに低~中温時に高い効果が発揮でき、多くのNOxを取り込むことができる。そしてPMを捕集するフィルター(DPF)を使ってキレイな排ガスに換えるのだ。さらにEGR(排気再循環)システムがNOx発生を抑えながら、ターボチャージャーの性能低下も抑えてくれる。こういった一連の流れがあってクリーンディーゼルが成り立っているのだ。
難しい話になってしまったが、TDIオーナーが環境のことを考えてあげるのなら、しっかり暖気をしてエンジンを温めてあげればさらに地球に優しくなるということだ。
VWの考えるディーゼルモデルの立ち位置は、あくまでユーザーのさまざまなライフスタイルに応えるために用意するパワートレインの一つなのだという。では実際にパサートとの相性や乗り味がどうだったのか紹介しよう。
今回パサートに採用されたのは2リッターのTDIエンジンだ。エンジンは2リッターの割には静かで、パサートの室内の静粛性の高さからすると気にならないレベルだ。走り出すと1200回転くらいから力強さを感じるようになり、1750回転には十分なトルクを感じることができた。1900回転からフルトルクになるので、低回転をキープしたままグングンと加速していくことができる。
湿式の6速DSGがTDIのトルクフルなエンジンをスムースに駆動力へと変え、市街地や高速道路でのロングドライブでも心地よい加速を提供してくれる。もちろんアップダウンのあるワインディングでもトルクを活かした気持ちのよい走りを得ることができる。パサートは運転するのはもちろんのことだが、後部座席の快適性もかなり高いレベルに作りこんでいるので、家族を乗せた長距離ドライブにも向いている。
ディーゼルの力強さはもちろんだが、何と言っても魅力的なのは経済性の高さだ。同じパサートでもTSIガソリンエンジンはハイオクを使用するのだが、都内でのハイオクと軽油の差額がおおよそ30円ほど。59リットルタンクで計算すると、1回の給油で1770円もの差が出る計算だ。もちろんTSIにはTSIの良さがあるので一概にTDI推しというわけではない。クルマを使う環境が、長時間運転する機会の多い方、旅行にクルマで出掛けることが多い方、道の駅巡りが好きな方など、そういった方たちは十分検討する価値があるのがTDIエンジンだ。
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