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OVERレーシングの歴史 ツインエンジンで活躍していたあの頃 衝撃的なオリジナルマシンを創出

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OVERレーシングの歴史 ツインエンジンで活躍していたあの頃 衝撃的なオリジナルマシンを創出

 当記事では、オリジナルマシンの「OV-41」で、海外のクラシックTT-F1レース参戦を夢見る3人の男、車両製作を担当した『OVERレーシング』の佐藤健正さん、ライダーを務める『D;REX(ディーレックス)』の豊田浩史さん、そして発起人の寺嶋浩司さんの活動を数回にわたって紹介しています。

 このプロジェクトの主力機種であるOV-41、そして発端となったOV-40は、寺嶋さんと意気投合した佐藤さんが趣味として製作したマシンですが、シリアルナンバーが示すように、OVERではこれまでに数多くのオリジナルフレームを製作しています。そして同社のフレームで興味深いのは、50cc単気筒用から1000cc以上の並列4気筒やVツイン用まで、対応機種がとてつもなく幅広いことで、世界広しと言えども、こういった姿勢で個性的なマシンを生み出して来たのはOVERだけでしょう。

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 そんなOVERの歴史を語るうえで欠かせない存在が、1990年代から2000年代前半に活躍したシングルとツインのオリジナルマシンです。今回はツインを中心に紹介します。

 OVERが初めて手がけたツインのオリジナルマシンは、ドゥカティの空冷Lツインを搭載するOV-10です。

 1989年に初代が登場したこのマシンは、同社ならではのアルミ楕円パイプフレームに加えて、ドゥカティに先駆ける形で片持ち式スイングアーム+リンク式リアショックを導入したことが特徴で(両支持式スイングアーム+カンチレバー式リアショック仕様も存在)、1996年からは公道での使用を前提としたコンプリートモデルのOV-10A、そしてフレームキットの販売が行なわれました。

 佐藤「OVERを創設した頃の私は、ツインにはあまり興味がなかったのですが、1988年頃にスタッフが所有していたベベルドゥカティ、900MHRに乗せてもらったことで、見方がガラリと変わりました。改めて考えると、あの時点で900MHRを体験していなかったら、以後のOV-15やOV-23XVは生まれなかったかもしれませんね」

 1981年にアメリカで始まったB.O.T.T.(Battle of the Twins)が波及する形で、1980年代から90年代は2気筒のみを対象としたレースが世界中で大人気を獲得していました。もっとも、当初の参戦車がバラエティに富んでいたのに対して、1990年代に入るとドゥカティが圧倒的な多数派になり、黎明期を盛り上げたハーレーやBMW、モトグッツィ、日本製ツインなどは、徐々に台数を減らしていました。

 そんな状況下で登場したのが、ヤマハ「TDM850」用のパラレルツインをアルミ楕円パイプフレームに搭載する「OV-15」だったのです。1991年からサーキットを走り始めた同社のTDMレーサーは、当初はFZR400RR用のフレームを使用していましたが、すぐにOV-15に進化し、日本のみならず、アメリカやヨーロッパでも活躍しました。

 もっともOV-15で驚くべきは、1993年にストリート用のコンプリートマシンとなるOV-15Aが登場したことでしょう。ビモータを筆頭とするヨーロッパのスペシャルバイクに勝るとも劣らない、宝石のような輝きを放つOV-15Aの登場は、当時の2輪業界では衝撃的なことだったのです。

 佐藤「フレームだけではなく、デザインから足まわりに至るまで、OV-15Aは当時の私の理想をとことん追及したモデルです。ヨーロッパのショーに出展して多くのお客さんから反響をもらえたこと、日欧の雑誌に貸し出してテストライダーからドゥカティと互角以上の評価を受けたことは、私にとっては大きな自信になりました」

 佐藤さんの渾身の作であるOV-15Aは、ヤマハが1995年から発売を開始した「TRX850」に多大な影響を及ぼしたモデルと言われています。また、1997年に登場したホンダ「VTR1000F」とスズキ「TL1000S」も、OV-15Aの存在を抜きにして語ることができない……と私(筆者:中村友彦)は感じています。

 1994年以降はスーパーバイク規定で行なわれている鈴鹿8耐ですが、1998年から2006年は、かつてのTT-F1を彷彿とさせる、改造範囲が非常に広い「Xフォーミュラ」クラスが設定さていれました。

 このクラスに着目したOVERは、なんと1670ccのOHV空冷Vツイン、クルーザーのヤマハ「XV1700」用エンジンをアルミ楕円パイプフレームに搭載する、OV-23XVを開発したのです。

 すでにドゥカティのLツインやサンダンスのデイトナウェポン用として、空冷Vツインに適合するフレームを手がけた実績はあったOVERですが、2004年と2005年に行なった前代未聞のチャレンジは、世界中のライダーから注目を集めました。

 佐藤「Xフォーミュラが設定されてからの鈴鹿8耐には、独自のモディファイを行なったYZF1000RやYZF-R1で参戦して好成績を収めていたのですが、いまひとつ面白くない。じゃあ逆に面白そうなバイクは何かと考えて、V-MAXとどちらにするかで悩んだ末に、サーキットにはまったく向いていないXV1700を選びました(笑)。その背景には、ウチの社員の士気を高めたい……という意識もありましたね。レース用のチューニングパーツが一切存在しないこのバイクをサーキットで速く走らせるためには、今までにない発想や工夫が必要になりますから」

 数々のトラブルに見舞われ、残念ながら鈴鹿8耐では予選が突破できなかったOV-23XVですが、海外のツインレースに遠征した際は、1990年代のOVERの大活躍を知る観客から喝采を浴びました。また、社員の士気を高めるという意味では、OV-23XVには絶大な効果があったようで、2000年代中盤以降の同社は小排気量車の世界に進出し、モンキーやエイプ、NSFなどに対応する多種多様なパーツ(もちろん、オリジナルフレームも)が絶大な人気を獲得することとなりました。

 1982年の創業以来、独創的なスタンスでさまざまな活動をして来たOVERですが、ここ最近はメジャーレースへの参戦は行っていませんでした。とはいえ、OV-41に続いて2022年春からはカワサキ「ZX-10R」用エンジンをオリジナルフレームに搭載するOV-43を擁して、テイスト・オブ・ツクバの最高峰クラス、ハーキュリーズへの挑戦が始まっています。

 おそらくこの2台も、かつてのOVレーサーと同様に多くのライダーに夢を与えてくれることになるでしょう。

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みんなのコメント

1件
  • OV-15Aのデビューは衝撃を受けたなぁ~
    スタイルや性能にメチャ惹かれたけれども、値段が値段だっただけに手を出せずに終わってしまったなぁ。。。

    チョット前に、ネット上でOV-15Aを代車?で試乗している記事を読んだけれど、元々がレーザーなんで
    一般公道での使用には相当気を遣う(ハンドル切れ角が狭い・ラジエターファン無し)事が記されていて
    乗り手と使用状況がかなり限られる事を知って、手を出せなかったのが正解なんかな…と思った次第。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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